自転車こいで ひたすら走る
 初めて出会う街 目指して―――・・・

「行って来まぁす」
 玄関を出て、直ぐに自転車を車の脇から引っ張り出す。自転車を引き、片手で門扉を開け、自転車に跨る。前籠にスクールバッグを乗せるとミクはペダルを漕ぐ足に力を入れた。
 夏も終わりかけの、少しだけ涼しくなった朝。季節は巡っても学校に行って、授業を受けて、ただ、帰ってくるだけのけだるい日常に変わりは無い。
 不意に信号が変わり、ミクは自転車のブレーキを引く。目の前にあるのは大きな道路。国道十八号線だ。此処に引っ掛かると暫くは信号は変わらない。けれど此処を通らなければ学校までの道のりは遠くなる。別に学校に行くルートなら幾らでもある。この国道十八号線を通っても、ミクの通う高校までいけるのだ。ただ、遠回りになるだけで。
 何時ものミクなら此処で、信号が変わるのを待っていた。けれど、何故だろう。今日は道を変えてみようという気になった。
 ただ、普通に行くだけじゃ詰まらない。そんな思いが心をよぎり、ミクはハンドルの向きを変え、何時もなら使わない国道(ルート)を通る事にした。

「わたしね、おおきくなったらかしゅになりたい!」
 そんな事を言ってる時もあった。夢があった。理想(キボウ)だってあった。ただ、何時からだろう。其れを人に言うのがとても恐くなった。誰かに否定される事が怖くなった。馬鹿にされるのが恐くなった。
 今、私の目の前にあるのは、立ちはだかるのは茨の道。この道を乗り越える勇気を・・・

「この手に下さい!」

 思い切り自転車を漕ぐ。そんな事をしたのは久し振りだった。何時もならダラダラと漕いで予鈴のなる数分前に教室に入るのに、今は思い切り漕ぎたかった。このまま進んでいけば、思い描いていた未来がある気がした。
 自己満足(ヒトリヨガリ)でも良い。正直なんだって良いじゃないか。僅かでも、そう、僅かでも何かを変えていけるのなら・・・
 明日に続くと、信じて走っていく。この道は国道18号(ルート18)

 自転車を漕いで行く。今まで走っていた道とは違う景色が現れては消え、消えては現れる。不思議と、ミクの心も弾んでいった。
 シャァ、とミクの横を自転車で追い抜いたのは男性だ。ミクはその後ろ姿を眺めながら、あぁ、あの人にはどんな夢があるのかな、どんな人生を送ろうと努力してるのかな、と想像を巡らせた。
 すれ違う人の全員にきっと、それぞれの生き方が、それぞれの思い描く理想と未来があるんだ、ミクはそんな事を思い、そして、その様な事を思い描いた自分の心に、少しだけ驚いた。
 一般人A(モブ)でしかなかった私。主役にはなれない、ただの脇役の中の脇役。だから其れ相応の道だけを、進むはずだった。でも、今は違う。そんな用意された道なんか通りたくない。私の道は、私が決める!
「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・!」
 突然に目の前に現れた急な坂道。其れをただ、一心にミクはペダルを漕ぎ、上っていた。ツゥ、と頬に汗が伝う。何時もなら直ぐに拭うのに、何時もならこんな坂、自転車から降りて引いて行くのに、今はただ、一心不乱にこの坂を上る事だけを、考えていた。
 もっと、高く、高く、こんな坂なんて目じゃないくらい、もっと、もっと、もっと・・・

「陽の当たる場所へ!」

 坂を上りきり、下り坂を軽快に下りていく。身体を通り過ぎていく風が心地良い。今だけは、自分が主役な気がした。
 自己満足(ヒトリヨガリ)だって良い。正直なんだって良いんだ。僅かでもイマが変わるのなら・・・ 

 誰かに夢を、理想を、希望を、否定されて傷付くのが恐かった私の心は、カラッポでひび割れそうだった。今にも壊れそうな、脆い心。
 暗闇の中で誰も自分の夢を分かってくれないと孤独に独りで震えている位なら、

 傷だらけになったって良いや。

 自分の夢を、希望を、理想を、否定されたって良い。其れが私の進みたい、進むべき道なんだと信じれば良いだけ。私には私のやり方がある。私にしか出来ないやり方があるはずだから。恐れずに、進んで行けば良い。ただ、それだけだ。

「――! ――ッ! ミク、ミク!」
 ハッと気が付いてミクはブレーキを掛け、後ろを振り返る。其処にいたのは、ミクの友達だった。皆、息を切らして自転車に跨っている。
「・・・ルカちゃん・・・。リンちゃん、レン君・・・。如何したの?」
「如何したの・・・? じゃ無いわよ・・・! もう授業始まってるよ・・・!?」
 息も切れ切れのルカは言いながら携帯を開き、ミクに見せる。もう一時間目が終わり、二時間目が始まりそうな時間だった。
「はやや・・・」
「はやや・・・、じゃ無いよミクちゃん!」
 全くもう・・・、言いながらリンは あー、暑い! と言って首筋に纏わり付いている金色の長い髪を持ち上げた。
「んじゃ、ミクも見つけた事だし・・・。学校行くか」
 レンの言葉に皆が頷き、自転車の向きを変える。そして漕ぎ出そうとした時、
「あのね、皆・・・」
 ミクの言葉に皆が振り返る。
「何?」
「あのね、私、夢があるの―――・・・・・・」

 かっこ悪くたって良い。イマはガランドウだって良いんだ。少しずつ、此れから埋めていけば良いだけなんだから・・・
 明日に続くと、信じて走っていく、この道は

 国道18号(ルート18)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【自己解釈】 R-18 【原曲イメージ崩壊注意】

R-18です。読みは「ルート18」です。「アール」じゃないです。
この曲は結構好きなので、書けて満足。でも話が出来上がったのはつい最近←
国道十八号線がどんな道なのか見た事が無いので間違ってる点が多々あると思いますがご了承下さい。

それでは此処まで読んで頂き有難う御座いました!

閲覧数:288

投稿日:2011/04/03 15:06:11

文字数:2,232文字

カテゴリ:小説

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