-日常-
 ふわり、暖かな木漏れ日の中、青年は目を覚ました。
 上半身を起こしてカーテンを息よいよく開け、窓を開くと、庭の大きな月桂樹の木が風に揺れていた。
 どうしてこんな部屋にいるんだっけ…? 首をかしげる。…そうだ、今日から引っ越してきたんだった。
 彼は教員免許を取ったばかりの新任教師。今日から新しく赴任してきた学校で、数学を教えることとなる。
 黒く切りそろえられた髪と、ブロンドに近い黒の瞳と言う、どうにもまじめな印象を受ける彼は、もう一度ベッドにごろんと横になった。もう起き上がってスーツに着替えたほうがいいのだろうが…。
「起きる気がしない…」
 誰に話すわけでもなくつぶやいたのだった…。

「リンちゃん、おはよう」
「あっ、おはよう、ミクちゃん!」
 玄関で鉢合わせ、二人は挨拶を交わした。
 ミクの後ろにはプリマが物静かに立っていて、リンを見ると、軽く頭を下げて挨拶をした。しかし、リンの後ろにレンの姿は見えない。
「あれ、レン君は?」
「なんか寝坊したらしくて、今、急いで家出てるころじゃないかなぁ」
 朝のレンのあわてながらも眠気でぼうっとした姿を思い出しながら、リンは答えた。
「へぇ、珍しいね。レン君、いつも早起きじゃなかった?」
「そうなんだよね。夜、眠れなかったとかって言ってたけど…」
「ふぅん…」
 納得したというようにミクが声を漏らした。
 話をしているうち、二人は教室までたどり着き、席に着く。
 ふと、思い出したようにミクが言った。
「ねえ、リンちゃん。知ってる? 新しい先生が来るらしいよ」
「新しい先生?」
「ほら、数学の先生、結婚して産休取ったでしょ。だから、数学の先生が来るんだって」
「どんな先生だろうね?」
「若い男の先生ってうわさ」
「格好いい先生だったら大変だねぇ」
「他の女子が仕掛ける前に私が落とすわ」
「わぁ、応援する! っていうか、手伝う! 全面協力!」
「さすが私の一番の親友! 大好き!」
 二人はぎゅうっと抱きしめあった。勿論、ふざけていっているのであるが…。
「なぁに言ってんだ。物騒なにおいがする」
「あ、レン、結構早かったね」
 席について机に突っ伏しながら、レンは答える。
「朝飯抜き。牛乳だけ。学校まで全速力で走ってきた」
「そんなに急がなくても、まだ大丈夫だったのに」
 リンが言うと、レンは顔をあげて首を横に振りながら言う。
「いや、遅刻しそうになったからじゃなくて――」
 途中まで言ってレンは何かを思い立ったように席を立ち、教室のドアのほうに歩いていくと、ドアが開かないように押さえつけた。きょとんとして、リンがその姿を眺めている。
 しかし、その理由もすぐにわかった。
 ドン、と音がして、ドアのガラスのところに、レオンの顔がぬっと現れたのである。一瞬、レンがひるんでドアが少しだけ開いたが、すぐにレンが押さえて、ドアはしまった。
 ドアの向こうから笑顔で語りかけてくるレオンに、レンも笑顔で応戦した。
「どうしたの、れんきゅーん」
「だまれ、変態」
「またまた、そんなこと言って。レンきゅん」
「その呼び方やめろ。学校これなくすんぞ」
「毎日お見舞いに来てくれるなら喜んで」
「毎日命を奪いに行ってやるよ」
 この会話のすべてを笑顔で進められるのだから、恐ろしい。しかも、レンの足は思い切り踏ん張っているし、手には血管が浮き出ている。
「相変わらずだよね、あの二人…」
「すごく平和な証なんだと思うよ」
 リンとミクは他人事のように言っていた。
 しかし、当のレンは必死である。
 笑顔には明らかな悪意が見られる。
 本当にそろそろレンの血管の二、三本が切れるのでは、思われたころ、ちょうどよくチャイムが鳴り始めた。ぱっと手を話し、急いで席に着くレンの後ろを負って、勢い余って転倒したレオンが席に着く。
 担任が入ってきて、けだるい一日が始まったのだった…。

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  • 非営利目的に限ります
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鏡の悪魔Ⅴ 1

こんばんは、リオンです。
お気づきでしょうか。
今日、七月三日は「鏡の悪魔」が始まった日なのです。
去年の今日、「鏡の悪魔 1」を投稿してから、実に一年。
それを記念して、鏡の悪魔新作です。
…え、どうでもいい?
すいません。まだ話もちゃんと決まってません。ごめんなさい…(逃

閲覧数:505

投稿日:2010/07/04 00:01:28

文字数:1,635文字

カテゴリ:小説

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  • 紗央

    紗央

    ご意見・ご感想

    おぉぉぉぉぉ!!
    鏡の悪魔・・!
    おいこらレオン
    レンきゅんって呼んでいいのは紗央だけだ←
    ・・嘘です(笑

    2010/07/04 11:47:01

    • リオン

      リオン

      こんばんは!
      久しぶりに鏡の悪魔でございますです。
      私も言いたいです、レンきゅん。私もお許しを出してくださいぃぃぃいいいいいい!!!
      いえいえ、次レオンがそんなことを言ったらフルボッコですね。

      2010/07/04 18:11:01

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