「動くなッ!」
銃声とともに、振り上げられていた斧は弾かれて、
部屋の隅に転がっていった。
声の主は、メイコ姉さんだった。
銃を構えたまま、キクをにらみつける。
「次は腕が吹っ飛ぶわよ」
「ふっふふっふっふふ。脅しのつもりですかー?」
キクはメイコを見て笑う。
メイコはいらだちのあまり顔を歪ませる。
「呪音キク。あんたを現行犯で逮捕する」
「へぇ、刑法なんてボーカロイドにも通用するんですね。
でも悪いけど、私は捕まるつもりもありませんよ」
「雪子。帯人。こっちに来なさい。
……帯人、あんたにもいろいろ聞きたいことがあるから」
帯人はすごく悲しそうな顔をしていた。
メイコ姉さんのことだ。きっと、帯人が関係すると気づいたんだろう。
こればかりは、どうすることもできない。
「ハッピーエンド、ナノ……?」
キクは片手で顔を覆い、口元に歪みきった笑みを浮かべる。
「ソコに在ルの?……絶対ニ在るハズ……世ネ…?」
@+* コ %$#& コ @A>@#|* ロ +&@
雪子の背筋を悪寒が走る。
指の隙間から見えた彼女の目が、明らかに狂いじみていたから。
メイコはキクの様子の変化にうろたえながらも、銃を構えた。
しかしキクはそれに脅えることはなかった。
一歩、また一歩とメイコに近づこうとする。
「動くな」と言われても、なおも、なおも―。
そして体を前傾姿勢にしたとたん、キクは目にもとまらぬ勢いで
メイコの目の前に移動した。
たびたび銃声が響いたが、キクの動きは止まらない。
「挽肉にしてあげる」
地を這うような低い声とともに、振り下ろされた斧。
一発の銃弾がキクの腕を突き抜けたが、その斧は止まらない。
そしてキクの笑い声とともに、腕が宙に舞った。
「…………くッ!」
「あははっははああはははっははあはっははははははっっは」
「メイコ姉さんッ!」
傷口を押さえ、うずくまるメイコ。
雪子はすぐに駆け寄った。
「血がッ!」
「………いいの。雪子ちゃん。…私は大丈夫だから、逃げなさい」
メイコの声は意外と冷静だった。
「強がらないで!」と言おうとしたとき、
雪子の目に信じられないものが飛び込んできた。
「…え?」
傷口から引きちぎられたコードが何本も見えている。
しかも血が一滴も流れていない。……………これは不凍液?
どういうこと?
「嘘ついてて、ごめんね。…私もボーカロイドなの」
メイコは申し訳なさそうに苦笑している。
雪子は突然のことに理解できず、口をぱくぱくさせていた。
そんなメイコを見下ろしながら、突然キクはため息をついた。
「なーんだ。あなたもボーカロイドなのね。なら、興味ないよ」
キクは静かに、斧を振り上げる。
「私が欲しいのは、雪子ちゃんの《心》なの」
バンッ
再び銃声が響き、キクの体がふらついた。
その瞬間メイコが叫ぶ。
「帯人ォオッ!!
ボーカロイドなら、雪子(マスター)を命に替えても護りなさいッ!!」
「そんなッ!!メイコ姉さんッ!」
雪子の声に、メイコは小さく微笑んだ。
帯人はその言葉にこくりとうなずくと、雪子の体を軽々と抱え上げる。
「きゃッ」
「…メイコさん。……雪子は、僕が必ず、護りますから…」
メイコはうなずいた。
帯人は割れた窓へ駆け寄ると、その窓を蹴り飛ばして、ベランダに出た。
マンションの外は平和そのもので、いつもと変わらぬ景色がそこにあった。
地上にある公園のブランコが、あまりにも小さく見えた。
「…しっかり掴まっていてください。…たぶん優しくできないから……」
(え…?)
帯人は雪子を抱いたまま、何のためらいもなく飛び降りた。
声にならない悲鳴を上げながら、雪子は必死に帯人のコートを握る。
鳥と同じ視点で、私たちは空を飛んだ。いや、落ちたんだ。
すごくきれいだったけど、同時にすごく怖くもあった。
地上に着地すると、帯人は何事もなかったかのように駆け出す。
きっと痛かっただろう。彼の体はきっと悲鳴をあげているだろう。
私は恐る恐る見上げた。
けれど、帯人は微笑していた。
「たぃ、と…」
「…大丈夫です。僕が…絶対に、護りますから…」
そう言って、帯人は私を抱く手に、少しだけ力を込めた。
私も同じように、ぎゅっと彼のコートを握った。
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こんなにメッセージがたくさgtんdkskdΣ(((○□○;;))
こんなにメッセージがもらえるなんて、嬉しい限りです!!
これからもがんばって続きを書いていこうと思います。
応援よろしくお願いします≧ワ≦
2008/11/30 17:55:23