「…スター、マスター、大好きです。」
僕は、血に塗れた手でマスターを抱き締めた。
「カイト…カイト…」
震える声でマスターは僕の名を呼ぶ。
「なぁに?マスター。」
「…どうして?どうしてこんなことに…」
マスターの瞳は暗かった。
暗くて暗くて、真っ暗だった。
「マスターが大好きだからですよ。マスター。」
―そう、マスターが大好きだから―
「…カイト…。」
「はい?マスター。」
マスターは僕の背中に手を回した。
「大好きです、マスター。」
せめて、最期の時まで抱き締めさせて…
僕は、もうすぐ壊れる。
僕の背中には、重要なコードをズタズタに切り裂いたアイスピックが刺さっている。
これは、あの時に刺さった…。
「ごめんね、めーちゃん。…サヨウナラ。」
ザシュッ
「!?」
カイトは振り向いた。
背中に激痛が走ったから。
「………。」
そこには、血だらけのレンがいた。
その手には、アイスピック。
「…レン君…。」
アイスピックは重要なコードを切ったらしく、僕は立っていることが出来なくなった。
そして、僕は持っていたアイスピックを落とした。
僕が倒れるように座り込むと、レン君は僕を見下ろした。
その眼は、哀しんでいるのか、憎んでいるのか、僕にはわからなかった。
ただ、一つ言えることは、涙を流していることだけだった。
「兄さん…。」
レンはそう呟いて倒れた。
僕は、倒れたレンを見つめた。
「…………。」
僕はもう、立てない。
すぐ壊れるだろう。
…いや、壊されると言うべきか。
僕はメイコに目をやった。
メイコの傍には僕が落としたアイスピック。
―それで僕を刺しなよ―
メイコは僕に向かって手を伸ばした。
「…………。」
僕は目を閉じた。
メイコの手が僕の首に触れる。
僕の体はピクッと動いた。
「カイト…。」
僕は、驚いた。
メイコは僕の首に手を回し、僕を抱き締めたのだ。
「…めーちゃん?」
僕は目を開けた。
「カイト…大丈夫なの?」
めーちゃんは泣いていた。
泣きながら僕の心配をしていた。
「めーちゃん、僕が憎くないの?」
僕はめーちゃんに話し掛けた。
「…なにかワケがあったんでしょ?そうじゃなきゃ、カイトがあんなことしないって知ってるわよ…。」涙声でめーちゃんは優しく、優しく話す。まるで、僕がマスターに話し掛ける時みたいに。
「でも僕はみんなを…。」
僕は俯いた。
「大丈夫よ。マスターだってわかってくれるわ。」
めーちゃんはそういった。
―マスターが?―
―わかってくれる?―
マスターが僕を恐がったら?
僕を嫌ったら?
僕を捨てたら?
そしたらどうするの?
僕は想像した。僕を捨て、メイコと楽しげに話すマスターを。
―そんなの、許さない―
「めーちゃん。」
僕は、メイコの後ろに落ちていたアイスピックを拾った。
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「大好きだったよ。」
ザシュッ
続く…
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