シャッ、シャッ。
私のお気に入りの櫛が、私の髪を梳かす微かな音が聞こえた。
私は今、レンに髪を梳かしてもらっている。ボサボサだった髪が綺麗に纏まっていくのを、少し微笑んで見ていた。
パサリ、パサリと櫛で梳かして行く度肩に落ちる、金色と亜麻色の混ざった母譲りの独特な色の髪。
そういえば、私がレンと同じなのはこの髪だけになっちゃったな…
私の頭にそんな一文が浮かぶ。
そう思うと急に胸がきゅうと締め付けられて、泣き出しそうになった。
今までずっと、そう、本当にずっと……何もかもが一緒だった。
いっつも一緒に寝ていた。小さい頃は、当然の様に顔を見合わせて、お互いの手を繋いで。
この歳になるまで離れて寝たことはなかったし、クラスの男子に冷やかされたりするけど全然気にならなかった。
……レンは……それが嫌だったの?
「……リン?」
はっと、私の意識が現実に引き戻される。
私の顔の前に、レンの顔がドアップであって、私は思いっきり吃驚してしまった。レンはまたクスクスと笑う。
「ほんと、リンは変わらないね。」
「それ、どーゆー事よ……」
「ま、小さい頃よりは大人っぽくなったけどね」
レンと他愛も無い会話を交わす。
「…あ、リンの好きなミルクココア入れてこようか?」
「え、いいの?」
「うん、秘密だよ?」
唇に人差し指を当てて、「秘密」のポーズをとるレン。
…カッコイイなんて思ってしまった。
「じゃあ、お願い…」
「了解」
レンはそのままドアを開けて廊下に出て行った。
私は椅子に座ったまま、鏡をボーッと見つめる。
ふと、さっき私の髪を梳かしていたレンの残像が浮かんだ。
「……っ」
私は――その「決定的な違い」に、今更ながらも気付いてしまった。
違う、違う違う違う違う違う違う。
私の知ってる「レン」じゃ―ない。
「い―いやっ!!」
急に不安になって、鏡に拳を当てた。
残像は消えて、手に痛みが広がる。
消えるのが―「私が知ってる」レンが消えてしまうのが、怖かった。いつか、私の目の前から消えてしまうんじゃないかと―怖くて不安で。
ねえ、私達はなんで姉弟に生まれてしまったの?
姉弟は、ずっと一緒に居られないのに。
「なんで―私達は双子で、姉弟なんだろう……」
いつのまにか、私は自然にそう呟いていた。
ベットに腰掛ける。さっきと同じ体勢で、熊のぬいぐるみを抱いた。
数分して、レンが帰ってきた。
「はい」
そういわれて、私の手にミルクココアが渡される。私はそれを口にした。けど―
「熱っ」
思わず口を離してしまった。レンは「大丈夫?」と私の顔を覗き込んでくる。
ちゃんと冷ますね
その声が遠くから聞こえた気がした。
口内に流れてくる液体。それはほんのり甘くて。
数秒して気付いた。
――口移しされてる?
「―」
私はレンの肩に手を置く。声が出なかった。
「―ん」
たまにそんな声が漏れるだけで、私は恥ずかしくて頬を赤らめた。ココアを飲み込んでも、レンのキスは続いてくる。
「、―んっ」
やめて…という意思をレンに伝えてみるも、レンは離れてくれない。むしろもっと深くなる。口内に彼の舌が侵入して来る。酸素が足りない。
「―ふぁ」
体の力が抜ける。
目の端に涙が溜まっているのが分かった。
そこでキスは止まる。
「ごめん」
レンは指で溜まった涙をすくってきた。
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ブクマつながり
もっと見る僕は、覚悟を決めた。
今日は盛大なパーティーが開かれた。特に誰の誕生日というわけではない。ただ、パーティー好きの両親が主催の、気まぐれのパーティーだ。
リンも僕と同じ事を思っていたらしく、会場を爛々と瞳を輝かせて見ていた。
でも…―僕等は「姉弟」だから。
リンが戻ってくる少し前、母さんに話を持ちかけ...アドレサンス<自己解釈> *1(レン視点)
haruna
僕は少し間を置いてから、リンに「隣いい?」と……なるべく震えそうになる声を抑えて、笑顔を作ってリンに聞いた。
リンは無言で僕が座れるスペースを作る。僕はそこに座った。
「…リン」
少しの気まずい沈黙の後、僕が口を開く。
リンは「…何?」とさっきと同じ返事を返してきた。
「髪……梳かそうか?」
僕は、...アドレサンス<自己解釈> *2(レン視点)
haruna
ボーン…ボーン…ボーン……―
12時を告げる柱時計の音が、鳴った。
その時計のゆらゆら揺れる振り子は、まるで僕とリンの今の心情のようだった。
僕はそっと唇に触れる。まだ、ほんのり温かかった。
「……ねえ」
突然、リンが僕に話しかけてくる。
リンは、言葉を続ける。
「……ほんとに、行っちゃうの?」
「...アドレサンス<自己解釈> *4(レン視点)
haruna
「レン……?」
リンの僕の存在を確かめるような声が、遠くから聞こえた気がした。
トクン、トクン。
多分、僕もリンも鼓動がシンクロしているハズだ。
僕とリンの顔は間近に迫る。
リンの女の子らしくなった顔が間近に有るのが、もっと心拍数を上げた。
僕は、リンを押し倒している。
それは紛れもない事実……僕の...アドレサンス<自己解釈> *5(レン視点)
haruna
「レン……?」
心臓の音が大きすぎて、自分の声さえ遠くから聞こえる。
レンの顔が間近に有るのが、もっと心拍数を上げた。
私は、レンに押し倒されている。
それは紛れもない事実……私の心拍数を上げるのに十分な理由。
「……リン」
数秒経って、リンがゆっくりと唇を動かした。
自分と同じ、青い瞳で見詰め合う...アドレサンス<自己解釈> *5(リン視点)
haruna
「…」
私は、偶然聞いてしまった。
今日は家で盛大なパーティーが開かれた。それはパーティー好きの父と母が主催で行われていて、色々な人が来ていた。
豪華なドレスを着た大人たちや、普段の倍はある料理、いつもより光って見える大理石の床。全てが私にはまぶしく見えた。
今はもうパーティーは終了して、それぞれ帰...アドレサンス<自己解釈> *1(リン視点)
haruna
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