＃１０「問診」



僕とマイは、こっそりと僕の部屋に入った

ほんとはミクを騙したことに、少し罪悪感があった

でも、この子が困っているようだったので、こちらを優先してしまった


「さ、ここなら大丈夫だよ。好きなところに座って」


僕がそういうと、彼女は机の椅子に座った

キィという音を椅子がたてる

僕はベッドに座って、彼女の方を見る


「僕の名前はカイトっていうんだ。よろしくね…えっと…とりあえず、マイちゃんでいいかな？」


少女がコクリとうなずく


「マイちゃんはさ、話せないのかな？」


再びコクリとうなずく少女


「昨日のこと……覚えてる？」


僕はもしかしたら、昨日のことがショックで記憶障害、言語障害などになっているのではないかと疑った

しかし、彼女はうなずいた

ということは、少なくても記憶障害はなさそうだ……


「じゃぁさ！もしかして、誰とも話したくないのかな？」


僕は怖がらせないように笑顔でそういった

しかし、これも一種の職業病なのだろうか…問診のようになる

そして、今回はうなずかなかった少女


「うん、なるほどね。」


彼女の答えを、そのまままとめると…

・言葉を話せない
・記憶障害ではない
・話したくないわけではない

ということは、本当は話したいが、何らかの理由で言葉を話すことができないということだ

しかし、これは昨日の出来事と矛盾する

なぜなら、昨日、彼女は言葉を発していたのだから

昨日は緊急時だったから仕方なかったのだろうか……


「あのさ、マイちゃん。僕のこと、覚えてる？」


すると、彼女は首を縦に振った


「そっか。昨日は大変だったよね？ご両親とか…心配してるんじゃないかな？」


彼女が首をかしげた

あれ？昨日のこと、僕のことは覚えてるって………

僕は何か違和感を感じた


「あの……マイちゃんはどこから来たのかな？どっちの方からだけでも教えてくれないかな？」


僕が笑顔でそう話しかけると、彼女はぶるんぶるんと大きく首を横に振った


え？どこから来たのかわからないのか？

それとも、教えたくないということなのか？


「あ、あぁ…ごめんごめん。じゃぁ、無理にはきかないよ。よろしくね、マイちゃん」


僕がそういうと、彼女がにこっとした

彼女が笑った顔を見たのは、この時が初めてだった













夕食時、僕はマイを連れてみんなの待つ食卓に向かった


「あ！マイちゃん！どこにいたの！ね、ね！これつけて！」


ミクに見つかったマイは、半ば無理やりカチューシャとピンをつけられた

マイはぷーっとふくれていた

そして、ピンをはずそうとしていた


「ははは、かわいいじゃないか。マイちゃん。そのままでいいじゃないか、似合ってるよ」


しかし、僕がそういうとマイは嬉しそうにして、とるのをやめた


「え？なんで、カイト兄のいうことはきくの？」


ミクが不服そうにしていた

そして、レンが僕を睨みつけていた

……どうして？