光を受けるくせに「ネガ」なんて
わかってるけど腑に落ちなくて
好きな人の写真ばかり焼き増し
バレるからみんなで手分けして

撮影者は透明人間で
使い捨てだってリサイクル
こんなに硬い缶詰の中で
私たちの全部詰め込める

座ってた椅子食べてたお菓子
飲みかけのボトル一面真っ白
暗号みたいな普通の景色
全部克明に思い出せるの

捨てられないのおかしいよね


光を浴びてなお「ネガ」なんて
知っているけど不憫に思って
気になった写真だけピンボケ
ブレるから誰かに手渡して

タイマーなんて付いてない
ガリガリ鳴らしてリバイバル
こんなにも薄い膜の上で
私たちの命載せている

脱ぎ捨てた服散らかした雑誌
折れかけのルージュ全部真っ黒
信号みたいな普通の毎日
今も大切に守ってるの

忘れてないのおかしいよね


何度だって書き込んだメモ
押入にしまうのとは別に有る
いつでも見られるように
よくよく選んだ「イチバン」の箱

忘れられないなら捨ててもいいのに
時間が経てば「ネガ」になって
焼き付いてもう剥がせないから？
君はもう簡単に剥がしたくせに


座ってた椅子食べてたお菓子
飲みかけのボトル一面真っ白
暗号みたいな普通の景色
全部克明に思い出せるの


あの時の私を捕まえて言うんだ
「どうせ忘れないから」ってその場で
大切な薄っぺら全部引き出して
喚いたところ笑ってやるんだ

ベロの入り込んだ缶の中を
お店の人が真剣に暗箱で
思い出を無くさないようにって
きっと単なるお仕事なのに


脱ぎ捨てた服散らかした雑誌
折れかけのルージュ全部真っ黒
信号みたいな普通の毎日
今も大切に守ってるの


「どんな写真でも全部」って
どんなにさりげなく言ってみても
ワクワクの赤ら顔はときめいて
笑って了承してもらった頃

「どんな私でも全部」って
どんなにときめいて伝えてみても
ドキドキで手の汗が引かなくて
今じゃもう笑って許してくれない

何もかもありのまま晒されて
薄っぺらな想い感光して露光した

もう何も見えなくなったって
刻まれたネガは消えてくれないね
今もまだそんなお年頃なのかな