“鬼は遊びが大好きだ
満月の晩にはゲストを招いて
朝まで遊ぶ 遊ぶ
そう、朝まで”
二人が連れられてきたのは小さな祠のある場所だった。しかし、この森にそんな祠があったなどレンは聞いたことがない。祠にしても長く人が訪れた様子はなく苔むしていた。どうやらここは普段あまり人が近づかない程森の奥であるらしい。
「なぁ、リン。」
「・・・」
「リン?」
先程とは様子が違い今度は話しかけても全く反応がない。虚ろに前方を見続けている。
「リン!」
リンの様子に尋常ではない何かを感じてレンは更に強く呼び掛けた。
ビクッとリンの肩が震えレンの方を向く。
「レ、レン?何?」
リンは驚いてレンに訪ねた。きょとんとしたその様子に先程までの異様な雰囲気はなく、レンはほっとする。
リンの調子も悪そうだし一刻も早くこの場所を離れるべきだ。長くここにいては、いけない。レンは不思議な焦燥に駆られていた。
「何でもない。それより、」
早く帰ろう。そう続けようとしたとき視界の端にそれは映った。ゆっくりとそちらを見る。はっきりとその姿をとらえたとき背筋が凍るような寒気を覚えた。
「レン、あ、あれ・・・」
リンも気が付いたようで震えて、元々白い肌が更に色を無くす。レンは繋いだ指先を強く握りしめた。
そこに立っていたのは、鬼。
「っ!!」
「我が主。今宵のお客様でございます。」
息を呑む二人を尻目に兎は恭しく鬼に頭を下げた。そしてくるりと二人に向き直る。
「お二人には宴を盛り上げるために、ある遊びに参加していただきます。」
兎の言葉は口調こそ丁寧だが、底知れぬ何かを感じさせた。にっこりと笑うが、もうその笑みに恐怖以外を感じなかった。
「なに、ルールは簡単です。お二人は我が主から逃げれば良いのです。」
それならば今すぐにでも逃げ出したかったが恐怖が体を縛り二人は動けずにいた。兎は続ける。
「今まででは普通に捕食していたのですが、主は夜しか動けず退屈してしまいましてね。」
捕食。やはり、目の前にいるのが言い伝えの鬼らしい。
ならば、自分達は―
「一度獲物を逃がすことにしたのです。どうです?」
楽しい遊びでしょう?
「!?」
レンは無理やりリンを引っ張り走り出していた。逃げなければ、殺される!
頭で理解するより先に体が動いていた。レン同様動けずにいたリンだったが我に返ると精一杯レンの後を追い走った。祠はあっという間に見えなくなる。
まさか本当に鬼がいるとは夢にも思わなかった。
立ち止まれば捕まってしまう。捕まってしまえば・・・
そこまで考えてレンは恐ろしくなった。帰ってきた者はいない。リンの言葉が蘇る。
「レンっ!」
リンがすがるようにレンを呼んだ。その表情は恐怖に彩られている。それを見てレンはハッとした。
そうだ。約束したんだ。リンと二人で帰ると!
月明かりが照らす夜の森を駆けながらレンは誓う。
「リン、必ず一緒に帰ろう!リンは僕が守る!」
深い深い迷いの森で畏憚の遊びが始まった。
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