『愛してる』

「……え?」

はっきりと聞こえた声に、彼の顔を見上げる。

レンは笑みを浮かべたまま、不思議そうにリンを見た。

それでも、触れた指先から、伝わってくるその想い。


零れた涙を隠すように胸に額を当てて、もう一度ぎゅっと抱きしめる。

リンのおかしな様子に戸惑ったものの、レンもまたそれに応えるように強く抱きしめた。

ふいに、リンが腕を離し、彼から離れる。

どうしたのかと戸惑う彼の青い瞳に映るのは、久しぶりに見た、美しい同じ色をした青い瞳。

リンは穏やかに笑い、両手を自分の胸にあてる。

そして、ゆっくりと、静かに歌を紡ぎはじめた。


静かな銀世界に、透き通る様に響く声。

楽しそうに歌うリンに、レンは目を奪われる。

以前よりも細くなった手足は絹のようになめらかで白く、

久しぶりに見た瞳は、空のように澄んで、美しい。

それ以上に心を奪う、美しい歌声。

以前よりも弱くなったものの、透き通るような声と、

心に沁みこむような言葉は変わっていない。

否、以前よりも更に美しく、磨きをかけて。

その歌はレンに向けられているもので、

レンは一歩も動くこともできず、ただ彼女を見つめる。

周りに歩く人はおらず、銀世界の中に2人きり、

まるで現実とは違う空間のようにさえ感じる。

彼女に終わりが訪れることなどない、空想世界のように。


―――私が君に残せるのは、きっとこれだけね。

だから今、全ての想いを込めて歌うから。


どうか、君は生きていて。



銀世界が更に白くなり、もうレンの姿すら見えなくなる。

歌っている筈の自分の声も聞こえなくなり、

頬を伝う温かいそれにも、

ぐらり、と自分が傾いたことにも気付かない。

頬に触れた冷たい感触に、

これが雪だと知って、自分が倒れたことに初めて気付く。

そして、包まれた温もりと伝わってくる感情に、ふわり、と笑みを零した。



静かな銀世界に、悲痛な叫び声が木霊する。


ぴくりとも動かず、横たわる彼女の隣に、

その白い手に触れ、少年が横たわる。

静かに舞い落ちる雪が、2人を包み、愛しむかのように降り積もり、


穏やかな終わりを告げた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

proof of life5

終わりました…
最終的にレンがどうなったかっていうのは、
やっぱり自分では決めたくないので
分からないままで終わりです。
自己満足で申し訳ない小説ですが
ここまでお付き合いいただいた方、
本当にありがとうございました!!


>カルミアさん
メッセージありがとうございます!!
カラオケ楽しみですよね…!!
ぜひ歌いたいです♪
毎回コメントありがとうございます><
本当に嬉しいです!!

閲覧数:278

投稿日:2009/08/02 21:53:07

文字数:929文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • カルミア

    カルミア

    ご意見・ご感想

    お疲れ様でした。
    感動しました。 
    内容も原曲と同じでどんな場面かも想像できました。
    これからも、素敵な作品を作ってくださいね。



    2009/08/04 21:24:27

  • FOX2

    FOX2

    ご意見・ご感想

    流石です。Junkking様。
    この文体だけでも、あなたの文章力を誇示しています。
    リンレンの悲恋愛系でしょうか。静かで、切ない終局です。
    失礼ながらまだ過去作品を読んでいませんので、これから拝見させていただきたいと思います。

    2009/08/02 22:07:38

  • ヘルケロ

    ヘルケロ

    ご意見・ご感想

    もう涙が……。

    書き方うまいです。
    私、自分の一通りの書き方しかできないので、人の見たり、新しい書き方に挑戦したりしてるんです。
    じゃんくさんからいろいろ見習わないと。

    2009/08/02 22:00:08

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