僕が彼女から貰った空は、今まで見上げたどんな空よりも聡明で
どこか儚さにも似た限りなく純粋に近い蒼穹色に輝いていた。

ちょうど去年の今日 11月5日だった。
僕の家族が別々の人生を歩む日を迎えた。

僕の心の中には白黒の8ミリビデオのような画質の粗い思い出たちが流れていた。

海水浴に行った日の映像。山登りをした日の映像。
サッカー観戦した日の映像。参観日で凧揚げをした日の映像。

どの映像にも違った色の全く同じ空が映っていた。
きっと昨日の空も今日の空も明日の空もどれも違った色の同じ空だ。

その事に気付いた瞬間、僕は彼女から貰った空を強く握り締めた。
そして「大丈夫だよ」と僕は今も空に居るであろう彼女にそっと呟いた。
きっと雛のオスかメスの区別をするよりはずっと簡単な事さ。

この空を貰った瞬間、1年振りに晴れたんだ。

今度は君のそのハサミで僕の空を切ったくれないかい?
そしてあの人にあげてほしいんだ。
僕の空はこの空のようにきれいな色に輝いてくれるかな?
あの人は喜んでくれるかな?

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空切りシザーズ ~ Dear★Super☆Star ~ ショート・ストーリー ~

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投稿日:2009/11/04 18:58:00

文字数:452文字

カテゴリ:小説

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