「レ~ン~…」

「なに?リン」


床に寝転がって曲を聴いていた私は、片方のイヤホンを外して話をきりだした。


「頭、重いんだけど」


今、私の背中には双子の弟、レンの頭が乗せられている。
視線は私に向けているみたいだけど、その表情は伺えない。


「どいてくれない?」

「いいじゃん、減るもんじゃないし」


そう答えた頭の主は、手に持っていた本に視線を戻した。
普段なら素直に聞いてくれるけど、今回はそうではないみたい。
それでも私にとってはちょっと邪魔だったりするから、引き下がらなかった。


「枕使いなよ」


私は、ソファーの上にある枕を指差しながら言った。


「この高さが丁度いい」


そう言って動こうともせず、視線は本に向けたままだ。


「そんな勝手な…」


「終いには泣くぞ」と冗談めいた事を考えてると、頭の主から意外な言葉がでた。


「じゃあもう少しだけ」




―私はその一言に、驚きを隠せなかった。




レンが私に頼み事をすることは、殆どなかったからだ。
私のお願いを聞いてくれても、レンが私に何かを頼む事自体が珍しいことだった。


「もう少しだけ、このままでいさせてよ」


私は軽く溜め息をついて、観念したように言った。


「…少しだけだからね」


そう言われたら断るわけにはいかないじゃない、と私はそう考えながら答えた。


「うん、ありがとう」

「全くもう…」


いつもと違うレンに調子がくるわされながらも、頼られている事にどこか嬉しさを感じた。


「…いい天気だね」

「うん、そうだね」


いつの間にか本を閉じていたレンが、外に顔を向けながら言った。
窓からは雲一つない青空が見え、清々しい気分になれた。


「それに温かい」

「陽射しが気持ち良いね」


季節は夏へと移り変わっているが、まだ春の陽気の名残が残っている。
私は片方の耳から流れる曲を聴きながら、陽射しの暖かさをその身で感じた。


「…どっちも…ね」

「今何て言ったの?」


暖かいせいでボ~ッとしていたのと、レンの声が小さくて聞き取れなかったから、私は聞き返した。


「何でもないよ」

「?変なの」


そう言って黙り込んだレンを疑問に思いながらも、陽射しの温かさに私はそのまま身をゆだねた。








  ~数十分後~
 








「…やけに静かだとおもったら」

「…スー…スー…」

「…zzz…zzz…」

「二人してお昼寝してたのね」


買い物を終えて戻ってきたテトは、声をかけても返事のない姉弟を探して広間を覗いてみると、窓辺で横になって寝ているリンとレンを見つけた。


「スー…スー…スー」

「zzz…zzz…zzz」


気持ち良さそうな顔で寝ている二人の見ていると、起こすのがしのびなくなってきた。
テトは腰をおとし、交互に二人の髪を優しく撫でてやる。


「…夕飯までは寝かしといあげよう」


そう呟き腰をあげ、台所に向かい夕飯の支度を始める。
いつもより幸せそうに寝ていた二人の顔を思い出すと、自然に顔が綻んでいた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

日溜まりの暖かさ

季節的には、春の終わり頃になりますかね?
最近アレだったんで、久々にほのぼのとしたの書けて楽しかったです(・ω・*)

テトさん、出番少なくてすみません…orz←

閲覧数:346

投稿日:2010/08/16 20:05:24

文字数:1,310文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました