初めて呼び出された次の日から、レンは頻繁に呼び出されるようになっていた。

「―――――――♪」

 ―だから 忘れないでて
 ―ぼくは ここにいるから
 ―いつも 君を 待っている…―

「ら―、ら―、ら――…
 ら―、ら―、ら―あぁぁああぁ」

(…まただ)

「あーくそ!またか!」

どうしても、のばすところが不安定になってしまう。
その後小一時間ほど練習したが、マスターの思い通りに声がのびることはなかった。

       *

マスターがあきらめて後回しにしてしまい、解決の糸口をつかめないままレンは家に帰らされた。

「…ただいま」

モヤモヤが晴れてくれない。

「おかえりレン。バナナあるよ。食べる?」

大好きなバナナも、食べる気になれない。

「… うん。そうだね」

でも、少しくらいなら晴れてくれるかもしれない。

「………? なんか疲れてる?」

指摘は的確だけど、心配もさせたくない。

「え? …いや? 普通だよ?」

精一杯の笑顔も、もしかしたらばれているのかもしれない。

「そう? …ならいいけど」

       *

リビングで一人、ソファに寝転がる。
せっかくのバナナも、味がしなかった。

『限られたことしかできないなら、それを頑張ればいいんだ。それだけをひたすら頑張って、マスターを喜ばせてあげるんだ。僕たちも、それが楽しいんだよ』

数日前と同じように、カイトの声が蘇る。

(なのに…マスターはイライラして…俺は喜ばせてあげられてない…)

ちゃんと調節できない、マスターが悪いのかもしれない。
でも結局は、調節してもらってもちゃんと歌えない自分が悪いよね?

(…なんか…、…嫌、だ。 モヤモヤして…)

…だめだよ。
こんなんじゃ、次はもっと歌えない。
バナナ食べて、寝ればいいんだよ。
そしたら明日はすっきりして…

(……………)

いつのまにか、眠っていた。

       *

(………………………)

(俺には…何もできない…)

(マスターに…歌わせてもらわないと…ダメ、なんだ)

(でも…うまく歌って…)

(マスターを…喜ばせたいよ…)

(…どうしたら、良いのかな…)

(…何か、俺に…できないのかな…)

(…)

(…そうだ…)

(読み込み早くなるように…玄関で待ってて…呼ばれたらすぐ行こう…)

(意味ないかもしれないけど…でも…)

       *

自分にもできそうなことが見つかったおかげで、目覚めたレンはすっきりして気持ち良かった。
実行に移してみる。

「…なにやってんのレン…」

「あ、メイコねーちゃん…あは」

「あは、じゃないわよ怖いわね、もう!」

ぴんぽんぱんぽーん。

「あ、」

「レーンくーん、お呼びだよー」

「へへ、行ってきます!」

「何だそういうことね…」

       *

「ん?今日読み込み早いな?」

(…あ、)

ちょっとのことでもマスターを喜ばせられたことが、レンにはたまらなく嬉しかった。


ねぇ、マスター。
メロディをちょうだい。
俺、歌うよ。

いつも、君を、待ってるよ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

レンとぼかろ家の日常。 4

完成しました。
無理矢理感が否めない。

とりあえず(無理に)ひと段落させたので、なんか新展開?みたいなのやりたいです。
はてさてどうするか…
↑考えてません!w

閲覧数:125

投稿日:2011/05/16 17:26:54

文字数:1,313文字

カテゴリ:小説

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