「…それは、考えてもみませんでしたわ」
カレーライスを食べながら、ルカは言った。
「いや…。俺も、ついさっき考え付いただけだから、全然確証とかはないんだけど」
「確証はないにしても、可能性としては捨て切れませんわ。…ただの風邪かもしれませんけど」
「そうだったら思いっきり笑い飛ばしてやるよ」
「ぶん殴ってやりますわ」
二人は少しだけ笑った。すでに一時間ほど話を続けているが、まじめに話していたので、笑うシーンがなかったのである。なんだか、頬の筋肉がつってしまいそうに思えた。
しかし、すぐに真顔に戻ると、ルカはスプーンを食べ終わった皿の上に音を立てないようにしておいた。
「でも、本当にそのとおりだとしたら、あなたたちは、ずいぶん面倒なことに首を突っ込みましたね」
「突っ込みたくて突っ込んだわけじゃねぇっつーの」
レンは大きなため息をついた。
「不幸体質じゃありません?」
「んな体質、あってたまるか!」
少しだけムキになる。
「悪魔ですもの、仕方ありませんわ」
「天使が幸福体質なら納得のしようもあるのかもしれないけどな」
毒づいてみたが、ルカは気にする様子もない。
本当にルカは昼間よりも気分がよくなったらしく、顔色もずいぶんよくなったし、少し饒舌になったように思う。多分、話をしていなかったら、夕食もいつもと同じペースで食べていただろう。
「…てか、ほんとに大丈夫だと良いんだけど。明日、俺たちが学校に行ってから、メイコさんに頼んでどっかでかけてこいよ。多分、そっちに方が体は楽になると思うから」
「ええ、ありがとう。でも…。それでは使い魔として成り立っていませんわ」
「…そっか」
使い魔であることに誇りと責任感を持っているルカに、使い魔であることより自分のことを、といったところで、無駄だとわかっているので、あえて言わない。無駄だとわかっていることは、しないタチである。
けれど…。本当はどうなのだろう?
今、レンがひとつの可能性をあげてみた。その可能性に、ルカはあるかもしれないというが、もしも、本当にそれが『正解』であり、『真実』であったら? ミキはこの家の人々全員を欺き、嘯いているということになる。同時に、キヨテルとあの小さな少女が、何よりも生徒たち、先生たち、その地域、接する人すべてに笑顔の仮面をつけて接しているということになる。それが、どれほど心の重みになることだろう? 一枚の仮面が、どれほど良心を抑えられるのだろう?
辛くないはずがない。だが、毎日見せるあの余裕のような笑みは何だ。けなげな少女の優しそうな表情は何なのだ。まるでなんとも思わないように振舞うあの態度は…。
「じゃあ、メイコさんには一応話しておくから。それから、明日からどうするか考えるといい」
「ええ、ありがとう」
部屋を出るとき、二人はそう言葉を交わした。
ルカが食べ終えた夕食を盆に載せ、キッチンに戻っていくと、リンがすでにパジャマに着替えている。
「妙に早いな?」
「明日、日直なの」
「ほー。えらい、えらい。ちゃんと遅刻しないようにするのか。…お休み」
「一緒に寝ようよ」
くいくいっとレンの服のはしを引っ張った。
「何でだよ」
あからさまにいやな顔をして、レンは振り返った。すると、リンのほうは情けなく眉を下げ、すがるように、捨てられた子犬か何かのように訴えかける。
「このところ天気悪くて、雷がごろごろ言ってて怖いんだもん!」
「ぬいぐるみでも抱きしめて寝てろ」
と、レンは言ったが、そのとき、すでにリンはウサギのぬいぐるみをぐっと抱きしめていたので、ほぼ無意味だった。
「レンひどい! 一緒に寝ようよー」
「話があんの! 寝てる暇ないの!」
「それ終わるまで待つからぁー」
…あれ、何で俺、こんなお子様の相手してるんだっけ。
俺の主人って、いったい、誰だったっけ?
そんなことを思いながら、リンをどうにか引き剥がし、盆をキッチンにおいて、ソファに座っているメイコの前に向き合うように座った。
「メイコさん、あの…」
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スキマ
寂しさに溺れて君の形さえ
追い求めては突き放してしまう
寂しさに溺れて君の形さえ
「好き?」「隙?」「好き?」「隙?」埋め尽くして?
心の隙に雲がかかり
月が見えなくなってゆく
貴方の温もり隙間を縫う指
なぜか寂しくなるのね
息も出来ないくらい締め付けて...スキマ-歌詞-
うみ
「…はぁ………ん…ぁん、いやぁ……ぁうっ」
暗くて狭い。密閉された空間。逃げられない私は目に涙をためた。
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あー…蒸し暑い…
空は生憎の曇りだというのに今日はなんだか蒸し暑かった。ったく。楽歩の奴…バスの冷房くらいつけろ...【リンレン小説】俺の彼女だから。。【ですが、なにか?】
鏡(キョウ)
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