「ちずさーん、入りますよー」



ノックをして402号室の扉のドアノブを持つ。

…しかし返事がない。

そういえばさっきから部屋から賑やかな声が聞こえてて、それでノックが聞こえないのかもしれないなあ。


…仕方がない。



どうせ鍵は開いているはずだから、やむなく、本当にやむをえず、決して常日頃からこうやっているわけじゃなく、そのへんは理解していただこう。

ドアノブを掴んで思いっきり回し、そのままズパーン!と豪快に扉を開けた。




「うわっ!?」

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!謎のゆるりーさんの登☆場!」

「テンション高いですね!?」



中には私の登場の仕方に驚いたちずさん、目を丸くしているすぅさん、ぽかんとしているつかささん、ジャジャジャジャーンの意味がわからず首を傾げる清花ちゃん。

なぜか爆笑するあゆみんさん、つられて笑うりんご、半分呆れぎみのてぃあちゃん、構わずちずさんに抱きついたままへにゃっとしているしるるさん。

…って。



「あーーーーーしるるさんずるーーーーーい!」

「ふふふ、私はちゃあんとちずさんに抱きついてほんわかするのだよ(/ ・ω・)/」

「私もやっていいですかー!」

「ゆるりーさん珍しいですね」



くすくす笑いながら許可してくれたちずさん。

今気づいたが私のほうが背が高く、とてもじゃないが抱きついたらよくわからない光景になる。

仕方ないので代わりにちずさんをぎゅっとする。



「わっ!?」

「ハグですハグ!」

「ドイツ式でしたっけ?」

「それはちょっとわかりません!」




ちらっとちずさんの後ろを見ると、皆が贈ったものが山積みになっていて今にも崩れそうだった。

ああそうだ。忘れるところだった。



「ちずさんこれ、私からです」

「ありがとうございます」



差し出したのは一冊のノートとキッ○カットのファミリーパック。

ノートはいつでも気が向いたら小説が書けるように。

キット○ットはこの先の受験に勝てるように。

まだ一年ぐらい先だけど。




その後イズミさんがやってきて、部屋を皆で出て、ターンドッグさんとこのルカさんとどっぐちゃんがやってきて、皆で別れを惜しんで。

最後にターンドッグさんがやってきて。



本当に最後の最後のお別れをしたあと。



ちずさんがターンドッグさんと喋っている間、ちずさんの肩からるぅちゃんが降りてきた。


どうして?と思ったその瞬間気づいた。るぅちゃんの前に、うちのちびゆかりんが立っている。

いつも神出鬼没なくせに、こういうときは必ず来てくれた。

ちびゆかりんはさっき見つけたのであろう、千切ったばかりの四つ葉のクローバーをるぅちゃんに差し出した。

そこにしるるさんのちびめちゃん、すぅさんのリリちゃん、りんごのちび兄さん、あゆみんさんのちびリンちゃんも加わって何かを喋っている。

ちびボカロ勢ぞろいである。

ちびボカロたちは皆、るぅちゃんに思い思いの品を渡していた。(ちびゆかりんのクローバー以外はよく見えなかったけど)

そして何かの会議が終わったらしく、るぅちゃんはちずさんの肩に戻り、他のちびボカロたちもどこかへ散っていった。








ちびボカロたちの交流に気がついたのはおそらく私だけ。

そんなちびたちによる交流を終えた後、ちずさんは別れの言葉を口にしてかなりあ荘に背を向けた。

遠ざかっていく背中に皆思い思いの言葉をかけ、手を振る。

私も皆に負けないぐらいの声で、手を振る。




「ちずさん!またねえええええ!!」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【かなりあ荘】クロッカスが咲く頃に

ちずさんへかなりあ荘の話を。
ゆるりーですこんにちは。

ちびボカロたちの交流を書いたことがなかったので勝手に書きました。

イズミさんとターンドッグさんの話を少しお借りしてます。

クロッカスの花言葉の一つに「あなたを待っている」があるのでタイトルはこうしました。
早春に咲くらしいです。
早春は早いかもだけど、いつかの春に帰ってきてくれることを信じて。

閲覧数:135

投稿日:2014/12/07 13:11:36

文字数:1,514文字

カテゴリ:小説

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