<Dear My Friends! 第2期 第39話 ロック解除>
(2016年3月9日 ニホン国 トウキョウ アキバ 雑居ビル(以下、アキバ地下研究所)B1F)
地下1Fへ通じる階段を降りた先には、いかにも地下施設らしい“セキュリティ装置”が設置された分厚い扉が待っていた。その扉に施されたセキュリティは、指紋認証、網膜認証、の2つで、スパイ映画ではお馴染みのセキュリティであるが、ここは都心のアキバである。これだけでも“ここが普通では無い”事がよくわかる。
当然、ここに案内し、知っているだろう“マカ”だけが、ここを突破出来る資格を持つわけなので、マカだけがセキュリティ扉に近づいた。
まずは、“指紋認証”、を行った。少し傾斜のかかった台の上に置かれたタブレットパソコンらしいモノのスクリーンに手を置くと、指紋認証が始まった。
マカ以外の全員が、常識的な感覚から、“絶対何か不都合が出てこないとおかしい”、と思っていた。“この時代は、自分達が生まれるずっと前”だからだ。“未来からの渡来人”の指紋のデータが、自分が存在してない過去のアキバにあるはずがないのだ。
だが、その常識は、どうやら“最初から”フォーマットし直さないと行けないようだった。
***
<指紋認証>
種別:Gear
形式番号:GEX-0000
名称:プロトマカ
<指紋認証終了>
> 網膜認証にお進みください
***
指紋認証の照合まで出来て、次の網膜認証に進めてしまったのだった。
イグゾウ:な、なにぃ!? 何故“自分が存在してない過去”に、自分の指紋データがあるんじゃぁ!?
マカ:それはここを突破してから、ちゃんと説明する。まずは、次の網膜認証だ。それが終われば、あとは…
マカは両目を、今度は扉に付いている、眼科で良く置いてある眼球検査装置にあてがい、網膜認証を行った。
***
<網膜認証>
種別:Gear
形式番号:GEX-0000
名称:プロトマカ
<網膜認証終了>
<ロック解除>
ロック解除エリア
B1F~B10F:Full
B11F“ギア保存室”:Full
B12F“ギア研究室”:Full
最深部“所長カリマ・執務室”:Lock
***
マカ:ま、そうだろうね。我々“ギア”が、カリマの部屋に入れて貰えた事は、一度も無いんだから。必ず奴との謁見は、研究室だった。奴の言葉を借りるなら、“テイマーはギアを統べる者”、故に、テイマーのエリアには入るな、そういうことなんだろう
全員、全く意味がわからなかった。が、テルのみ、何とかマカの言葉の文脈だけ理解でき、そして、ズバっと核心を問いかけた。
テル:マカ…、キミは、この時代に生まれた、“ギア”、だったんだね
マカは唇をかみながら、震えて言葉を絞り出した。
マカ:ああ。忌まわしい過去だ。私はこの時代に生まれた、『最初のギア』、型式番号GEX-0000、名称『プロトマカ』。これ以降、私をベースに開発された数々の“ギア能力試験型マカ”の起点であり、プロトマカは私1体のみ開発された
ルカ姫は恐る恐る、“普通の人なら疑問に思う事”を質問をしてみた。
ルカ姫:あ、あの…。一応質問したいんだけど、カリマ博士は、その、言ってみれば、“マカの生みの親“、なんでしょ? なんで、そんなに、親が、憎いんですか?
マカも、そう言われるとは思っていたのだが、マカには“しっかり芯の通った理由”、が存在した。
マカ:ルカ姫、何かを生み出す、作り出すって、大変だよね? 特にこんな特別な力を持った個体を作るなんて、尋常ならざる時間と労力が必要だ。それに、“人型を生む出す事”など、人間なら性交で子供を産むか、男性の精子を使った試験管受精で子供を作るしか、通常は出来ない
ルカ姫:“しけんかん”とかは知らないけど、男性と女性がごにょごにゅするのは、ごもっともなんですけど・・・・・あ、あれ? なら、その、凄く非常識な話になるけど、カリマ博士って、結婚していて、奥さんと子供を作って、その子供を、その、この研究室でやるような事をして、プロトタイプの貴方が出来たとか?
マカ:貴方も可愛い顔をして、随分、残酷な事を想像出来るんですね?
ルカ姫:ご、ごめんなさい…。そのイアの一件とかテルの事とかあって、色々と、その…
マカは一呼吸を置いて、ルカ姫を含め、全員に自分のルーツを話した。
マカ:カリマは一生独身、性交相手の女など聞いたことが無い。そもそも、そういうことに全く興味が無いのがカリマだ
ルカ姫:な、なら、あなたはどうやって…
マカ:僕は、“元々人間”で、研究材料にされてこうなったのは、ルカ姫の想像の半分だけあっている。だが、カリマの子では無い。隣国からカリマが買い取ったのだ。研究者あるまじき行為、つまり、『人身売買』だ
全員、言葉が無かった。
マカ:カリマの研究のネットワークは、アンダーグラウンドのレベルだが広く、隣国にもあったようだ。そのツテでカリマが隣国へわざわざ出向き、能力保有が期待できる、私を金で買い取った。“研究材料”として…
ルカ姫は、涙が流れてきた。私が口火を切ってしまったのだ、こんな残酷な事を語らせてしまったのだ…。
マカ:カリマは、言葉では言えない程の研究を私に施し、最終的に私が持っている“ギア能力”の覚醒にはじめて成功した。隣国を含めネットワーク全体を通じて。開発当初は、私自身ではこのギア能力を引き出せず、“テイマー”とカリマが名付けたカリマ自身が装置を使って、能力を覚醒させて、色々、やらされたよ、もう、その事は語りたくないが、ね
ルカ姫:も、もういいよ、もう、やめようよ、酷すぎるよ…
マカは言葉を途切れさせて、全員に訊いてみた。
マカ:ルカ姫はそういう要望だが、みなは、この先の事、そして、何故私がカリマを憎んでいたか、理由をちゃんと訊きたいか?
全員黙っていたが、テルが代表して、1つだけに絞った。
テル:憎悪の理由はよくわかった。1つだけ、今後どうするか、訊きたい。カリマの殺害、そしてここのプロトマカを破壊したら、キミが消えてこれ以降の歴史が大きく改変してしまうだろうし、カリマを倒しても研究は、そのネットワークを通じてこの時代の他国の研究者が、おそらく、あるであろう“キミの亜種”か、隠しても見つかるだろう、キミ自身を使って継続するだろう。フォースバランスは大きく変わるだろうが、今後のギアとテイマーの時代は、いずれ来る
大きく頷くマカ。そして皆も納得していた。その通りだ。もし、カリマの“ギアとテイマーの研究”をここで終わらせるなら、自分達の存在も、対価として差し出さなければいけない。
マカ:私は、ね、カリマを殺す気は無い。憎悪分、きちっと復習した後、カリマを制御下に置いて命令し、ギアの研究をもっと別の方向で使える様に、研究方針を変えさせるつもりなんだよ。国の裏側との折衝は私が行うつもりだ。勿論、この時代の私とは、色々面倒な事にならないように、自身で封印する。そのためにも、まだLockされている最深部のカリマに会う事が絶対条件なのだ
ルカ姫はマカの手に手を重ねた。
マカ:ルカ姫…
ルカ姫:行きましょう! 私達の時代の“あんなギア戦争”になる研究なんて、やめさせるべきです!
チンシャン:マカ・・様、つらい目に会い続けて、私達の時代まで生き続けて・・・・・
ティエンイ:私の力で、何か力になれれば…
イグゾウ:技師の倫理違反だ! だめだぞ、こういうのは!
アペンド:そうね、あんなのは、ちょっと行けないと思う
テル:昔の私なら言えた義理では無いが、今の私なら、アペンドと同意見だ
リン:私もあんなのごめんだよ
レン:俺もあれは行けないと思う!
学歩:倫理に外れた、外道の博士は、少し反省させるべきでござるよ!
めぐみ:法律違反です! だめです! こういうのは!
ミゥ:行けない子です!
ミズキ:こういうのは、だめだと思うよ、やめさせないと!
ゆうま:外道以下だ。すぐにやめさせないと!
そして、りおんがナックルをはめた手を前に出して、こう言った
りおん:一発これで殴って、目を覚まさせてやるのだ!
マカはこれまでに味わったことが無い、暖かい気持ちがわき上がった。これが、“友情のココロ”、なのだろう
マカ:ありがとう・・・・・・・・
こうして一行は、扉を開け、B2Fに通じる階段を降りていったのだった。
(続く)
CAST
イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-
ルカ姫:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
僧侶リン:鏡音リン
勇者レン:鏡音レン
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI
ヤマト国からの旅人三人組
瑞樹(ミズキ):VY1
勇馬(ゆうま):VY2
兎眠りおん(りおん):兎眠りおん
ミゥ:Mew
欲音ルコ(ルコ):欲音ルコ
唄音ウタ(デフォ子):唄音ウタ
桃音モモ(モモ):桃音モモ
雪歌ユフ(ユフ):雪歌ユフ
義 井具蔵(ヨシ イグゾウ)(イグゾウ):某演歌歌手
ゾラ・キョウ(キョウ)=生まれ変わったルォ:ZOLA PROJECT (KYO)
チンシャン:某女性中華ボカロ
マカ:某少年中華ボカロ
ティエンイ:某女性中華ボカロ(ルォの姉(こちらが本家“ルォ・ティエンイ”で、女性中華ボカロになります))
その他:エキストラの皆さん
Dear My Friends! 第2期 第39話 ロック解除
※2016/05/05更新:誤字脱字、表現の変更、多少の文章変更
※ボカロ小説作品第16弾である、「Dear My Friends!第2期」の続きです。
☆第39話です。
※ナンバリング的には2期になります。
☆ピアプロとpixivの同時掲載をしてます。
※ボーカロイド小説です。が、ボカロのファン設定とかボカロの名前を変えると、オリジナルモノになります。なので、二次創作の二次は、ボカロの名前位です。
○今回も1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。現在もピアプロに続きを連載投稿しており、完結しておりません。
☆2期では、”イアさん”と”ルカ姫”のW主人公で行っていますが、シナリオによって、軸が変わっているところもありますので、そこら辺はご愛敬で…。
☆マカの真実です。ちょっと色々深いです。
☆カリマ、許すまじ!
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