ズキズキと頭が痛むのにも慣れてきた。三回目ともなれば、普通はそういうものなのかもしれないが。
辺りは双子のときよりもいくらか明るい森が見える、小さな家の横の茂みで、アリスは思い切り尻餅をついて、図らずして身を潜めるようにした。
「あれ、えっと…あの二人はどこだろう?」
大体過去に飛んだときのこともわかってきた。触れた相手の記憶に刻み付けられた暗い記憶のときに、飛ばされてしまうのだろうということが。そして、自分がいることによってそれぞれの人(ルカは猫だったが)を助けられるということも。だから、アリスが飛ばされた過去の世界、今ありスがいる辺りの近くに、あの女性がいるはずなのである。あの女性に手を握られて気を失ったのだから、多分、そうだ。
きょろきょろと辺りを見回す。一見すると、ただの不信人物であるが、そこはあえてみて見ぬフリをして欲しい…。
「あ、居た居た…」
やっとアリスが見つける。家から出てきたのは、まだ幼いあの女性だった。顔立ちも服装も幼く可愛らしいが、その銀髪と鮮やかな赤眼は今と変わらない美しい宝石のようだ。
だが、それを隠すように紅い頭巾を被っている。
「行ってきます、お母さん」
友達のところに良くのだろうか、戸も思ったが、バスケットの中に重そうなぶどうジュースとリンゴやなしが入っているところを見ると、お使いで誰かを訪ねることになっているらしい。
家の中からも声が聞こえた。恐らく玄関にいるのだろうが、ドアに隠れてその人の顔を見ることは出来ない。
「オオカミには気をつけるんだよ。途中で誰かに声をかけられたら、オオカミだと思って、何も言わないで逃げるんだよ。オオカミは男らしいからね、男には特に」
「はい。分かりました。それじゃあ、すぐに帰ってきます」
言って、白い紙の少女は家のドアを閉めてくるりと方向転換をし、森のほうへと歩き始めた。家からいくらか離れた辺りで、アリスはぴょんと飛び出した。
「ねえ、どこに行くの」
まただ。
道を行く人の殆どがオオカミの巣穴のほうへ道を間違えて歩いていく。だから正しい道を教えてやっているのに、きゃあきゃあ言いながら逃げていく奴らが殆どで、何人かは刃物や銃口を向けてくるのだから困った。そんなにおどろおどろしい顔をしているのだろうか、自分は、と思って何度か森の動物たちに愚痴をこぼしたこともある。…すると、動物たちまでもが逃げていく。
まだ幼い少年からしてみれば随分とひどいいじめを受けているような心境である。
森の中には鏡なんてないから、自分がどんな顔をしているのかは分からない。ただ、一度教えてもらったことには、無駄に野生的で目つきが悪いのと血のように赤い瞳と、雪のように銀色でボサボサの髪、木の枝などでついた傷、ぬっと現れる登場の仕方、低い声でいきなり話しかけられると、思わず飛び上がってしまうのもおかしくはないということだった(それと、いきなり吐く暴言は初対面だとかなり怖いらしい)。
そして、丁度今、同じことでまた少年が独り逃げていったところだった。
人がわざわざ親切心で教えてやっているのに!と、一人で怒っていても虚しいだけなので、木の根元に座り込んで目を閉じた。
木漏れ日の中に煌く銀髪は、鮮やかだった。
「…この人、何をしているんでしょう…」
木の根元にキレイな顔で眠っている少年を見て、ハクは言った。隣りで、アリスがコイツははデルだな、と思っていると、ハクはしゃがみこんでデルを起こそうとし始めた。あわててアリスがとめる。
「な、何してるのっ?」
「こんなところで寝ていたら、危ないです。起こしてあげないと…」
この少女は、白い髪のあの女性だ。アリスが話しかけると、女だからオオカミではないと判断したのか、少女はハクとなのった。それから森の中は一人より二人の方が良いといい、アリスはハクにくっついて森の中を歩いていたのである。そんな中、こんなところで眠っているデルに出くわしてしまうとは…。
お茶会までのハクの様子を見ていると、デルを恐れているようにも見える。もしかしたら、今回、アリスがどうにかしなければいけないのは、デルとハクの出会いではないのか?
勝手にアリスが考えているうち、ハクはデルの頬をちょんちょんとつついて、興味津々のご様子である。
「あの、こんなところで寝ていたらオオカミに食べられてしまいますよ…」
「あ、ちょっと、ハク…」
急いでアリスがとめようとしたが、遅かった。赤い瞳が長いまつげの間から見えるようになって、それからしばらく時間があって、少年言う。
「うるさい。死ね。次起こしたら食うぞ」
…これが、『いきなり吐く暴言』である。
もそっと動いて寝返りを打ち、また寝息を立て始めた。
(ぅぇぇぇぇえええええええええええええええええええ!??)
「ご、ごめんなさいでしたぁぁぁあああ」
驚きのあまり、わけの分からない日本語を使っているハクを横から見ていたアリスも、デルのいきなりの言葉に動揺を隠せなかった。
「ちょ、混乱してるよね!?めちゃくちゃ混乱してるよね!?」
それから、むくっとデルが起き上がってアリスとハクと、周りの景色を順に見て状況を理解し、一度あくびをしてから、言った。
「…何、してんの」
無愛想で目つきが悪いながらも子供らしく大きな目は、赤く鮮やかで、幼い顔立ちの中に見える覚めた雰囲気は、どこかお茶会のときのデルと重なるところがあった。
「…ふあ…」
大きなあくびを一つ。
小さな子供なのだ。
「あの…あなたは、ここで何をしているんですか?」
申し訳なさそうにハクが言った。
「道案内。あっちに行くとオオカミの巣がある。そっちに人が行くと困るから…」
「じゃあ、こっちに行けば安全なんですか?」
「そう」
「ありがとう、それじゃあ、こっちに行きます。ミクちゃん、行きましょう」
「え、あ、うん…。デルはどうするの?」
「…なんで俺の名前しってんの」
「そんなことより!どうするの、ずっとここに?」
「…ん」
そっぽを向いてさっさと行けと言うように手を前後に振り、短く答えると、デルはまた木の根元に横になった。
それを診て仕方がないというようにアリスもため息をついて、待っていたハクの背中を押しながらその場を後にした。そして、その二人がいくらか遠くなってから、出るがそれを確認するように目を開いたのを、アリスもハクもしらなかった。
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「それが嫌だから」っていうエゴなんです。
他人が生きてもどうでもよくて
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なんて素敵...命に嫌われている。
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流華
ご意見・ご感想
赤ずきんちゃんだ!
ハクの赤ずきん姿はかわいいと思うのです!
絶対似合うはずっ!
……。
テンションがおかしいですね……。
ごめんなさい
2010/03/04 23:35:10
リオン
赤頭きんちゃんです!
確かにきっとハクはよく似合うのでしょうねぇ!
似合いますよ!きっと!
私もテンションがおかしくなってきたので、気にしないでくださいね♪
2010/03/05 17:36:49