「もーすぐお兄ちゃんの誕生日だねー」
「…ああ」「そうだねー」
「リンちゃんとレンくんはもうプレゼント決めた?」
誰かの誕生日が近づくと、決まってミクがこの話題を振る。
だいたいプレゼントに悩んでみんなの意見を聞くためだ。
「リンはもう決めたんだーv」
即決型のリンは、ミクが聞く頃にはだいたい決まっている。
「じつは私も今回はもう決めてるんだー!」
めずらしくミクのプレゼントも確定しているらしい。
「今回はプレゼントの中身はみんな内緒にしとこうよ!
当日のお楽しみってことで♪」
ミクは意味ありげにフフフと笑っている。
「レンくんは決めたの?」
「オレはまだー…っていうか今回はリンの案に便乗するつもり」
「「ええーっ!」」
「なんだよ、いいだろ!カイ兄のプレゼントなんか
わざわざ考えんのメンドーだし、リンが買ったヤツを半分出すよ」
二人はレンにしらけた目を向けている。
「えっと、じゃああれでいんじゃね?リンがメイ姉のときあげた
ドクロインカム<めーちゃんハピパ01参照>の色違いとかさ…」
「レン…、そんなにドクロインカムが欲しいのなら素直に言えばいいのに」
「そーだよレンくん」
「ちげーよ!!」
猛否定するレンを二人はなおも半眼で見つめている。
言えば言うほどインカムが欲しいと思われかねない。
「とにかく!今回はリンのプレゼントに便乗するから。
お前だってオレが半分出す方がいいだろ!」
「いーけどぉ、何買うかは教えないからねっ!」
「いーよ、聞きたくねーし」
ここで3人はプレゼントの話題を止めた。
もうすぐ家だ。
今日は3人が同じ仕事で、カイトとメイコが家で留守番しているはずだ。
「「「ただいまー」」」
「おかえり」
メイコの声しかしない。カイトの靴がない。
出かけているようだ。
「お兄ちゃん出てるの?」
リビングのドアを開けながらミクが聞いた。
「ええ、ちょっとガクポさんのとこに行ってくるって」
何か飲む?メイコがソファから立ちあがり、キッチンへと向かった。
ミクとリンはホットココア、レンはカフェオレを頼んだ。
メイコも自分のジンジャーティーを入れ4人でテーブルを囲んだ。
話題は自然とカイトの誕生日の話になった。
メイコのプレゼントも決まっているらしい。
ミクが「今回はみんな内緒なんだよ」と言い、誰も尋ねなかった。
当日は珍しく全員が丸一日オフなので、それぞれ役割分担をして
夕方のパーティーに備えることになっていた。
午前中はミクと双子が部屋の飾り付けをし、メイコとカイトが料理の準備をする。
主役が料理の準備っていうのもなんだが、
どうせカイトはメイコにひっついておきたいのだ
それを阻止する方が野暮だろう、と誰も反対しなかった。
「どんなメニューなの?」
リンが聞いた。
「イタリアンにしようと思って。
パスタでしょピザでしょ、アクアパッツァ、カルパッチョ、ミラノ風カツレツ…」
「そんなに作るの?」
「そう、カイトがね」
(((うちのメイ姉も料理だけはダメなんだよね…)))
この家のメイコは、お酒もたしなむぐらいしか飲まないし
カイトに暴力を振るうこともほとんどなく、
世間の「メイコ」のイメージよりもずーっとおしとやかだったが
料理はかなり苦手だった。
その分カイトがしっかりしてクールで大人という、非常に稀なペアだ。
「まぁ料理は得意な人が作ればいいよね」
と、これまた独特の料理センスを誇るミクがフォローした。
(あー、ミク姉にフォローされるようじゃあメイ姉もおしまいだな。)
などと思いながらレンが横目で見ていると、ミクがその視線に気づいた。
「もぅレンくん!そんなに見つめたってネギプリンは作れませんよ。
材料が足りないもん」
「頼んでねーよっ!!!」
かわいく頬をふくらませるミクに、レンがまるでハリセンボンの
春菜のような突っ込みを入れたところで、カイトが帰ってきた。
「ただいまー」
手には自分のバッグのほかにドラッグストアの袋が下がっていた。
中身は絆創膏だった。
「お兄ちゃんケガしたの?」ミクが聞いた。
「ううん、これめーちゃんに。
オレの誕生日の料理の準備のときケガしちゃいけないし。」
慣れないイタリアンだからさ、とか言っているが
作るのお前だろ!とは誰もつっこめなかった。
ほかにもがくぽ宅で皮むき器を借りてきたらしい。
もちろんメイコに。
無駄だ。無駄過ぎる。
いや、しかしメイコも皮ぐらい剥くかもしれない。
そう3人は思いながら眺めていた。
夕食が済み、それぞれお風呂に入ったり、明日の準備をしたりで
リビングにはメイコとレンの二人が残っていた。
レンがソファでテレビを見て笑っていると、
テーブルに座っているメイコからの視線を感じた。
「なに?」
「うん…、あのね…」
なんだか言いにくそうだ。
こんな歯切れの悪いメイ姉もめずらしいと思う。
「カイトの誕生日のことなんだけど」
うん、とレンが相づちをうつ。
「お昼食べてから1時間ほど、レンとミクとリンで3人で
買い出しに行ってきて欲しいんだけど…」
そんなことがなんで言いにくいんだ?と訝しんでいると
「ごめんね、1時間だけカイトと二人っきりにして欲しいの」
と目を逸らして言うメイコ。
「別にいいけど、なんで?」
遠慮することないのに、なんでそんなに言いにくそうなの?という
単純な好奇心からレンは尋ねたのだが、後でそれを後悔した。
「そ、そのね、カイトへのプレゼントなんだけど…」
誰にも言わないでね!とメイコから聞かされた言葉にレンは衝撃を隠せなかった。
「ハァ↑?!」
どのつら下げて、アイツはメイ姉にそんなこと頼むんだろう、というのが
最初の感想だ。
メイコに「プレゼント何がいい?」と聞かれたカイトは、
メイコの誕生日に買ってあげた下着(疑惑のアレだ。
やっぱりプレゼントだったんだな<めーちゃんハピパ03参照>)姿で
風呂で背中を流して欲しい、と言ったらしい。
なんて厚顔無恥な男!と聞いているレンの方が恥ずかしくなってきた。
「ちょっとメイ姉!まさかOKしたのか?危険すぎるだろ!」
と言うと、メイコは一度言ってしまえばスッキリしたらしく
にっこりと笑ってこう答えた。
「大丈夫よ、下着っていっても普通のやつだし水着と同じじゃない」
(濡れなければなー!)
とレンは心の中で叫んだ。
(ぬ、濡れるっていったって、変なこと想像したんじゃないんだからな!
あくまで風呂だから水がかかるかもって話だぞ!)
と誰にも聞こえない心の叫びに、言い訳までする始末だ。
「メイ姉でも…」
と言いかけたところでミクがメイコを呼びにきた。
譜読みで分からないところがあるらしい。
メイコたちはミクの部屋に行くようだ。
去り際メイコは「ごめんね」と口の動きだけでいい
レンは力なく頷くしかなかった。
(つづく)
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