―――それからシーカーと過ごした日々は、黒の魔術師といるにしては温かい毎日だった。少しなら、世界を許してみてもいいかもしれない。そう思ってしまう僕自身に、僕は苦笑した。
「サンディ、仕事だ」
『捜し屋』を名乗る奇妙な男に拾われてから二週間。シーカーは『捜し屋』を掲げるだけあって、犬でも猫でも人でも必ず見つける。僕もそれを手伝えないかと思ったけど、どうやらシーカーにしか使えない方法みたいなのでそっちは諦めた。
代わりに僕は、捜しに行って留守にするシーカーの分店番をしたり、シーカーが買い物している時の荷物持ちをするようになった。生活に必要な物なら、僕はもう問題なく字が読める―――最も、書くのは相変わらず下手だけど。
「荷物持ち? それとも店番?」
どちらも、僕はきちんとできるようになった。シーカーが「よくやった」って褒めてくれるのは嬉しい。頭をぐしゃっと撫でるのは嫌だけど、シーカーもカイトにされていたからおあいこだ。そしてカイトは、なんで今まで警察に捕まらなかったのか不思議なほどの不法侵入者だ。
あれ以来も、彼はいつの間にかさも当然と言わんばかりに来ては毛を逆立てたシーカーに追い返されている。うさん臭いけど、僕は何となく嫌いではない。
『君にその記憶は無くとも、確かに君は彼女なんだね。君と彼女はどこまでも近いが、決してイコールにはならない。ある意味、とても残酷な事だ・・・彼は、果して分かっているのかな?』
シーカーがすぐに追い返すから、あの言葉の意味はまだ聞けていない。
けれど、僕はあの日以来彼女の夢を見るようになった。
彼女の夢である事は確かなのに、その内容はどうしても思い出せない。
悲しくて狂おしい感情に焼かれながら、ずっとずっと誰かを捜していたような気がする。
黒い服の裾が翻るのを見て、期待して裏切られて。
僕である『彼女』が捜していたのは、誰なのか―――
「・・・ディ? サンディ、どうした?」
シーカーにがたがたと肩を揺すられて、僕の意識は外を向いた。
「あ、シーカー・・・僕、またボーっとしてた?」
やけに幼い仕草でシーカーは頷く。その瞳に浮かぶのは、心配。
こつん、とシーカーは突如として僕の額に自分の額を当てた。
何をする気なんだこの人。
「熱はなさそうだけど、今日は早く寝ようか。あ、マフラーはしていってよ? せっかく昨日買ったんだし」
僕を慮っての行動だったらしい。その気遣いがくすぐったくて、恥ずかしくて・・・あったかい。
「はいこれ買い物メモ。わからなかったら、店の人にでも読んでもらって」
シーカーに手渡されたメモを持って、お金を持って、マフラーをして。
ここで僕は大切な事に気がついた。
「ちょっと待てシーカー。僕、一人で買い物行くの?か」
「そりゃあ君の事は心配だよ? 道行く人に噛み付かないかとか迷子にならないかとかお金盗まれないかとか」
「なら何故!?」
僕はシーカーに噛み付いた・・・いや、実際に噛んでいる訳じゃないけど。
「いつか私は、君に『捜し屋』を手伝ってもらおうと思っている。本格的な助手になるなら、買い物くらいは一人で行ってほしいという私の優しい師匠心だ」
シーカーは芝居がかった仕草で大げさに腕を広げる。
絶対本人が面倒くさいだけだ。
「はあ・・・とりあえず行って来るよ」
何か事が起これば、それは全部この胡散臭いシーカーのせいだ。
僕はため息をついて、そのままボロ家を出た。
「いってらっしゃーい」
振り返ると、シーカーは戸口でひらひらと手を振っていた。
きっとコイツ、頭の中身が虫に喰われてる。
【白黒P】捜し屋と僕の三週間・10
最近更新ペースが落ちちゃってる零奈です。
そして夏は暑いですw
次回、「サンディ、はじめてのおつかい」の巻。
カメラの代わりに少年を尾行するのはシーカー(かも)ww
追記:
数字を振り間違えたので訂正しました!
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作詞・作曲: DATEKEN
vocal・chorus: 鏡音リン・レン
lel twa jomenti
al fo letimu...
el tsah tjumeni
jah hun mu...
lel twa sjah lenti
al fo letico...
ol tah ...Jutenija
DATEKEN
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