振ったサイコロが転げていくように
ドミノ倒しのドミノが倒れてゆくように
世界はひとつ何かをするたびに
思わぬところまで何かを変えてしまう

弾いたビー玉がぶつかって散るように
滝の水が下へ流れ落ちてくように
私がしたことも、全部　世界の
思わぬ誰かまで変えてしまうかしら

オルヴィスの始まりと終わりはどこにもなくて
因果は無数の線に引かれて巡り巡る
地球の裏側で蝶が生まれる音が
青い空気震わせて　この耳に届いた

風を切れ　羽ばたいて　バタフライ
その小さな綺麗でもない羽を震わせて
声なき声で力強く歌え
その糸に絡まりもがく音が言葉になる


正義の銃で悪人が死ぬように
土まみれの手が掘る金がカネになるように
いいことも悪いことも、全部　誰かの
道を捻じ曲げずにはいられない

“どうして　誰かのため　誰かが傷つくのですか？”
応えも報せもない海を羽で掬う
願い叶わず地に伏したあなたの
死体を私が食べるかもしれない

それならば　羽ばたいて　バタフライ
小さな羽で空を掻き風を起こせ
涙の露は呑み込んでしまえ
生まれ変わる運命を再び産み落とすよう

羽ばたいて、羽ばたいて　バタフライ
絡まり合う因果の糸も吹き飛ばせ
鱗粉が舞う、花のように
カラカラの喉で夢見た楽園(マグメル)の幻影(かげ)を見せてあげる


静寂が痛いほど　この胸の中で波打つ
いつか懐かしき赤い枝に羽を休める時が来れば


どこまでも　羽ばたいて　バタフライ
羽に赤い星を持つ不敵なる胡蝶
巻き起こすそよ風はやがて
コップのふちさえも超えて溢れだす

羽ばたいて、羽ばたいて　バタフライ
その羽根の付け根に血が滲みだすまで
透明な雫、そのさざ波が　君に届けば
この禁忌(ゲシュ)さえも吹き飛ばす紅蓮の大嵐を