インターネットという、情報の海の片隅にたたずむ仮想空間上の街、ゲキド街。その町のさらに片隅にあるゲキド中学校の、さらに片隅のミステリー研究部室。そこで副部長の鏡音レンは推理小説を熟読していた。
 最終下校時刻が迫り、帰宅部はもちろん文化部員もほぼ全員が下校している。熱心な一握りの運動部の掛け声が校庭からかすかに響いてくるのみで、部室は静寂に包まれている。レンはこの時間帯に一人で本を読むのが好きだ。中学二年生にしては枯れた趣味だと自分でも思うが、好きなものは仕方ない。
 天井からぶら下がったUFOの模型が斜陽を反射し、クー・クラックス・クランの覆面が今にも中の人間無しに動きだしそうな風で壁際に放置されているなど、事件・オカルト・怪奇・都市伝説などといった謎を総合的に取り扱うミステリー研究部ならではの気を散らす要素は多数あったが、それらとも二年間弱もの付き合い。レンにとってはすでに旧友のような存在になっている。
 誰かが忘れ物でもしたのか、ぱたぱたと廊下を走る足音。レンは聞くとはなしにその足音を聞いていた。――全く、騒がしいな。
 と、足音はレンのいる部室の前で立ち止まり、勢いよく部室のドアを開いた。
「レン、大変よ!」
「リン!?」
 足音の主は、レンの双子の姉にしてこのミステリー研究部の部長、鏡音リンだった。よほど急いで走ってきたらしく、レンのものと同じ色の、しかしより長い山吹色の髪が乱れている。
「どうしたんだよ。忘れ物か?」
 つい十五分前に「先に帰るから」と言って帰宅したリンを思い起こし、レンが言った。いくら双子で同じ部活とはいえ、中学生にもなって異性同士の兄弟が下校時刻を合わせたりしない。小説に没頭しがちなレンは、主に部活にはしゃべりに来ているリンに置いて帰られることがほとんどだった。
 その時。
「リン先輩、待ってくださいよー」
 という、よく通る中性的な声が足音とともに近付いてきた。足音は一回途中で転んで、ミステリー研究部の部室に到達する。
「肝心の号外、落としてましたよ!」
 ミステリー研究部の一年、歌手音ピコが息を切らせながら部室に入ってきた。声とよく合う中性的な顔立ちが汗で光っている。
「たねぴこ! どうしたんだそんなにあわてて」
「そのあだ名やめてくださいよ」
 当人は気に入らないらしいあだ名を口にし、いつも通りのやり取りをしてから会話をつづける。
「ところで、号外って?」
「そうなの。駅前で配ってたのを受け取って、ダッシュで戻ってきちゃった!」
 リンはピコが手に持った新聞紙を受け取り、レンに見せた。すでにくしゃくしゃになった一面には、こんな見出しが躍っていた。

『初音ミクのマネジャー、怪死!』

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

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VOCALOIDでラングドンシリーズ的な都市伝説ミステリーを書きたい!
そんな思いで書き始めました。
多分一つの事件を書くだけで精いっぱいだと思いますが、
いずれシリーズ化出来たらいいなあと思っていますw

今回は、なんかレンが枯れててすみません←
「たねぴこ」ってあだ名はニコニコ大百科からいただきましたが、
かわいいですよね。

閲覧数:523

投稿日:2011/01/30 22:19:30

文字数:1,130文字

カテゴリ:小説

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    ご意見・ご感想

    コラボから流れてきました^^

    おおぉ!!面白そうな話ですね!!続きが気になります(>∀<*)

    ものすごく遅くなるかもしれませんが読書するレン君の絵が浮かんだので挿し絵みたいなもの描いてもいいでしょうか?
    低画力の持ち主ですが…

    2011/01/31 18:13:45

    • 上尾つぐみ

      上尾つぐみ

      こんにちは! 感想ありがとうございます。
      続きは鋭意執筆中ですが、実は作者のなかでもあまり定まってなかったり←
      挿絵ですか! なんだか恐れ多いです;;
      描いていただけるんでしたら遅くなっても気長ーに待ってます。
      ありがとうございます!

      2011/01/31 21:28:24

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