抜けるように青い空よりも、
美しい人がいるなんて知らなかった。
海を抱いたような碧眼が、舞い散る桜を見つめ少し細められる。
春の陽光を溶かし込んだような金髪が、風に揺れる。
細い指先が、薄紅色の花を捉える。
どんな絵画よりも綺麗で、
どんな宝石よりも可憐で、
どんな女神さまよりも神秘的な瞬間。
吸い込まれるように美しい一瞬。
穢れを知らない真っ白な頬にうっすらと紅がさして───
──そして、僕は初めての恋に落ちた。
その時までは、ちっとも女の子になんて興味はなかったんだ。
でも、もちろん男の子にも興味はなかった。
男のコは恋人より友達としてみていて、自分自身もよく男に生まれたかったなぁ、と思うことが多かった。
だから、お兄ちゃんに言われて渋々した二つ結びは気に入ってなかったし、内心もっとショートにしたいなぁ、なんて思っていた。
「長い方が女の子らしい」って、別にそんなんじゃなくてもいいし。
うん、かっこいい方がいいよね。
どうせなら、アイドルのレンくんみたいにかっこいい男の子に生まれたかった。
メイコお姉ちゃんは「ミク(僕の名前ね)は可愛い系だから、可愛い方が似合うよ」って言うけど、別に嬉しくないし。
と言うか、ぶっちゃけて言うと女の子より男のこの方が友達多いし、仲良くなりやすいから、多分男のこに生まれた方が生きやすかったかもしれない。
女はなんか色々考えてて、性格悪そう、って思ってた。
だからお母さんに勝手に女子校に生かされた時はすっごく怒ったし、散々ごねたな。
受かっちゃったからしょうがなく行ったけど、本当は近くの、友達がいっぱいいる高校に行きたかった。
でも、今思えばそれが運命だったのかもしれない。
おかげで僕はあの人に出会えた。
あの人と恋人になれた。
思い出しても見とれてしまう、本当に美しい人。
きっと僕は、この人のために生まれてきたんだ。
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