はじめましての方ははじめまして。さて、作詞講座と銘打ちながら技術的な事にさっぱり言及していなかったので技術的な覚え書きとして、インターネット老人でありピアプロ作詞応募専老人から見た「譜割り」に関して思うところの覚え書きを書かせていただこうかと思います。こんなけったいな趣味に足を踏み入れてしまった同志として何か参考にしていただければ幸いです。覚悟しろ。ここが地獄の二丁目だ。
0⃣譜割りってそもそもなんだっけ。
一つの音符に複数の文字をあてがう表現方法です。前のアカウントやってたころはそうでもなかったんですが、最近はわりとやってる人多いですし、コンポーザ―さんも譜割りやれますみたいな事言って応募かけてる人も多くなったなって印象があります。最近の音楽でわかりやすいところで言うと、ずっと真夜中でいいのに。のACAねがバキバキにやってるやつですね。僕らの若い頃だと椎名林檎やボカロ音楽のテクニカルな表現を好む層がゴリゴリにやってた印象があります。椎名林檎はブラックミュージックの影響が強いので英語的な発声やラップの用いるアプローチをそのまま日本語に適用してきた感じでしょうかね。初音ミク黎明期に音楽やっていた世代と言うのはちょうど椎名林檎の影響の強かった世代でもあるので、必然的に譜割りが多用される環境になっていったのかもしれません。いやマジで多かったんですよ漢字二文字+カタカナのタイトルの作品。あれ全部丸の内サディスティックのせいです。
1⃣譜割りをする事によるリスクを把握しよう
①正確に伝わる可能性が低い(慣れた相手でも結構大変です)
②良くも悪くもコンポーザーのメロディの解釈を捻じ曲げる
③単純にコンポーザーの作業量が増える(※本当に結構大変)
④メロディに対する介入を嫌がる人もいる(音楽性の違い)
⑤商業でもこれはあんまり変わらない(環境と人による)
⑥ボカロだと限界がある場合がある(シンセサイザーVも含)
※ シンセサイザーVとかだと作業は結構楽になりました。
※ 普通はオクターブ下げてノート刻んだりします。
※ この場合、マジで死ぬほど面倒です。
※ 自分で一回やってみると、嫌う人が多いのも頷けます。
2⃣歌詞がうまくなりたいなら積極的に取り入れよう
①職人技巧みたいなものなので慣れと経験が必要
②メロディを音の数ではなくフロウで捉える癖がつく
③メロディをさらに良いものにできる可能性がある(所説あり)
④扱える言葉の選択肢が増えるので表現の幅が広がる
⑤慣れると一音に三文字ぐらい平気で詰められるようになる
⑥今後さらに譜割りが一般化していくと考えられる(後述)
3⃣環境面から見た譜割り
①ネット環境の発展で様々なジャンルの音楽が混血を始めている
②ラップ音楽的テクニックが他ジャンルに用いられるケースも多い
③なので譜割りをするとかしないとかの話じゃなくなりつつある
4⃣譜割り入門編
譜割りを使いこなしたいなら先ずは音数を数えるのをやめるところから始めた方が良いです。メロディを考えるな。メロディを感じろ。譜割りのできる条件は一概にはなんとも言えないです。できる時はできる。できない時はできない。やれるけどやらない方が良い時もあれば、やれなそうだけどバキバキに割っていく方がフロウが綺麗になる時もあります。とにかくメロディを聞き込んで、メロディを歌ったりしながら書いて書いて書きまくって身体で覚えて下さい。そもそも理論的に覚えられるものじゃないです。ACAねもそうですが、やくしまるえつこさんとかもあんだけふわふわしたフロウをしているように見えて時々「なんだそのアプローチ!わい知らんぞそんな技!」みたいな事を平気でぶっこんできます。
例えば、輪るピングドラムといういにしえのアニメの映画で「僕の存在証明」っていう曲があるんですが、その中に「誓いを立てた あの日」というフレーズがありまして、この「た」と「あ」のところが実は譜割りになってそうな感じがして、ここはようするに「た」の「あ母音」を再度発声する事によって「あ」を表現してる感じがするわけです。僕はこの技を勝手に「リブレス」と呼んでいます。例えば「鼓動を」みたいなフレーズで使えたりします。「こどお(お)」って感じですね。まぁ、「お」の場合は二度目の「お」の発声自体がキャンセルされやすいんですが、これを「あ母音」でやって、しかも発声している人類は僕は何気にこの曲で初めて見ました。やくしまつえつこぱねえ。
まぁ、後は洋楽邦楽を問わずにラップミュージックをもりもり聞いてください。普通の歌メロ曲では見かけないテクニカルな技巧の宝庫です。怖いお兄ちゃんの音楽があんまり趣味じゃなかったらMori Calliopeとかおすすめです。彼女はVtuberですが良いラッパーだと思います。REOLとやってた虚像のCarouselとかかなり見事でした。ずとまよの曲にも参加してましたしね。ACAねに関しては今後の時代を生き抜いていく上での教科書にしたいところですが、彼女ぐらいバキバキのバキに割るとピアプロみたいなテキストベースのやり取りだと先ずニュアンスが伝わらないので、そこらへんは上手くやっていくと良いんじゃないかなと思います。
5⃣もっと具体的な音や事例
代表的なところだと「い」は割りやすい音です。「s子音」は喰い入れやすい子音です。僕が良くやっていたのは「せかい」とか「みらい」を一音で纏めてたりとかですね。「s子音」や「m子音」を頼って「せ」や「み」で喰い入れて、「か」にアクセントを置いて、「い」を喰い下げる。バキバキに尖っていた頃の椎名林檎に比べたらかなりマイルドな譜割りです。
椎名林檎がどんな事をやっていたかと言うと、個人的に一番えぐいなと思っているのが「群青日和」という曲のDメロ「突き刺す十二月と」の部分です。これ多分ノートとしては七音なんですよ。ひらがなにすると11文字ありますね。構造的にどうなっているかは下に書きます。
つき(さあ)(すじゅう)にが(つと)
お分かり頂けたでしょうか。先ず(さあ)の部分、「さ」の「あ母音」を同ノートの中で再度発声する事によってビブラートのような強調をしつつ、次の一音で「s子音」を頼って「す」を喰い入れ、「じゅ」にアクセントを置きつつ「う」の発音を「JYU」の「U」をリブレスしつつもその発声をキャンセルしている感じですかね。なんだこれ。(つと)は「つ」の「t子音」を頼って「つ」を喰い入れてる感じがします。続く「伊勢丹の息が合わさる衝突地点」も同じぐらいやばいんですよ。ぱねえ。こんな感じで他の作家さんのやっている譜割りというのは自分に無いアイデアや技巧を吸収するためのこれ以上ない教材となります。積極的にたくさんの音楽を聴いてたくさんの技を会得していきましょう。
最近の音楽で言うとACAねに至ってはもう何やってるのか正直よくわらないです。譜割り大好き教徒の僕でも何がどういう構造でそういうフロウと発声に至ってるのかさっぱりわからないところが結構あります。あれはもう限りなくフリースタイルに近い何かです。治安の悪い文化に抵抗が無ければフリースタイルバトルも積極的に聞いていきたいところですね。Fuma no KTRなんかがおすすめです。そして恐ろしい事に、そういった現代の技巧の極致がスタンダードになる時代が今後確実にやってきます。スポティファイのインディーズどころなんてすでにかなりそんな感じになってきています。怖い。
6⃣譜割りの伝え方
商業だと仮歌だとか決め打ちの時はメロディスコアのデータを貰って、手書きでかなとスラーみたいな記号を書いて表現したりできる(FIXさんやVoさんの解釈によって譜割りが変わる事もある)んですが、アマだとスコアPDFを書き出せる方ばかりではないので、そういった場合は僕は最近はグーグルドライブのドキュメントを使っています。具体的な例を出すとこんな感じです。最近僕が書いた中で一番譜割りがひどいやつをもってきました。ちなみに曲はこれです。
https://www.youtube.com/watch?v=IKoEyGO8dgU
https://docs.google.com/document/d/1-MqK7n_6ExS8KaAP3EnBtKspWLcg4RsLGnl7V-NZn2Y/edit
※ 灰(譜割りなし)
※ 赤(譜割り・三連続した譜割り)
※ 青(連続した譜割り・四連続した譜割り)
※ ピンク(喰い入れる譜割り)
※ オレンジ(譜割りに連続して喰い入れる譜割り)
7⃣ピアプロで譜割りをするという事
ピアプロだと()の中に複数の文字を入れて1ノートとして伝える試みがされていたりしますが、あれ実は結構伝わりにくいです。そもそも白黒の情報って処理するのに結構なストレスがかかるのであんまりみんな読まないです。ピアプロの歌詞募集で譜割りが障壁になるのってこのあたりが結構大きいんじゃないかなと思います。僕も同じ歌詞募集の方たちの歌詞は一通り読んだりしますが、かなの方まで読む事はあんまり無いです。あれはあくまで打ち込む時の確認用だと思っておいた方が良いかもしれません。初見でするっと読める程度の譜割りでないと、物語やモチーフや単語セレクトによほど引っかかりがない限りはわざわざ確認して貰えないです。そして、初見でするっと読めない歌詞は恐らくマイナスな印象を与えます。マイナスな印象の歌詞の譜割りまではなかなか確認して貰えません。デッドロック状態ですね。ピアプロはコンペ形式なので、同じぐらいの印象の歌詞があれば譜割りのわかりやすい歌詞が取られがちなんじゃないかなと思ったりもします。まぁこれも募集主さんによりけりではあります。
8⃣それでもピアプロで譜割りをするという事
僕の場合は単純にその方が自分にとって満足度が高くてクオリティを高める事ができると思っているからです。あんまり出会った事はないですが、中にはその方がむしろ面白がってくれる人もいたりします。譜割りは結局音の趣味の問題になってくるので、やりたいようにやって音楽性の近い人と一緒に楽しめえるのが一番良いのかもしれません。出戻り開幕で三連敗した負け惜しみとかじゃないんだからね!!
まぁ、それでも頑張って書いたものが袖にされるのはわりと堪えるのでほどほどに割ってほどほどに楽しめた方が良いかなと日和ったりする日もあります。まあ僕の場合は元々ピアプロでの勝率は20%ぐらいだったので全然落ち込んでません。全然落ち込んでないんだからね。ぐすん。まぁ、それでも僕はたぶん歌詞を書く事も譜割りをバキバキにする事もやめないんじゃないかとは思います。なんかもう僕の場合はそういう病気です。みんなこんな大人になるんじゃないぞ。さて、そんなこんなで今回はここらでゆるゆると筆を下ろさせていただこうかと思います。皆様に素敵な音楽ライフがある事をお祈りさせていただきまして、ご清聴ありがとうございました。
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daidarobot
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この内容を作詞されてる多くの方が心に留められることを切に願います。
2024/08/27 17:46:23