深夜だというのに、心臓は日中よりよっぽど活発に活動していた。
まったく眠れる気がしない。リントと過ごす夜はいつもこうだ。
それを分かった上でなお甘やかす、わたしの愚かしいことったら、本当に救えない。
ホラー番組を見た彼が泣きそうな顔をして部屋へ来たのは、もう四時間も前のことになる。
さて――現在は、と言えば、ものの見事に熟睡である。
頑なにわたしの手を放そうとしないことが、当初の怖がりようの唯一の名残だ。
怖くて眠れないと泣き付いてきたくせに、リントはさっさと夢の中に潜ってしまった。
一人は怖いけど、二人なら問題なく眠れるんですね分かります。
……人の気も知らないで。
たとえばこういうとき、わたしは不安になる。
自分は本当に異性として、リントの対象に入っているんだろうか? なんて。
だって普通は好きな子と一緒に寝たら、もっとドキドキもだもだするもんじゃないの?
現にわたしは、ギンギンに目が冴えているというのに、この安らかな寝顔ときたら。
「……ていうかちょ、こっち寄りすぎ」
いつからか、わたしの背はぴったり壁についていた。
うーんと唸って、リントの手が布団を引き上げる。
ころんともう半回転すれば、とうとうわたしは身動きの余地すらなくなった。
押し返してやればいいんだろうけど、そのままベッドから転げ落ちそうな気がしてできない。
――それ以上に、今のわたしには、リントに触れる勇気がない。
規則正しい寝息を立てる彼の、伏せた睫毛は長く、肌なんて女の子よりも白い。
微かに触れる髪は柔らかい。
こんなものがすぐ目の前にあって、暢気に眠れるわけがないじゃないか。
どきどきと打っていたはずの心音は、いつの間にかばくばくに変わっている。
顔、体は、火のそばにいるときよりも、もっと熱かった。
リントがもう一度寝返りを打ってくれれば、無作為の頭突きになるだろう。もう、それで昏倒でもさせてくれないものだろうか。
そんな願いも虚しく、彼は時折言葉になりきらない寝言を言っては、眠りを堪能しているだけ。なんとも半端だった。
「リント」
名前を呼ぶと、繋がれた左手がちょっと握り返された気がした。
「二人はきついわ……この場合、サイズ関係なさそうだけど」
右半分、大きくスペースが余ったベッドに、独り言が漏れる。
時計の針がまた一周して、カチリと音を立てた。
「……眠くない、なー」
「……こら」
「ひえっ!? 」
「なにまだ起きてんの」
ほんの少し、意識を移したその一瞬のこと。
タイマーでも付いてるんじゃないかと疑うほど正確に、深夜二時。
彼は、重そうに瞼を持ち上げて、わたしを凝視していた。
「お、起きた、の」
「今、目が覚めた……もっかい目ぇ閉じたらまた寝れる……」
言葉の通り、リントの声は今にも寝息に変わりそうな弱さだ。
「レンカは、眠れないの?」
「うあ、うん、まあ、ね。ていうかリントよく寝れるね」
「なにが……?」
「その、わたしと同じ布団で」
「ばかやろー、レンカと一緒だから熟睡できるに決まってんだろー」
空いていた手が、わたしの髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。
なにこの人、今の一言で二十四時間戦えるんですけど。
「ほら目を閉じる。夜更かしは美容の大敵だぞ」
「わ、わかったってば」
「うんうん、おやぐみぃ」
最近、内輪で流行っている挨拶を口にして、リントはぴたりと口を閉ざした。
少し置いて、聞こえてくるのは再びの寝息だけ。
「……」
言われるままに目を閉じているわたしの世界は真っ暗だ。
心臓は、相変わらずうるさかった。
「……眠れ、ない」
コメント3
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ご意見・ご感想
黒初。
ご意見・ご感想
2424が止まらない……
2011/07/24 22:53:03
音坂@ついった
ありがとうございます^///^
2011/07/24 23:05:18
wanita
ご意見・ご感想
今日もらぶらぶですね!
24時間戦えるんですけど。このレンカちゃん好きです。
こういうリトレカもいいなぁぁ……☆今書いているシリアスリトレカが終わったら、やってみようかな♪
2011/07/24 15:36:59
音坂@ついった
らぶらぶwwなんでしょうかこれ(思わず笑った)
うちのレンカちゃんは全部内に隠しちゃうタイプですが、読み手に好かれてるならそれでい(ry
わにたさんのラブラブリトレカ楽しみにしてますね!
もちろんシリアスの方もv
2011/07/24 23:04:41
波漣
ご意見・ご感想
最高過ぎて私も今日は眠れないかもしれません///▽///
2011/07/24 13:31:56
音坂@ついった
わわ、波漣さんいつもありがとうございます^///^嬉しいです///
2011/07/24 14:34:43