6月ハーモニー 双子蜜柑 そのきゅう



「子供の時みたいに髪を伸ばしたら、この服を買いに来てね?鏡音リンちゃん」



私達3人はお店から全力で走って離れて、そのままイベント広場の近くの

外階段に向かった。

あのお姉さん、ど、ど、どうして私の髪が子供の頃は長かったって、

し、知ってるの!?

そ、それに、わ、私の名前を言った!!

ど、どうして!?レンもメグミもあのお店で、みょ、苗字は言ってないのに、

か、鏡音リンって、フ、フ、フルネームで言った!!!

「あのお姉さん、急に態度が変わってちょー恐ぇー!!」

「ふ、服を買わなかったらあんなこと言われるの!?わたし泣きそう!!」

私の後ろを走るレンとメグミの叫びを聞いて

ふ、2人にはあの言葉は聞こえなかったんだ!!

私だけしか聞こえなかったんだ!!私にしか聞こえないよう言ったんだ!!

私が先頭を走り、外階段の所に着いた途端、階段の下に見慣れた顔があった。

「あり?リンとレンと…誰だっけ?知ってるような、知らないような子だ」

おぉぉぉ、お母さん!!!

「お母さーーん!!!!」

私は泣きかけながら、私達を見上げているお母さんに駆け寄り

「何よ?そんな恐怖体験したような顔して………おわぁ!?急になに!?」

力いっぱいお母さんに抱きついた

「お母さん!!お母さん!!」

「何よリン!?何なのよリン!?説明しなさいレン!!」

お母さんが階段上のレンに聞くと、息を切らしたレンが

「はぁ…はぁ…実はさっき入ったお店で…お金が無いから試着した服を

買えないって店員のお姉さんに言ったら…はぁ…そのお姉さん、急に

態度が変わって…メチャメチャ恐かったんだ……だからです」

「違う!!違うよ!!あのお姉さんおかしいの!!そ、そんなんじゃない!!」

私はお母さんの胸に顔を押し付けながら否定した

「はぁ?何が違うんだよ?だってメチャメチャ恐かったから逃げたんじゃん?」

「そうだよリン、まぁ私とレン君はリンが着替えてる間はお店から

出てたから分からなかったけど、でもその前に急に態度が変わったからでしょ?

それとも着替えてる間にお姉さんと何かあったの?何かされたの?」

レンとメグミは最後の言葉を知らないから、そう言ってるんだろう。

「違うの!!嫌だよ!!私もうここに居たくない!!逃げようお母さん!!」

私はお母さんから離れて、お母さんの手を握って

「ちょ!?何よリン!?状況も何も分からないって!!」

「嫌ぁー!!嫌ぁー!!」

私はお母さんを引っ張りながら、全力で階段を駆け下りた

ダダダダダ!!

「危な!!危な!!危ないってリン!!」

恐い怖い恐い怖い恐い怖い!!!!

「ちょ!?リン!?待てよ!!」

「そこまで恐かったのリン!?待ってよ!!」

レンもメグミも私とお母さんを追っかけてきた





視点変更 リン→レン



リンが母さんを引っ張って階段を駆け下りたので

「待てよリン!!待てっての!!」

「リン待って!!お店から出たからもう逃げなくていいじゃん!!」

俺とメグミは2人を追っかけながら呼び止めようとした。

「嫌だ!!嫌だ!!嫌ぁー!!」

「リン止まって!!お母さん走れるほど若くないの!!死んじゃうよ!!」

しかしリンは階段を降りきると、おそらく家に向かって

「嫌ぁぁー!!!」

ダダダダダ!!

「お願い止まってぇー!!お母さんの脆弱な体力だともう限界近いの!!」

いつものリンだったら絶対に出せないスピードで走り去っていった

「早ぇー!!そんなに恐かったのかよ!?」

「なにあの速度!?レン君の全速力ぐらいあるんじゃない!?」

俺もメグミもリンの速度に驚いてる

これが火事場のクソ力ってやつか!?

「追うぞメグミ!!」

「う、うん!!」

俺とメグミも全力で走ってリンとお母さんを追っかけたが

ダダダダダ!!

「恐いよぉー!!嫌ぁー!!嫌ぁー!!」

「リン!!お母さんはもうオバサンなの!!そのオバサンがこの速度で

走る事は命に関わることなの!!オバサンの体力の低さを舐めるなよ!!」

ダダダダダ!!

「リーン!!待てぇー!!」

「止まってよー!!リーン!!」

俺達も全力で走っているが全く追いつくことができない…いや、追いつく

どころか、段々と2人との間に距離が出来てきた

ダダダダダ!!

「うわぁー!!うわぁー!!嫌ぁー!!」

「リン!!お母さんもう駄目!!マジやばい!!死ぬ死ぬ死ぬ!!

もうこれ以上お母さんを苛めないで!!止まってぇー!!駄目ぇぇー!!」

ダダダダダ!!

リンとお母さんから俺達は完全に引き離された。

俺は電信柱に手をついて、肩で息をしながら

「はぁ…はぁ…有り得ねぇ…なんであんなに…早ぇんだよ…?」

母さんを引っ張りながら俺よりも早いなんて…

するとメグミがヘロヘロになりながら俺に追いついて

「レ、レンく~ん…はぁ…はぁ…リ、リンは~、はぁ…げほっ!げほっ!」

俺と同じように電信柱に手をついてむせた

「た、多分…帰ったと思う…はぁ、苦し…大丈夫?」

俺はうつむいてるメグミの背中を擦った、すると

「っ!!だだだだ大丈夫です!!げほっ!ごほっ!はぁ、はぁ…」

メグミは慌てて顔を上げて、手を振って平気とアピールしたが、またうつむ

いて肩で息をし始めた

「いや、顔まっ赤だし、息だいぶ切れてるじゃん…」

また俺がメグミの背中を擦ると

「ぅ!!あ、ありがと…で、でも、もうちょっと下で、お、お願いします…」

ん?下って言ったら…

「まぁいいけど…ここ腰だよ?なに腰痛持ちなの?」

「そ、そうです…走ったせいで、こ、腰が痛くなっちゃったかな?はぁ…はぁ…」

「そう…腰は痛めると大変だからね?気をつけなね?」

「はい…気をつけます…あ、できれば縦じゃなく横で擦ってくれると…」

「ん~分かった」

俺は耳まで真っ赤にしてるメグミの腰を擦りながら

さて…どうするかな?

リンは家に行ったはずだし、追うかな?

なんであんなに必死になって逃げたのか、気になるし…

いや、きっと俺達が店から出て、リンが試着室で着替えてる時にあのお姉さんに

なんか追い打ちでも喰らったんだろ…

だとしたら特に気にしなくていいかな?母さんは気の毒だけど…別にいっか…

じゃあこれからどうしよっかな?

するとメグミが

「も、もう平気だから…もう擦ってくれなくていいよ?あ、ありがとレン君」

「分かった。もう大丈夫?」

「う、うん大丈夫…そ、それよりもリンを追っかけなくちゃね?」

メグミの言葉に俺は手を振りながら

「あぁ~それはもういいや。きっと着替えてる間にあのお姉さんになんか

言われたんだろ?それが恐かったんじゃね?だから帰ればもういいっしょ?」

「ええぇ?い、いいの?で、でもリン、かなり怯えてなかった?」

「大丈夫大丈夫…アイツけっこう過剰になる部分があるし…」

「そ、そうなの?で、でも…」

「今日だってさ~俺たち映画に行って来て、その後にマックに行ったんだよ。

その映画を見る前にさ~リンが待ち合わせして、待った?待ってないよ。を

やりたいってゆうから俺が後から映画館に行ったのよ。

そうしてらメゾールの前で知らないお姉さんに声かけられたんだよ、1人?

だったら私とお茶しない?って」

「ええぇ!?レン君、逆ナンされたの!?マジで!?」

「え?うん。マジマジ…そんでその事をリンに言ったんだよ、そしたらリンは

なにを勘違いしたのかね?俺が浮気したって思って俺の事を殴ろうとしてさ~

まぁ結局は殴られなかったんだけど、でも俺が違う!って言っても

普通に殴りかかろうとしてきたんだよ~

だからさっきのもそうなんじゃね?なんか過剰に捉えてるだけだと思うよ?」

メグミは微妙に納得してない感じで

「そ、そう…なの?そ、それで?レン君はそのお姉さんとお茶したの?」

なんでそんなに切羽詰った感じで聞いて来るんだ?

「いやいや行ってないよ?だってリンと映画に行かないといかんし、

あんまりそのお姉さんに興味ないし…てゆーかそのお姉さん、かなり

香水臭かったから近づいて欲しくなかったし…」

いま思い出してもあのお姉さんは臭かった…

「そ、そうなんだ……レ、レン君はあんまり香水とか…」

メグミはブツブツと考えだした

「どうした~?メグミ?」

「何でもないっす!今度からは控えますんで!!そ、それよりもこれから

どうしよっか!?メゾールに戻ろっか?」

なにを控えるんだ?

「ん~どうしよっか?…とりあえず、まぁのど渇いたし、何か飲むかな…」

俺は財布を出し、すぐ横にある自販機にお金を入れて

「なに飲むか…よし、○っちゃんにしよう…」

顔?が有名なオレンジジュースを買った

「あ、レン君はやっぱりオレンジジュース好きなんだね…」

「ん?別にそんな事は無いけど…のど渇いた時にオレンジジュースって

美味しくない?一気で行けるよね!!」

「う?……うん!そうだね!じゃ、じゃあ私も○っちゃんにするかな?」

そう言ってメグミも俺と同じのを買った

「んぐんぐ…ぷはー!」

「んぐんぐ…はぁ~おいしいね、レン君」

「んぐんぐ…ぷはっ…さて、ゲーセンにでも行くか?」

俺はジュースを飲みきり、空き缶を捨てながらメグミに聞くと

「うん…いいんじゃない?じゃあメゾールに戻る?」

そっか、この辺でゲーセンっていったら…

「そうだな…じゃあ戻るか」

「うん…んぐんぐ…」

メグミもジュースを飲みきり、空き缶を捨てると俺に

「も、もしよかったらさ、レン君…私と一緒にプリクラ撮ってくれるかな?」

「え?うん、いいよ~」

するとメグミは嬉しそうに

「本当っ!?ありがとう!!」

感謝することなのか?前から思ってたけど、メグミは大げさな所があるよな…

「んじゃ、行くか」

と俺達がメゾールに向かって歩き出した途端

ぴろ~ん

俺の携帯がメールを受け取った

「ん?なんだ?」

携帯を開くと

 『今ヒマ?良かったら俺とバスケしね?』

あ、タケルだ

1ヶ月前に俺にバスケットボールを貸してくれたタケルからのメールだった。

今からか…メグミにも聞いてみっか

俺は後ろを振り返って

「あのさ~メグミ。タケルって覚えてる?中学の時に同じクラスだった

タケル。今タケルからメールが来てさ~これからバスケしようって

言ってきたのよ~だから、どうする?てゆーか、バスケに変えね?」

するとメグミは少しショックを受けた顔で

「え!?で、でも…プ、プリ………う、うん、いいよ…レン君がそう言うなら…」

「まぁゲーセンはまた今度行けばいいし、なっ?」

「う、うん…そうだね……」

「どうしたの?なんか暗くなってない?」

「なってないよ…平気です…」

「そう?まぁいいか」

メグミの了承も貰えたので、俺はタケルに

 『いいよ~どこ?公園?』

と送るとすぐに返事が来た

 『そう、もう1人で練習してる』

やっぱり公園にいるか、アイツもバスケ馬鹿だな~

俺は携帯をしまって暗い顔したメグミに

「んじゃ行くよ~公園だって~」

そう言って歩き出すと、後ろから

「はぁ……」

なにやら重いため息が聞こえてきた



俺達は10分ちょっと歩いて、タケルがいる公園…1ヶ月前に俺達が

遊んだ俺の家の近くの公園に着いた。

そしてバスケットのゴールがある所に行くと

「お!レーン!!とリーン!じゃなくて……え?なんでメグミ?」

俺達を見つけたタケルが手を振っていたが、え?のところで止まった

「よ~タケル~」

「タケル君、久しぶり~」

そんな手が止まったタケルに俺達が手を振り返すと

「は?なんでリンじゃなくてメグミなの?もしかしてお前ら付き合ってるの?

なに?高校に入って付き合い始めたの?」

タケルがポカンとした顔で聞いてきたので

「違ぇーよ。付き合ってねぇーよ。今日メゾールで俺とリンが映画を

見た後、メシ食って服見ようとしたら偶然メグミに会ったんだよ。」

「そうそう、たまたま会っただけだよ。付き合ってないよ…」

俺とメグミで説明すると、タケルは

「あ、そうなの……あれ?じゃあなんでリンはいないの?どこよ?」

一瞬だけ納得したけど、でもまた疑問な顔になったので

「あ~服を見にお店に入って、メグミが選んだ服をリンが試着したんだよ…

そんで店員のお姉さんに値段聞いたら、3万7000円だったかな?

そう言われてリンは買うのを諦めたんだよ…そんでお姉さんに見に来ただけ

です。って言ったらそのお姉さん急に態度が変わってメチャメチャ

恐かったんだよ。それがあまりにも恐くてリンは偶然会った母さんと

家に帰ったってわけよ。OK?」

「ふ~ん、OKOK~」

タケルは今度こそ納得したみたいだ。そして俺に

「ん~じゃ、どうする?3人でバスケやるか?メグミはリンと違って

運動音痴じゃないだろ?」

リンの運痴っぷりは同じ中学の奴なら全員知っている

「どうする?メグミ?」

俺もメグミに聞くと

「どうするって言われても…どんな風にやるの?2対1とかでやるの?

そうだ、1対1でやるってのはどう?交代交代でやるの。どう?」

おぉ~メグミは頭いいなぁ~

するとタケルが

「じゃ~まずは俺とレンでやるか」

「よし来た…じゃあ10分で交代な~」

俺が準備運動をするとメグミが

「じゃあ私は座ってるね」

そう言ってベンチに座ったので

「よし!じゃあいいか?レン」

「ふっ、ふっ、よし!じゃあやるか!」





そして俺とタケルは30分経っても2人でバスケしていた

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

6月ハーモニー 双子蜜柑 その9

6月ハーモニー 双子蜜柑 その9です

あなたの後ろにもお姉さんがいる

閲覧数:53

投稿日:2012/08/29 23:22:52

文字数:5,751文字

カテゴリ:小説

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