「13」です。これは本当に見た夢を基にした話です。
パラレルでオリキャラが少し出ております。
若干描写がグロテスクかもしれませんので、苦手な方はご注意ください。
パラレル、オリキャラ、グロ、全て大丈夫な方はスクロールでお読みくださいませ。










>>13



 灰色の雲に覆われた暗い世界。耳を劈くように響き渡る雷鳴と、突然割れた空に気を取られながら・・・俺はその音を聞いた。
 何かが捻り潰されたような音。何かが容易く折られたような音。何かが何かにぶつけられたような音。何かが飛び散る音。俺の目から眩しさが消え、元の世界を映し出すまでの数秒間・・・それは鳴り止まなかった。
 ようやく通常通りに映った視界。その視界には、俺たちが住んでいる街。車があって建物があって植物があって・・・でもその街は、見る見るうちに廃墟と化していく。さっきまでこんな景色じゃなかったことを考えれば、おそらくあの製作者が何かしたのだろう。ただ、現実世界でないことだけは確かだった。
 俺の視界の端で勢いよくビシャッと何かが空に向かって飛んだ。黒じゃない・・・赤い、血。
 ベチャ、ビチャ・・・ゴキン、ゴキッビシャッ・・・!
 何が起こっているのか大体予想はついた。誰かが何かを・・・人を潰している。首を折ってるのか、手を折ってるのか、足を折ってるのか・・・それとも、背骨か。グチャグチャとかき回されているのは内臓か、肉か。
 それをしているのは・・・誰だ?
 嫌な予感のままにゆっくり視線を下へ。
 ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり・・・。
 見えた景色に・・・全てに、俺は愕然とするしかなかった。どれだけ信じたくないと思ったか。
 ――絶望は口を開けて待っていた。そんな、テロップを見たような気がした。
「あは、はは・・・・・・アハハハはッ!!」
 壊れた笑い声を上げながら、そこで既に事切れているミクをグチャグチャにしているのは・・・まぎれもなくルカで。それは、俺のパートナーのルカで・・・。どれだけ他のルカだったら良かったか・・・と考えている時点で、これは夢ではない。
 暗く染められた空のせいで、影に覆われた世界。雷鳴が轟き、ぽつりぽつりと冷たい雫が体を濡らし始める。
 ルカの目の前には、AAAたちが無残な姿で転がっていて、ルカは血まみれになりながらそれを口へ・・・。
「嘘、だろ・・・?」
 俺の言葉も姿も、多分見えてない。足の痛みを堪えて立ち上がっても、少し近付いても・・・その目は俺を見ようともしなかった。ただ、血肉を拾っては口に運ぶ。そのせいで自分の体がますます汚れていくのに、彼女の手は止まらず死体へ突っ込まれる。
 見たくなかった。こんなルカ・・・俺は見たくなかった。
 首をゆっくり横に振ったその時、ザザとまたあの音が響く。
『ルカ、そこにいる彼と遊んでやりなさい』
 残酷な声がして、ルカがゆらっと立ち上がる・・・そして俺を捉えた。冷ややかで、瞳孔が完全に開いているんじゃないかと思えるような・・・そんな狂った目。
 雨がどんどん強くなる。風も強くなってきた。
 ザーッと雨の音。そのまま全部消えてしまえばいいと思うのに、消えるわけもない。
 目の前に立っている女は、明らかに俺が知っているルカじゃなかった。
 ・・・俺の知っているルカじゃない?・・・それなら、目の前にいる女は・・・一体誰だ?
 答えなど出るはずもない自問。これほど無意味なことがあるだろうか。だって彼女はルカだ。正真正銘ルカなのだ。それ以外の誰かであるはずがない。
 ただ、変わってしまったのだ。
『さて、シュンくん。もしも君がそこにいるルカに勝てれば、
 このプロジェクトは打ち切りにし、全員元に戻すと約束しよう。
 プログラムはそのように書き換えた』
 せいぜい頑張るがいい、と冷ややかな声が響き渡る。
 何だこれ、夢か?夢なら、それでいい。もし夢なら、覚めれば全てなかったことになる。
 でも目の前にあるのは、どれだけ瞬きしても目を擦っても頬を抓っても消える気配はない。
 夢じゃない現実。変えることのできない現実。もしもここから出たいのならば・・・俺は男の言葉通り動くしかない。
 そう、男の言った通りに・・・・・・ルカを、倒すだけだ。
 はは、と小さく笑みが零れた。それ以外の反応の返し様がない。
 あれだけ俺のことを考えていてくれたルカは、簡単に敵の手に落ちてしまって、残ったのは俺だけ。男の言い方からして、生き残りは俺だけと見ていいだろう。
 他の誰かがいたならどれだけよかっただろうか。そいつに全て任せて、俺は ただ耐えて見ているだけでよかったのに。
 ルカの鋭い目が俺を捉えて、にこりと微笑む。
「・・・無理だ・・・」
 大粒の雨が視界を遮る。俺の足は一向に動かない。痛みなのか痺れなのかよくわからない感覚は、俺の思考まで止めてしまったようで、動く意志すらなかった。
 前方には、食い散らかされた死体の隣で、俺を恍惚とした目で見つめているルカ。
 どこか人事のようにその光景を見つめながら、何度か荒い呼吸を繰り返していた。
 足からは出血が止まらない。このまま痛みで気を失ってしまえばいいとすら思った。そうすれば何もかも見なかったことにできるのではないかと。だって俺は、ルカを倒すことなんてできるわけがない。
「できない・・・」
「あら、怖気づきましたの?」
 本当に情けない人、と言いながらルカが赤い赤い唇で笑う。
 彼女のその冷たい目には、俺には到底見えない世界がそこには広がっているのだろう。地獄か、はたまた天国か。俺の目に映るこの現実世界と変わらない街は、ルカの目にはもしかするとそうした何か別の世界が映っているのかもしれない。仮想現実を生きる彼女の目には、とにかく俺の姿などガラクタにすぎないのだ。
 虫けらを見るようなルカの目に、そんなことを思った。
「・・・何、期待してたんだろうな」
 たかだか彼女と半日ほどいたいうだけで、どうして俺はあんなことを考えていたのだろうか。馬鹿すぎるにもほどがある。
 狂気に包まれた世界の中で、彼女だけはリンやレンや・・・他のマスターを裏切った奴らみたいには絶対にならない、と信じていた。その時の俺が持っていた根拠のない自信は、一体何だったのだろうか。
 自分の甘すぎる考えに反吐が出る。少し考えればわかったはずだ。こいつらはナンバーが違うだけで元は同じように作られたもの。いくら特別なナンバーだからと言っても、製作者の命令に背けるわけがないのだ。何故、気付けなかったのか。
 信じていたからか?ほんの半日ほどしか過ごしていないパートナーを?・・・間違いは、そこからだったんじゃないのか。
 ・・・ああ、くそ。
 動こうとしない俺に飽きたのか、ルカはまた死体を貪り始めた。ゴリンゴリンと骨を砕くような音。骨なんかあるのかどうかなんて知らないが、確かに何か硬いものを砕く音だった。もしかしたら機械を砕いている音がそう聞こえてしまったのかもしれない。
 それぐらい・・・俺はまいってた。尋常じゃないぐらいに。
「ルカ・・・俺にはできない・・・」
 死体を貪り続けるルカを見ながら、目を伏せる。
 情けないと言われても、何と罵られても、俺にはできない。俺がこのままお前に殺されたら、俺の世界はここで終わる・・・それでいいじゃないか。そうすれば、俺は何もかも見なくてすむ。
 そこまで考えて、はっと目を開いた。
「・・・違う」
 ゴキンと音が響く中で、自分の考えを否定する。手首に結んでおいたハルの服。もし俺がこの世界を壊せなかったら、あいつはどうなる?あんな無残な姿で、供養も何もあったもんじゃないこんな場所で・・・あいつは死ぬのか?俺はそれでもいいかもいいのか?俺は・・・そうやって死んでもいいかもしれない。でも、ハルはそうじゃないはずだ。だってあんないきなり殺されて・・・そんなの、酷すぎるじゃないか。
「うふフ・・・フフ、あはハハはハハハッ!!」
 嫌な音と、耳障りな笑い声。彼女の笑い声に共鳴するように地面が隆起し、あるところでは沈降していく。それに合わせて、見えている建物が崩れ落ちた。発破されたように視界から消える建物。車がひび割れた地面に飲み込まれて消えていく。
 もしかしたら製作者のあの男は、ルカを放っておくと現実世界がこうなるぞってことを俺に見せているのかもしれなかった。俺が戦わなければ、今度は現実世界がこうなる。だからルカと戦え。男の言いたいことは手に取るようにわかった。
 あの男は世界を自分のおもちゃだと思っていて・・・今はただ、俺とルカが戦うのを観て楽しみたいのだ。ようやく良いパートナー同士になれた気がしていた俺たちを引き離して、戦うように仕向けのも、自分自身が楽しみたいがため。製作者は、勝ち負けはどうでもいいのだ。ただ、観戦したい・・・それだけの理由。
 もしかしたらルカが狂気に支配されてしまったのは、俺のせいかもしれない・・・いや、「かもしれない」じゃなく、多分俺のせいだ。あの時俺が撃たれて、ルカはどう思っただろうか。もしかしたらそのまま死んでしまうのではないかと思ったんじゃないか。それでルカは・・・壊れてしまったのだ。もしかしたら、あの時俺がすぐに大丈夫だということをルカに知らせていれば・・・何か変わっていたのかもしれないのに。
「ごめんな・・・ルカ・・・」
 呟いたところで、その言葉はルカの笑い声と世界が崩壊する音と雨音に消えていく。ザァーッという大きな雨音がその全てを洗い流してくれたなら、どれほど良かっただろう。
 何故俺たちはこんな出会い方をしてしまったんだろう。何故俺たちはこんな道しか選べなかったのだろう。どれだけ後悔したところで、何もかも遅すぎる。
 唯一つはっきりしていることといえば・・・俺が彼女と戦わなければ、全ては終わってしまうということだ。
 どうやらゲームの神ってやつは、俺のところには降りて来なかったらしい。
「ルカ」
 雨音に混じって、俺の声が響く。
 集中して死体を貪っていたはずの彼女は、俺の方へ冷たい眼光を向けた。俺はそれに笑いながら「なぁ、そろそろ俺の相手もしてくれよ」と口にする。
 戦わなくちゃいけないってわかってても、まだ自分が死んだ方がいいんじゃないかってどこかで思っている。

 一瞬先の未来すら見えずに、それでも俺は・・・何故だか口元に笑みを浮かべていた。













>>14

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

Elysian 13

シュン・・・ッ!何かもう、お前・・・うおぉぉん!(黙れ
何だこの夢、と見た本人が思ってます。
胸が痛いよ・・・この痛さが読んでくださった方にも伝わってるだろうか・・・?
・・・とりあえず次回へ続きます。

ゴールデンウィークなのにどうしてだろう・・・別に何も変わってない・・・。
お客さん少ないし大して忙しくもないです。
そのおかげでサクサク書けるからまぁいいか・・・?(笑

閲覧数:146

投稿日:2009/05/02 17:09:35

文字数:4,321文字

カテゴリ:小説

  • コメント7

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  • +KK

    +KK

    その他

    >>紅翼さん
    こんばんは、紅翼さん。悲鳴、毎回ありがとうございます・・・というと変な感じですね(笑
    製作者・・・もう随分皆様からいろいろと頂いてるはずなのですが・・・全く効き目がないようです。
    とまぁそんな話は置いといて・・・ルカの心配とシュンの応援ありがとうございます。
    ルカとシュンが戦うことになってしまって・・・申し訳ない・・・何て夢だ・・・。
    いや、もう影ながらじゃなく最前線で応援していただけると助かります(笑
    本当にいつもありがとうございます。またいらしてください。では。

    2009/05/02 22:55:16

  • +KK

    +KK

    その他

    >>C.C.さん
    こんばんは、C.C.さん。
    まさにビンゴ!ということで・・・明るく言うことじゃないですね。
    自分でも複雑すぎて意味わかりません。知ってるのは本人たちだけです。
    スケールでっかいですかね・・・いまいちよくわかりませんが、とてつもない夢だったということだけはわかります。自分の頭を開いて一回じっくりと中がどうなってんのか見てみたいです。
    クライマックス、頑張ります!シュンにもきっとその声は届いている・・・はず!←

    international schoolってそういう休みないんですか!それはちょっと辛い。
    いろいろあるのですね。自分の視野の狭さを思い知らされます。
    ・・・・・・あれ?何の話でしたっけ(笑

    2009/05/02 21:55:32

  • +KK

    +KK

    その他

    >>秋徒さんv
    ふおぉぉぉ!いらっしゃいませ、秋徒さんんんんっ!(落ち着け
    まさか読んでくださったとは露知らず・・・嬉しすぎて手が震えました。
    ストーカー?寧ろ大歓迎です、ありがとうございます。自分も秋徒さんをすとーk(ry
    ルカ、えらいことになってます。シュンも大変です。
    この夢ですが・・・うーん・・・あまり見ない方がいいかもしれません。
    これ、多分悪夢ですしね。人によると思いますが。
    とにもかくにも、楽しみにしてくださる方がいるということで続きも頑張ります!

    2009/05/02 21:46:55

  • まにょ

    まにょ

    ご意見・ご感想

    こんばんは・・。恐れていたことが現実に・・。ルカァァアア!!!そんな・・。
    シュン・・。ルカを助けて・・。そしてハルを、現実世界を取り戻して・・!感涙))
    どぅしてルカは変わってしまったのでしょぅ・・。シュンの言うとおりなのでしょぅか??・・。
    すっごく複雑です。。そしてこのメチャクチャスケールのでっかぃ夢をみた+KKさんにびっくりです!w
    クライマックス・・。がんばってくださぃね!シュンも、+KKさんも。。 では。

    p.s.え、ゴールデンウィーク?ってなんだっけ?てな感じで毎日を過ごしています。。
    international schoolってそぅぃぅ休みないんですょねー・・。(関係なぃハナシしてすみまs(ry

    2009/05/02 21:43:05

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