タグ:鏡の悪魔
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「覚悟、してください…。先生」
ミキは言った。
「もうとっくに覚悟できていますよ」
困ったように笑いながら、キヨテルは言った。
ナイフを大きく振り上げると、怪しく刃が光った。
――ゴトッ
音が鳴った。玄関のほうからだ。
「誰か…いるんですか」
体中が震え、動けなくなった。ユキは、底知れぬ...鏡の悪魔Ⅴ 27
リオン
まるで壊れたように笑う姉の声を、ユキはカタカタと震えながら聞いていた。
どうしよう、先生が危ない…!
「…いいんですよね? 殺しても」
「どうぞ。好きにしてください。その代わり、これ以上鏡音君たちに手出しはしないでください」
「ええ…。いいでしょう」
「それと、もうひとつ…」
「なんですか、まだ...鏡の悪魔Ⅴ 26
リオン
部屋の中にいた三人のうち、小さな侵入者に気がついたのは、キヨテルだけであった。
小さな侵入者はキヨテルに向かって、唇に人差し指を当てて、シー、とやって見せた。
「どうかしましたか」
「え、あ、いえ、ちょっと虫が…」
虫扱いされたユキは少々怒りを覚えたが、その程度で怒り狂うほどお子様ではないので...鏡の悪魔Ⅴ 25
リオン
リンは壁に耳をくっつけて、どうにか盗聴を試みていた。
「何してるんですか、リン様」
「だって、何はなしてるのか気になるじゃない!」
すると、メイコが言う。
「それについては、彼女に説明してもらいましょうか」
ユキが、決心したように顔を上げた。
「ミキさんは、闇商人なんです」
「闇商人?」
リ...鏡の悪魔Ⅴ 24
リオン
りんごが、ランドセルの中でごろごろと音を鳴らした。体の小さいユキからするとずいぶん重いが、特に入れるものもないランドセルを背負っているのも雰囲気が出ないので、好物のりんごを入れてあるのだ。真っ赤なランドセルに真っ赤なりんごは、ピカピカと光沢があって、いかにもおいしそうだった。
「先生…」
つぶや...鏡の悪魔Ⅴ 23
リオン
しばし、無音の時間が続いた。
それが数分だったのか、数十分だったのか、もしかしたら五分もたっていなかったのかもしれないが、そんな時間の感覚でさえ麻痺するような空気があったのである。
「おい、あんた――」
「黙っていてください。自分の立場くらい、わきまえてくださいね。私はいつでもあなたを殺せる。あ...鏡の悪魔Ⅴ 22
リオン
かび臭いにおい…。
まるで、『あのとき』に戻ったように不快なにおい…。
目に浮かぶ、灰色の天井とおりのような鉄格子。
「なんで…」
思わずつぶやいた自分の声で、レンは目を覚ました。勿論、天井は高く、灰色なんかじゃないし、鉄格子もない。しかし、ぼんやりとしたほの暗い、その雰囲気は妙に地下牢に似...鏡の悪魔Ⅴ 21
リオン
メイコに一通りのことを話し終えたレンは、ミキの部屋の前にいた。
「あれ」
ミキがいるはずの部屋のドアを開き、レンは言った。
「ミキ、さん?」
部屋の中を見回してみたが、ミキの姿はない。それどころか、ミキが持ってきたはずのかばんから何から、一通りのものがなくなっていた。まるで、夜逃げでもしたよう...鏡の悪魔Ⅴ 20
リオン
「…それは、考えてもみませんでしたわ」
カレーライスを食べながら、ルカは言った。
「いや…。俺も、ついさっき考え付いただけだから、全然確証とかはないんだけど」
「確証はないにしても、可能性としては捨て切れませんわ。…ただの風邪かもしれませんけど」
「そうだったら思いっきり笑い飛ばしてやるよ」
「ぶ...鏡の悪魔Ⅴ 19
リオン
「――そうか」
一人でつぶやいた。
本を開き、ぶつぶつと何か言いながら、レンは帰路についていた。開いている本は、図書館で借りてきた本である。わざわざ学校の図書室よりもほんの種類が多い図書館まで行って借りてきたのだから、これで何も収穫がなければ、レンはこの本をマンホールの中に落としてやろう、と思っ...鏡の悪魔Ⅴ 18
リオン
「♪――…♪」
流行の曲を口ずさみながら、かばんを思い切り振り回して、リンは一人で帰っていくところであった。正直つまらないが、文句は言わずに帰る。
ミクとプリマは授業が終わるなりさっさと帰ってしまったし、レンは図書室に用があるから、と図書館に走っていってしまったし、レオンと帰ると後でレンがうるさ...鏡の悪魔Ⅴ 17
リオン
「先生、今日はお休み…」
ユキがキヨテルにそっと話しかけた。
「ああ、はい。今日はゆっくり出来ます」
微笑んで答えてやると、ユキは安心したように微笑を返し、テーブルの上に並べられたその日の朝食に手を伸ばした。トーストに、小さくてきれいに焼かれた目玉焼きとベーコン、そして牛乳という、特に代わり映え...鏡の悪魔Ⅴ 15
リオン
「…お疲れ様、リンちゃん」
授業が終わって死んだようにぐったりとしているリンを気遣って、ミクが声をかけると、リンは力なくうなずいた。
「バカ、あれだけでなんで寝不足になるんだよ」
レンのほうは少し眠い程度で、まだまだ我慢できるらしい。
「だってぇ…。あの後、眠れなくなっちゃったんだもん…」
リ...鏡の悪魔Ⅴ 13
リオン
夜中、リンは妙な音に目を覚ました。と、いっても、飛び起きたわけではなくて、ふっと意識が戻ったような雰囲気なのだが、それでも感覚は不思議としっかりとしていた。雨のにおいがした。まだどこかの窓を開けているのだろう。夜の十二時程度までならルカとメイコが毎日宴会をやっているはずである。そう考えてもう一度眠...
鏡の悪魔Ⅴ 12
リオン
「ちょっと、ちょっと、おろしてよ! 肩貸すだけで良いんだってば!」
「あーうるさい。あー聞こえない。あー、あーっ」
聞こえないフリをして、レンはすたすたと歩く。足は次第に速くなっているように思われた。
文句は言いつつも落とされたりしたらたまらないので、リンのほうも手加減して背中を手で何度かたたく...鏡の悪魔Ⅴ 11
リオン
「――おはようございます」
朝、大きなあくびをしながら既に制服に着替えたレンがリビングに入ってくると、メイコがキッチンに立っていて、ルカが新聞を取ってきたところだった。それだけならばいつもの風景なのだが、さも当たり前のようにミキがメイコの隣で卵焼きを作っている。なぜだか妙になじんでいた。
――そ...鏡の悪魔Ⅴ 9
リオン
「…お」
小さな声を上げたのは、レンのほうだった。
リンとレンの二人で帰っているところだったのだが、館が見えてきたところで、二人の目に見知らぬ少女の姿が映ったのである。その少女が道を歩いていたなら気にも留めなかったのだろうが、その少女が館のドアの前で突っ立っているのだ。気にも留めないというわけに...鏡の悪魔Ⅴ 8
リオン
「それで…」
言っていいものか、とキヨテルはしばらく困ったように同じ言葉を繰り返していたが、十五回ほど「それで…」を繰り返した後、思い切ったように顔を上げた。
「私に協力してもらえませんかっ!?」
ずいっと二人につめより、前のめりになったキヨテルの勢いに圧倒され、リンとレンは思わず「ハイ」といい...鏡の悪魔Ⅴ 7
リオン
次の日、二人が学校へやってきて教室に入ると、ミクがすばやくリンの席に近寄ってきた。
「あ、おはよ、ミクちゃん」
「うん、おはよう。ね、リンちゃん、手、出して」
「え? えっと、こう?」
いわれたとおりにリンが手を出してやると、ミクが制服のポケットから紐のようなものを取り出した。
「何、それ?」
「...鏡の悪魔Ⅴ 6
リオン
-お使い-
レンが着替えを終わらせて帰ってくると、丁度ルカとメイコが買い物袋を手に提げ、帰ってきたところだった。
「あら、カイト、早かったわね」
少し驚いたようにメイコが言うと、カイトは笑顔で答える。
「だってめーちゃんに早く会いたくて」
また、へらっと笑う。
「それはいい...鏡の悪魔Ⅴ 5
リオン
-エクソシスト-
館の前につくと、ミクはその先に家があるので、プリマとともに手を振ってそちらへと向かう。レオンはしばらく名残惜しそうにしながら、今来た道を戻っていく。
「…レオン君、毎日ずっと同じ道戻っていくの、すごく寂しいよね」
「…だろうな」
あきれながらそう言って、リンが家...鏡の悪魔Ⅴ 4
リオン
-悪魔-
退屈な授業が終わると、多くの生徒が大きなあくびをしたり、伸びをしたりして、つかの間のリラックスタイムを取る。勿論、リンやレンも例外ではなかった。
「んーっ! 今日もおわったぁ!」
うれしそうに声を上げながら伸びをして、リンは教科書やノートをスクールバッグにつめ始めた...鏡の悪魔Ⅴ 3
リオン
-雰囲気-
「えー…。今日から新しい先生が来る…はずなんですが」
戸惑いながら、担任は言った。
「遅れているよう…ですね」
数学の時間だった。
うわさの臨時教師とやらは赴任初日に、思い切り遅刻をしているらしい。まあ、生徒たちからしてみれば、自習にでもしてもらってバカ騒ぎして...鏡の悪魔Ⅴ 2
リオン
-日常-
ふわり、暖かな木漏れ日の中、青年は目を覚ました。
上半身を起こしてカーテンを息よいよく開け、窓を開くと、庭の大きな月桂樹の木が風に揺れていた。
どうしてこんな部屋にいるんだっけ…? 首をかしげる。…そうだ、今日から引っ越してきたんだった。
彼は教員免許を取ったばかりの新...鏡の悪魔Ⅴ 1
リオン
-おまけ-
『鏡の悪魔』を見ていない方、またその世界観を壊したくない方や、腐向け表現に不快感を感じる方は、Uターンを推奨します。
まあ、腐向けっつったって、たいしたことないんですけどね!!(←ここ大事)
さて、それでは始めましょう。残った方々にのみ、知ることのできる、
『裏鏡の悪魔』です。
『-密...鏡の悪魔Ⅳ 9.5
リオン
-走って-
しばらくそれを眺めていたリンだったが、はっとしてそれらを机の上におくと、走り出した。
写真たてに隠されていたのは、小さなタオルの切れ端と手紙と、赤い押し花のしおりだった。タオルにはいくつかのシミがあって、どうも子供がよく使うタオルのように見えたが、そのタオルの...鏡の悪魔Ⅳ 9
リオン
-偏愛と純愛の狭間-
足が石になってしまったように動かない。まるでさび付いているようだ。
しびれるような空気感と、自らに向けられたシルバーの銃口で、ルカは息が詰まりそうだった。
「カイコさん、もうやめて下さい。このままでは、誰も喜びません。貴方も、ひどく悲しむことにな...鏡の悪魔Ⅳ 8
リオン
-まるで牢獄-
しばらく流れたはずの沈黙は、数秒だったのか、数分だったのか、あるいは数十分だったのか。それすらも分からなくなるような長い時間が流れていた。――実際、ルカの腕時計の針は一分と三十九秒分しか進んでいなかった。
「…それ、楽しい?」
もう一度念を押すようにメ...鏡の悪魔Ⅳ 7
リオン
-密室-
「あ、メイコさん…どうしたんですか?」
自分のほうにメイコが走りよってくることに気づいたカイコは、できるだけ平静を装い、笑顔でメイコに声をかけた。するとメイコは少し困ったような、それでもさっきより少し安心したかのような不思議な表情になった。
「ねえ、カイコ...鏡の悪魔Ⅳ 6
リオン
-爆弾-
教会の玄関で靴についた泥を落とし、両手に抱えたビニール袋を一旦下ろすと、辺りを見回した。
「カイコ――?買ってきた物ってどこに置けばいいんだ?」
呼びかけても返事がない。仕方なく、メイトは荷物をリビングのテーブルの上に置き、カイ...鏡の悪魔Ⅳ 5
リオン