変な角みたいにとんがって
何かが聞こえるわけでもない
少しだけそよいだ風が抜けて
伝わるノイズが私に微笑んだ
ずっと前から何も届かない
電波も音波も重力波も
たまにトンボが留まっていて
私はそれに気付く事も無い
いつも誰かが「カワイソウ」と云う
形ある物が意味をなくして
何も持たない私を哀れむ
楽しそうな優越感片手に
どうしようも無い私は笑う
ため息をつくほどでもない
通り過ぎる嘲笑の残像は
雲の波間に溶けて消えてく
まともに機能してた頃の話
集まる情報はいつも正しい
悪い事は断罪善い事は羨望
次第に狭まった重力社会
なぞる線を外せば人に非ず
違う方向を向けば心に非ず
目を開けていて何も見えず
耳澄ましていて何も聞けず
今日も誰かが「ミンナイウ」と問う
形ある意志が力なくして
何も持てない自分を隠して
苦しそうな無力感背中に
愛しようのない私が泣いた
泣き声を出すほどでもない
受け止めてる傷痕の暗礁は
海の光に溶けて沈んだ
使えない私は使えない私
入らない私は入れない私
錆び付いた笑顔が剪断され
音を立てて何かが壊れた
優しい闇が覆い尽くして
静かな夜が私を食べてく
星を忘れた空は笑って
傅いて私の手を取る
おぼつかない足取りだけど
それでもこんなに楽しいな
真っ黒な地図が炎無く燃える
引力も忘れて矢印を弔う
アンテナの形はそのままで
異世界は扉を開けてキスした
こんなに笑えたのはいつぶり?
何も見えない分からないのにね
星座の解釈も地軸の類推もせず
それでも存在が許されるなんて
鳥の声森のざわめき風の噂
アンテナが知らないこといっぱい
こんなにもカワイソウな私だけど
歌うのは少しだけできるから
遠ざかるさざ波を眺めながら
あの日観た星空を少し思い出す
最後に見た祈りの欠片たちは
記憶の奥底で夢の色を奏でた
代わりに誰もが「イマワシイ」と云う
それでも笑っている私を訝る
それは諦めに見え狂気にも映る
シンプルな解法を皆は見ない
走りようのない私が飛んだ
比べようも無く浮いている
解きほぐした癒しの袖口を
花の色に染め上げて償おう
探すためのアンテナ
繋ぐためのアンテナ
どっちも壊れちゃった
「君は誰」も言えないや
星の無い空が涼しい
意味の無い文字が愛しい
暗がりと夢を紡ぐ
それは極上故に牢獄
在りし日の忘れ形見
思い出す気力も消える
豊かに満ちる喪失感
想いの音を言祝ぎに
冷えた指先が懐かしいな
熱を取り戻した心拍数
気が済むまで眠りに就いたら
輝きの無い朝に埋もれよう
呼吸を忘れなかったこと
微笑みを唯一の誇りにして
歌声を唯一のシルシにして
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想