あの骨折も額の傷も痛かった、というだけで
どう痛かったかは覚えていないことが多い。
だから今も尚分かるのはただ、しぬほどすきだった、ということだけ。あの時の屈辱も悲壮感も心の痛みももう鮮明には感じられない。息をするのもやっとで生きた心地がしなかった。震えながら泣いていた。どれだけ身を焦がしても治らない炎と深まるばかりの火傷。生き地獄だった。ただ生きた。
悔しかった。全てが。負けたのも信じたのも。脆くなった自分が憎かった。世界が灰色で冷たかった。もう遠くへ行ってしまいたかった。絶対に出し切って悲しみ切る、この全ての感情に向き合う。

ライセンス

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振り返らないように

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投稿日:2024/11/08 04:21:40

文字数:267文字

カテゴリ:小説

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