「レン、ありがと」
「いえいえ、どういたしまして・・・って、もういい加減そのやり取り止めません?」
買ったばかりの首飾りを首に掛け、指先で弄びながらリーリアは何度目かになる礼を言った。
にこにこと笑うその笑顔を見られるのなら、半分でも財布が軽くなるくらい高額な首飾りを買ってよかったとレンは思った。
「で、この後どうします?」
レンの言葉にリーリアは「どうしよっか?」と首を傾げた。
「私、市場なんてほとんど来た事ないし・・・レンは?」
「私も同じです。適当に歩いて、気になる所で足を止めるというのはどうでしょう?」
「賛成!」
二人はそのまま歩き出した。
死神が街を行く
白い娘を連れて
残された時は 幸せ満ちた時間?
それから二人は様々な店を見て回った。
「レンって好きな食べ物ある?」
「甘い物なら、何でも」
「じゃあ、あの『チョコバナナ』っての食べない?」
「いいですよ。美味しそうです」
「死神が甘い物好きなんて意外ね」
「死神も、一応人間でしたから」
南の国にある果物で作るお菓子を頬張りながら、二人は様々な話をした。
リーリアは、家族や今まで読んだ本の事。
レンは、仲間の死神や鎌達の事。
ゴ―――ン、ゴ―――ン
鐘が、4時を告げた。
「そろそろ戻りましょうか」
レンがそう言うと、リーリアは「帰りたくない!」と言った。
「ですが・・・あのご両親の事ですから、門限に1分でも遅れたら捜索隊を出しそうですよ?」
リーリアは黙り込む。14年もあの二人の娘をしていただけに、その光景は容易に予想できた。
「・・・そうね、嫌だけど戻りましょう」
渋々屋敷へと歩き出すリーリアの顔を、レンが覗き込む。
「顔色も優れないようですし、おぶって行きますよ」
「え、でも・・・」
「お屋敷の前までです。姿を見られるわけにも参りませんので」
「・・・分かったわ」
レンは渋々頷いたリーリアをひょいとおぶった。
「重くない?」
リーリアが聞く。
「死神は、基本的に疲れを感じません」
レンが淡々と、だが安心させようと不器用な優しさを込めて言った。
安心したリーリアは、ゆっくりと瞼を閉じた。
【白黒P】鎌を持てない死神の話・8
他の方とは違うレールを進みだした二人。
これの続編である「捜し屋と僕の3週間」も書く予定ですw
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