「事実、僕は―」
天井の低い白い部屋で、やたらと声が硬く聞こえることだけが不快だった。他に別に不快で不快で仕様がないというようなものは今のところこの部屋には存在していない。陽射しをさえぎるカーテン、清潔なシーツ、赤の滲んだ包帯、そしてすぐ傍の椅子には君が居る。
「僕は、君を殺すつもりだったんだ、」
ぼう、とまだ体を起こせないから君の顔を見ることも叶わない。先ほど大尉が置いた行った見舞いの果物籠の林檎が見える。しかしなんとなくバランスが崩れていて、なにか当たりでもすれば落ちてしまいそうだった。赤くて、つやりとしていて、綺麗だ。
「君を殺すつもりで、銃を向けて照準を合わせて引き金を引いた。なのに、いま君は生きていて無傷だ。その代わり、とでもいうのかな?僕は右胸に凶弾をうけて重症で起き上がることもままならない。これはいったい、どういうことなんだろう」
すう、と大きく息を吸うとじくりと傷が痛んだ。じわりと広がる液体の感覚、まだ傷は塞がっていないと看護士が言っていたような気がする。焼け付くような痛みだった、さすが我が愛銃の威力であるといいたい。
「なあ、教えてくれないか。いったいどうして君は僕で、僕はそれでも僕でしかないんだろう」
首だけを捻って君の方を向くと、君は笑って僕を見下ろしていた。ほんの僅か顔を動かしただけだと言うのに苦しくなり、大きく息を吐き出すと君は心配そうに表情をゆがめる。大丈夫だと笑って見せると君も笑った。そして立ち上がった。問いにも答えぬまま、青い影だけを残して君はゆらりとその場から消失した。
「どうして、僕はきみなのだろう」
林檎が落ちた。
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同じことを何回も繰り返した。
それこそ、気が狂いそうなほどに。
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だけど…必ず、時間が巻き...Twilight ∞ nighT【自己解釈】
ゆるりー
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