十数年前……
ブルーローズ・レジデンスの寝室


「どうしたんだいフーガ? また、ボロボロにされてるじゃないか?」

「うっ…うん……」

「またあれだな、他のヴァンパイアの子たちから虐められたんだね?」

「そうだよ…母さん……。お前は血の掟を破った混ざりのマモノだから、俺たちに寄ってくるなって言われたんだ……」

「でっ…お前はそいつらにやり返さなかったのかい?」

「ぼ…ぼくには母さんみたいにできないよ……」

「だろうね……フーガは、死んだ父ちゃんに似て草食系だもんな。なら、ヒトの子たちは遊んでくれるだろ?」

「ヒトの子たちにも…お前が遊びにきたら女の子を独り占めするからくるな! って言われるよ……。ぼく…なにか悪いことでもしたのかな……。だれも…ぼくを受けいれてくれないよ……」

「フーガ……。なんで母ちゃんがさ、青いバラが好きなのか知ってるか?」

「わからないよ…………」

「昔はね、青いバラにつけられた言葉は不可能だって言われてたんだ。けど、それが“夢かなう”って言葉にかわったんだよ」

「夢かなう……?」

「そう…この広いセカイにバラだけは、青い花を咲かせることができないんだってなってたんだけど、できない事をヒトは可能にしたから夢かなうに変わったの。だからフーガ、お前にも友だちができる夢が叶うってことさ」

「できるかな……ぼくに友だちが……?」

「できるさ……だから、もう泣くのをやめな……」

「う…うん……」

「まだ泣いてるんだね…男の子なのに……」

「だって…母さんが旅立つからだよ……」

「ごめんな…ちょっと色々あってさ、母ちゃんは仲間といっしょに闇と戦わなくちゃならないんだ……」

「母さんはなんで…闇と戦わなくちゃいけないの……?」

「それは、このお守りが示す…導きに従わなくちゃならないからだよ」

「ぼく…いやだよ……母さんが家からいなくなったら……っ!?」

「だいじょうぶっ! 母ちゃんは必ずお前のもとに帰ってきてやるからっ!。それに旅のついでにさ、お前に友だちを連れてきてやるっ!」

「友だち……?」

「そう、フーガのことを心から大切にしてくれる友だちをさ。母ちゃんとの約束だからな…だからもう…泣くなよ……」

「うん…約束だよ……」

「おーいっ、バーバレラ。もうすぐ行かないとイルヴァルス行きの蒸気船に乗り遅れちまうぜ」

「わかってるガイア。子どもと話してんだよ」

「そいつは悪りぃ、悪りぃ。クリス、もうちょっと待とうぜ」

「彼女を待ってあげよう。親子の別れは大切な時間だからね……」


 幼少期のフーガとその母バーバレラは、別れる間際の会話で約束していた。混血であるが故に迫害されてしまう我が子へ、友だちを連れてくると云う約束を……。
 この時、母を迎えにきた2人のヒトのうち一人は翡翠色の髪を持つ男性で、その隣に金色の髪を持つ男性が立っていた。

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投稿日:2020/01/09 19:42:00

文字数:1,221文字

カテゴリ:小説

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