「はぁ…」

私は溜息をついた。

寝ると見てしまう夢。それは悪夢で、そのせいで眠るのが怖くなってしまっていた。

「こんばんわ、メィトヒエン。夜中眠れずにいるのかい?」

「…ふえぇぇぇっっ!?」

「しー。静かに」

声のした方…窓を見ると、そこには―――。

「だ、だだだ、誰っ!?窓の鍵も、カーテンも開いた音しなかったのに…てかここ2階!!」

「だから静かに。近所迷惑、だよ?」

「火種はアナタね」

「おや、手厳しい」

黒い燕尾服、黒いハット、細身の杖。見た目は14~16歳くらいだろうか。金色の綺麗な髪と黄のベストがいいアクセントになっている。

「だからっ、誰!?泥棒!?」

「君の思う泥棒はこんな見た目でこんな服を着た人間なのかい?」

「…いや、それは……」

「あっはは、まぁいいよ。僕は夢喰い白黒バク。よろしく」

「よっ、よろしく…?」

少年のような見た目と、紳士のような微笑みに、思わず目が奪われる。

差し出された真黒い手袋に包まれた手を、私はゆっくり握り返した。

「…えーと、夢喰い白黒バク?さん?名前?」

「んー、名前というより、種類、かな」

「私でいう人間?」

「そう、それ。こんな見た目でも、僕は人間じゃない」

そこで沸いた一つの疑問。

「じゃあ、ホントの名前はないの?」

「まぁ、必要ないからね。てか、僕とこんなに親しくしちゃっていいの?なーんて」

「……あっ!!何者!?」

ふふ、と彼は笑う。私はなぜ彼と仲良さげに……?
いや、名前を名乗ってきた向こうが悪い!!まるっきり人(?)のせいだね!!

「ねぇ、お嬢さん、キミは……怖いユメを見たのかい?」

「へ?いや、はい……」

「ふーん……そうなんだ……」

にやり、と彼の口角が上がった。

「それなら僕が、魔法をかけてあげようか?」

「魔法?」

彼は何を?と思ったけれど、部屋にいつの間にかいたことや、「夢喰い白黒バク」、何て名前……種類?からも、あながち嘘ではないのかもしれない。かもかも。

「魔法なんて……存在するの?」

「存在するよ。僕がいるからね」

「あの、説明になってないんですケド……」

目の前の彼は苦笑した。

「いいんだよ。僕、という存在が説明になる。この見た目、この体で人間じゃないんだから」

「はぁ……そ、っか……?」

私がそう言うと、彼は私が眠っていたベッドに腰掛けた。

「それで?かけてほしい?魔法」

「……ほ、本物なら」

「ふふ、じゃあ、こっち座って」

と言いながら、ぽんぽん、と私のベッドを叩いた。

言われたとおりに彼の隣りに座ると、彼が手袋を被った左手を小指だけ立てて差し出してきた。

「ほら、指切りで約束しよう」

「……へっ?」

何をされるんだろう、と身構えていただけに、思わずぽけっとした声が出てしまった。

「……っていうのはまだ早いから、ちょっとした説明をしようか」

「えぇっ!?」

結局!?

「うぅ…説明って?」

「まず、ユメを食べたり与えたりする…まぁ、さっき言った魔法だよ。それを行うために、ちょっとした契約を結ばなくちゃならないんだ。あと、お代」

「お代…?お金?」

「お代」と言われればお金か何かかと思ったが、彼は人間じゃない(かもしれない)ので、何か違うものが……?と思った。

「いや、違うよ。お金じゃなくて、キミの「夢」が欲しいんだ」

「ゆめ……?それでいいの?」

「あぁ。なんたって「夢」喰い白黒バクだから、ね。人間が生きている間に必ず見る「夢」、それがお代さ」

まぁ、それなら寝ている間に見た夢をあげるってことなんだろうし……多分。いいかな?

今、この時の判断を、のちに公開することになろうなんて、全く私は思わなかった。

「じゃ、じゃあ、さっきの指切り…約束?だから、契約?」

「そう!そういうこと。指切りをすれば、お代は必ず払ってもらうことになるけど」

「んー……」

それを聞き、悪夢を見なくなるのが本当なのか分からない私は、とりあえず言ってみることにした。

「今までの話、本当?信じていいの?夢を……操るの?」

そういうと。彼は笑みを深くして、
「勿論」
と言った。

「……っじゃあ、信じますよ?レンさんっ」

彼が来てから3分経ったか経ってないか位の短い時間しか話していないのに、信じていいのか?なんて自分で言ったことをちょっと批判してみたり。

「レン」さん。私が今さっき考えてつけた名前だったり。由来とかはないけど。何となくだけど。

「夢喰い白黒バクさん」なんて呼びにく過ぎる。

「レン?……ちょっ、と、待て、それは…」

彼は、見るからに狼狽していた。何でだろ……?イヤだったのかな?

「?名前だよ?さっき、「無い」って言ってたから」

「いや、言ったけど、僕は君のペットじゃないんだよ?むしろ、君よりも何十、何百年と長い歳月を過ごしてきた」

「おじいちゃんなのね」

「夢喰い白黒バクは歳を取らない。不老なんだ。不死ではないけどね」

「えっ、それってうらやましいなぁ……ずっとそのままの姿でいれるんでしょ?」

「飽きるよ?てか良いことばっかじゃない。良くないことも一杯あるさ」

「え……たとえば?」

「ずっとこの14歳の姿で止まってる。幼く見えるだろう?」

少し悲しげに笑った彼を見て、何もの時をずっと同じ姿でいるのは、実は辛いことなんだろう、と思えた。

「それは……やだね。今まで会った人皆、居なくなってっちゃうもんね」

「……それより、指切り。さっき、おkしてくれたよね?」

「あ……うん」

いきなり話を終わらせたかと思うと、下がっていた声のトーンが元に戻っていた。

ついさっきまで悲しげに笑ったり、うろたえていたとは思えない位。に

「じゃ、改めて」

立てた小指と小指が、絡まって繋がった。

ぼうっと見ている私を見て、口角を少し上げたかと思うと、持っていた真っ黒の杖で、自分の真っ黒い手をついた。

「……うん、いいよ。離して」

「あ、はい」

なんか敬語になってしまった。

「じゃあ、お休み。明日は学校かい?」

「え?へ?えっと……今のでいいの?」

「今ので合ってるよ」

なんか思ったよりあっさり終わってしまった。ほんとにこれでいいの……?

まだ何もしてないからわからないけど、もしかしたら悪夢を見ずに寝れるのかもしれない。

てか、根本的な話、彼は本当に『本物』なのかな……?

「……おやすみなさい」

そう言って、私はベッドに潜り込んだ。

「うん。おやすみ。良い眠りを……」

その言葉を聞いた瞬間、急に眠気が襲ってきて、私の意識は闇に落ちた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

夢喰い白黒バク・2

お久ー!!

神ゲのプロローグが投稿完了したので、白黒バクを………!

これって続きを一気に読破しようとして次の作品へクリックすると神ゲ(を読んでたら白黒バク)が出てきてスムーズに続きを読めないという悲劇が襲ってきたりするんだよな……(説明下手過ぎ乙)

次は神ゲ1話!……かも!((ぇ
気分によって2話書くかも……w


なんか今までURL貼ってなかったけど真面目にちゃんと貼ろうと思う
皆に聞いてほしいからね!!w
原曲様:Nem「夢喰い白黒バク」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm14926860


ひとこと次回予告:ミクが学校へ行ってきます

閲覧数:270

投稿日:2012/07/27 17:45:35

文字数:2,783文字

カテゴリ:小説

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