「とりっくおあとりーーーとーーーー!!!」

そういって俺の背中にタックルを炸裂させてきたのは、皆の予想通りあの元気有り余るあの子だ。

「……リン、ハロウィンって……昨日だったよな?」
「うん! そうだよ! 何レン、もう忘れちゃった? おじーちゃんになっちゃった?」

愛くるしい笑顔で笑う。
もうお菓子をもらう気満々らしく、その手にはお箸を握っている。
なんて気が早い。

それより俺はまだ14歳だから、おじーちゃんは聞き捨てならない。

「てか、俺。昨日もリンにお菓子あげたよな?」
「うん!」
「しかもリンが食べたい食べたいって駄々こねるから、仕方なく作ったパンプキンケーキを」
「そーだよ!」
「……ホールを」
「もうレンったら! 昨日のことなのにどうしてそんなに確認するの?」

ボケたの? とリンが無垢な笑顔で俺の心を折る前に、俺はリンのお箸を折った。

「とるあああああああ!!!」
「いやああああ!! レン! 何するの!! お菓子食べられないでしょ!」
「昨日ホールケーキを手づかみで言った奴の言う台詞かそれは!!」

そこでさすがにやりすぎたと思い、大きく深呼吸をした。
俺としたことが、少し取り乱してしまった。

リンは相変わらずプリプリと怒っている。

「もー、お菓子がないならそう言ってよーっ」
「言っても聞かないだろ」
「わかってらっしゃる~♪」

先ほどまでのプリプリはどこへやら、上機嫌で冷蔵庫を開けてオレンジジュースを取出し、コップに次ぐ、リン。
それを一気に胃に流し込む。

「ん~、でも、trick or treatって言っちゃたからにはいたずらするしかないなぁ……」
「てめぇ、お菓子貰えても悪戯する気だっただろ」
「ちょっ今日のレン辛辣!」

もういいもーん、と、背中を向けて部屋を出ていこうとするリン。

うん、ちょっと、確かに、ちょっと辛辣だったかもな。
どうしたもんか……。

考え込んでいると、今度は正面から鈍い衝撃が体中を走った。
「ぅっ!?」

「ふふーん♪ 油断してたでしょうレン。この私の前では油断は禁物なのだよ」

俺の胸に抱き着いて、無邪気に笑う。

「まったく……」

恐れ入ったよ。
俺がそう言うとリンは一層嬉しそうにニカッと歯を見せて笑った。

しょうがないから後で何か作ってやるかな。
全く、俺はリンにすこぶる弱いんだからなぁ。

俺はリンの背中に手を回し少しだけ力を入れた。

えへへ、と、リンは嬉しそうに俺の胸の中で笑った。

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trick or……?【イズミ草】

閲覧数:120

投稿日:2014/11/01 19:12:38

文字数:1,049文字

カテゴリ:小説

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  • ayumin

    ayumin

    ご意見・ご感想

    なにこのリンレンかわいいですね!?
    リンちゃんのためにホールとか作っちゃうレンくんかわいいです最高です…!

    そしてリンちゃんの純粋加減もさすがです…レンくんが惚れるわけですね←

    2014/11/01 19:33:21

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