-まるで牢獄-
 しばらく流れたはずの沈黙は、数秒だったのか、数分だったのか、あるいは数十分だったのか。それすらも分からなくなるような長い時間が流れていた。――実際、ルカの腕時計の針は一分と三十九秒分しか進んでいなかった。
「…それ、楽しい?」
 もう一度念を押すようにメイコが言う。
「…なんで、入ってきてるの。わからないようにちゃんと本棚は戻しておいたのに」
「…リンの携帯に、レンから電話があったの。呼びかけには応えなかったけど、音声はきっちり届いていたわ。気を失う前にリンの番号を押したのね」
「…余計なこと、してくれちゃって…」
「そんなことがなくても、私たちは結局ここにたどり着いていたわよ。レンやメイトが見つからないまま帰ることはないし、あんな場所にあるのに私やルカがいつまでたっても気付かないことはないしね」
 そう、メイコが淡々と説明を続けている中で、ルカはじっとカイコの言動に目を光らせていた。おかしな行動を起こせば、この建物の事はカイコの方がよく知っているのだ、厄介なことになる可能性もある。本棚にあんな仕掛けがあったのだから、他にもトラップのようなカラクリが仕組まれていると考えるのが妥当だろう。
 しかも、手錠を簡単に用意できるような物騒な地下室の中、何があるか、全く検討もつかない。あえて検討がつくものをあげるとしたら、『爆弾』だろうか。
「…観念したら?」
「こ、ここには爆弾も拳銃も、沢山あるんだからね!」
「だからなんでしょう?」
 冷静なルカに対してカイコは子供のように大きな声を出して、少し後ろへ下がった。その間に、メイコがメイトとレンのほうに駆け寄り、呼吸が正常であることを確認すると、安堵の表情を浮かべた。
「主、後ろですッ!」
 その声にメイコが振り向くと、カイコが拳銃を手にし、その銃口をメイコのほうへとむけていた。メイコが素早くカイコと向かい合うと、カイコが先ほどよりも大きな声で叫ぶ。
「めーくんから…めーくんから離れてっ!」
「カイコちゃん…」
「何でアンタ達なんか来たのよ!アンタ達なんか来なければよかったのに!アンタ達なんか来なければ…っ」
 銃を持つ手は震えているようだった。
 そっと銃の安全装置をはずし、リボルバー式の銃に銃弾が入っていることを確認すると、またメイコの方に銃口を向けた。照準はきっちりとメイコにあっているのだろう。
「弾がそれたら、メイトに当たるわよ」
「いいよ、別に。そうなったら、もうめーくんは誰にも取られないもん。私だけのめーくんになってくれるもん」
「…歪んだ愛情ですね」
「う、うるさいッ!兎に角、めーくんから離れてってば!私のめーくんに近づかないでよぉっ!」
 ふと、メイコは以前にも感じたことがある何かを感じた。

 全く、ここにいる男性陣は役に立たない。
 二人とも行方不明…まあ、携帯電話で大体の居場所にメイコたちは気付いたらしいが、リンはノートパソコンを開いていた。爆弾の種類から爆弾の解除方法を探すためだ。
 携帯電話に入ってきたメイトの話では、カイコが爆弾を仕掛けた張本人だということになっている。リビア教の教会に仕掛けられた爆弾は時限爆弾。時限爆弾にも色々あるが、町から離れた場所にあるこの教会でできるものといえばたかが知れている。原始的なものを選べば、とめられるだろう、ということだった。
 しかし、そんな都合のよいサイトがすぐに見つかるわけもなく、リンはずっとパソコンの画面とにらめっこしていたのだ。と――。
「あった!!」
 思わず声を上げた。急いでノートパソコンのコードを抜き、マウスとイヤホンもはずして走り出した。

「めーくんは私だけのものなのっ!アンタなんかにめーくんは渡さないんだから!」
「カイコちゃん、別に私たちはあなたとメイトを引き離そうとしているわけじゃないし、あなたからメイトを奪おうともしていないし…」
「黙れ、黙れ、黙れっ!う、撃っちゃうよ!?死んじゃうんだからぁっ!」
 そう叫び、カイコが引き金を引いた。かわいた破裂音が地下室に響いた。
「…っげほっ」
「主!」
 一瞬で事は過ぎる。メイコの腹から血が噴き出したかと思うと、その場にメイコが倒れ、次に銃口が向けれらたのは、ルカだった。
「…ここには、爆弾が仕掛けてあるんだから。今、めーくんがいる辺りにね。凄い量の火薬が入ってて、それが爆発したらこの教会もろともこのあたり一帯、吹き飛んじゃうんだよ。…そこから動いたら、スイッチを押すからね。時限爆弾だけど、どんなにあせって走っても、逃げ切れないくらい凄いんだから」
 そういわれてしまっては、ルカとしてもうかつに動くことはできない。確かに、魔法で素早く遠くに行くことはできる。だが、もしもうかつに動いて本当に爆弾のスイッチを入れられたら、レンとメイトの手錠をはずし、負傷してまともにあることすらできないであろうメイコを担ぎ、リンにこのことを伝え、それから呪文を魔方陣を形成して――こんなことはルカにはおろか、メイコやカイトですらできないだろう。
 しばらくの沈黙と、重苦しい雰囲気と、鉄が錆びた臭いと血の臭いが、部屋にあるものだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

鏡の悪魔Ⅳ 7

こんばんは、リオンです。
今回はちょっと早いですけど、ちょっと短めですね。
予告です。来週、期末テストなので、例によってテスト勉強をするため、
投稿が滞ります。大して勉強しないくせに、何やってんでしょうね。
でも、アンケートはまだまだ募集してますので、お願いします。
アンケートで書き忘れたんですけど、
1と2は主人公がリンレン(どっちかっていうとレン?)で、
3は主にメイコ・カイト・ミク。主人公はメイコだと思います。
4はキャラクター設定を考えていただければ。
あと、選択肢を増やしますね。5,今までに書いた小説のギャグ系。
です。
それでは、明日からは投稿がありませんので、ご了承ください。
また今度!

閲覧数:484

投稿日:2009/11/09 22:18:46

文字数:2,152文字

カテゴリ:小説

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  • リオン

    リオン

    その他

    こんにちは、返事が遅れてしまいました!

    月影ルンナさん
    カイコさんははじめ、二種類の性格が考えてあったんですが、ヤンデレは決定でした(笑)。
    1か5ですね、反映しておきます!
    こちらで答えてもらってなんら問題は御座いませんよ!(←何)
    では、教から投稿再開しますね!

    Ж周Жさん
    カイコさん、めっされちゃうよ!?早く警察に自首してぇぇぇえ!!
    フルボッコだけは勘弁ですよ(泣)!!
    レンは私の嫁なんですが…。スイマセン。
    Ж周Жさんからのお説教タイムはいりました――ッ!!

    カイコさんは仮にも女の子ですよ!(正真正銘女の子ですよ!)裸マフラーはダメです!!
    1,2,5ですね、了解です!

    夕花 みずさん
    まさかのヤンデレですよぉ★
    それこそ腐臭漂う背徳の館ですね…。
    …みずさんなんかリアル!!!やめて、そんな正論で攻めないで!!心が痛い!!!!
    生き埋め…。ないすあいであ!!ですね!?
    こっちはショタ融解ターイムはいりました――ッ!!

    5番でレオンの出番が増えたら、レンには地獄のような日々ですよ!
    取り敢えず5ですね、わかりました!

    2009/11/17 14:24:28

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