【第十七話】SUDDENLY

 あの、私とミクさんの件から2日は、なぜか奴らは動かなくて、平和だった。
平和すぎて、気持ち悪いほどに。

 どうして動かないのか。
また奇襲をしかけてくるんじゃないのか。

 みんな最初はそういうことばっかり考えていて、ピリピリしていた。

 でも、2日もなると、警戒心も薄れてきて、みんないつもどおりになった。

 思えば私が来てからほぼ毎日のペースで奴らが動いていた。
本当は、これが本当なのかと思った。

 私が来る前の通常に戻ったのだと。

 メイコさんとグミさんとお買い物に行ったり、レンの部屋でゲームしたり、カイトさんにドキドキしながら勉強を見てもらったりした。

 思えば久しぶりだ。

 こんなに人間っぽい生活は。

 いままで、1週間しかたってないが、まともな人間の生活を送れてなかった。
異常な環境に居たのだ。

 メイコさんはいつも通りミステリアスで、且つ大人の女性の魅力がある。

 グミさんはその淡々としたしゃべり方の奥に、優しさと可愛さがある。

 レンは、憎まれ口ばっか叩いてムカつくし生意気だけど、そこが良い。グミさんとはまた違ったぶっきら棒だけど、暖かくて、優しい。

 カイトさんは、私の運命の人だしもう何が良いのか分らないくらいに良い。

 この平和な2日間の間に、みんなの違った面をいっぱい知れた。
私を本当の仲間に思ってくれてるのが分かる。

 それがうれしかった。

 のに。


 それは突然やってきた。


 「リンちゃん。ちょっと時間いいかな」

 「え…?あ、はい。だいじょぶです…けど…」

 「そっか、よかった。……じゃあここでは話しにくいから、外に行こうか…」

 「…?……はい……」

 カイトさんがいつもとは違う、神妙な面持ちで、私にそう言ってきた。
大事な話なんだろうかけど、なぜか胸が高鳴る。

 ―――もしかしたら―――。

 そんな淡い期待が、私の胸に押し寄せて、苦しくなる。

 
 カイトさんの後について外に出た。
家とはちょっと離れて、木々が生い茂る山のほうへ。

 「……この辺で、いいかな」

 独り言のように呟く。


 「あ、の……カイトさん?何か…私に……?」

 私が恐る恐る話しかけてみると、「あ、ごめんごめん」と謝った。

 「うん、リンちゃんに言わなきゃいけないことがあるんだ」

 「…!!」

 とうとう私の胸はいっぱいになる。
顔はどんどん赤くなっていくし、心臓は毎秒心拍を早める。

 言わなきゃいけないこと。

 それは――


 「あ、まずこれ。返さなきゃいけないんだ、はい」

 
 キョトンとする私にカイトさんは差し出す。

 あの簪を。


 「え…、でもこれ、カイトさんのじゃ…」

 「ん――、そこはちゃんと説明しなきゃいけないと思っててさ、まあ、元はリンちゃんのモノだからいつか返そうと思ってたんだ。まさかこんな早く出会えるとは思ってなかったけどね」

 「それはどういう…?」

 意味深だ。
流石に意味深過ぎる。

 わからない。
カイトさんの言いたいことが。
さっぱりだ。


 「え、と。その簪はホントは―――」


 ―――――どおおぉぉぉぉおおおッッッッ!!!!




 カイトさんの言葉を遮り、聞こえたのは途轍もない破壊音。




 「え!!??まさか奴らが―――ッ!!???」

 「――そうみたいだ。急いで、皆の様子を―――」

 「はいっ!!!」


 私はカイトさんより先に走った。

 カイトさんが『みんなの様子を見に行かないと』と、最後まで言葉を言っていないことには、気付かずに。

 それが、失策だった。


 
 ――――超展開は突然に訪れる―――。



 「奈落舞――――」


 何か聞こえた。

 気がした。

 カイトさんかな…?




 「カイトさ…」



 私が後ろからカイトさんの足音がしないことと、さっき聞こえた声に不審を感じ、振り返った。



 誰もいない。

 生き物はおろか、人の気配など全くない。
 
 相変わらず蝉の声はしない。

 気配がない。

 私以外の、生命の。

 確かにいたはずだ。

 カイトさんはそこに。

 カイトさんは治癒能力だから、飛んで行くことはできないし、瞬間移動もできない。

 なら――どうしてだ?

 どうしてカイトさんは―――いない?



 「!!!!!!!!!!!!??????」




 気づいてしまった。

 さっきまでカイトさんが立っていたところ。

 深い、深い―――。




 ―――穴が開いていたこと―――。





 「リン!!!!大丈夫か!!!??」

 レンが私の名前を呼んでる。

 「リン!!!」

 よかった、奴らがいつ動くか分らないから、今日はずっと戦闘服を着てろって、グミさんに言われてたっけ。

 「リン!!!剣だッッ!!!ちゃんと受けろよ!!」

 ダメだ。なんか何も考えられないや。

 「行くぞっ」

 その剣があれば、私は闘える。
ナイスだよ、レン。
どうしたの頭冴えてんじゃん。

 「やめろレンッッ!!!今のリンに剣を渡しちゃだめだ!!!!!!!」

 「え…」

 レンが投げた。

 剣を投げた。

 私に向かって。

 私は振り返る。

 グミさんが、レンに怒鳴ってる。

 「どうして私に剣を渡したのか」と。

 いいんだよ、どうして怒るのグミさん。

 
 その時私は見た。


 確実に。

 眼の端に見えた。

 手の中に剣の柄が納まる。

 サラサラストレートの、すらっとしたドレスを着た女性。

 桃色の髪をなびかせて涼しげに立っている女性。







 「お前かぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」













 ―――超展開は突然に訪れる―――。














 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

CrossOVER NoIsE.

本格的バトルに入って行きました。

今までの作品のように20話では終われないと、確信を今持ちました。

だって、バトルと並行して、グミさんとレンくんとメイコさんとカイトさんの…要はみんなの、過去を描くのを予定してるんだもの。

閲覧数:140

投稿日:2012/08/17 20:05:48

文字数:2,513文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    そうですねー
    過去や、1人1人の過去や、イベントを考えてたら、あっという間に100話になりますからねぇww←

    ルカさんはかっこかわいくなります!
    たぶん!
    だから、まだ、悪いと決めつけない

    2012/10/10 15:48:29

    • イズミ草

      イズミ草

      100話…膨大な数だ…^^;
      そんだけを書き続けれないかもww

      まだこの状態では分かりませんねww
      楽しみにしておってくださいっ←

      2012/10/10 18:36:24

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    カイトおおおおおお(絶叫
    ルカさんなんで。私を裏gittaか…!!(←混乱しすぎ

    驚愕。混乱。悲哀。激怒―――負の感情は力に作用する。
    覚醒、爆発。そして―――暴走…!!

    …そういえばこっちでこのタイプ(奇襲→大切な人消失→激怒→力爆発)のバトル勃発やったことないな。
    だってこっちの敵はみんな正々堂々戦うし。殺すとか言ってるくせにねwww
    力の覚醒もマスターの想いとかだし。

    ああもう書きたくなってきたwwwだが我慢だガマン。

    2012/08/26 19:52:56

    • イズミ草

      イズミ草

      ルカさんにも考えがあるわけです…。
      ルカさんを責めないで!!(号泣www

      その文章いいですねww
      なんか、某小説みたいでww

      そういえばそうですねww
      でも、バトルって一言でいっても、書く人によって違うもんですよねーww
      私のバトルにやけに裏切りとか、新事実発覚とかがおおいのは、
      私の性格が…アレだからかもしれない…。

      2012/08/27 11:02:54

  • つーにゃん

    つーにゃん

    ご意見・ご感想

    もしかしたら、スマホで初めて意見書いたかもです(笑)

    私はこういうバトルもの好きです!
    バトルもの書く人尊敬します!!

    カイト…

    2012/08/17 20:18:19

    • イズミ草

      イズミ草

      私も超尊敬しますよw
      尊敬しまくります!!

      好きと言ってくれるとは…。
      よかったです…。

      スマホになっちゃっても、どうか見てやってください。

      カイトどうなったんでしょうね……。

      2012/08/17 20:21:36

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