6月ハーモニー 未来音符 そのろく



エスカレーターに乗って3階に着き、喫茶店に入り

「さぁ好きなもの何でも頼んで良いわよ~お姉さんが奢ってあげる!」

先輩が良い笑顔で言っきたので、私はメニューを見ながら

「好きなものって…本当に何でも良いんですか~?」

無感情…正確には殺気を含んだ目と、かなり低い声で尋ねると

「い、良いわよ~そりゃ可愛い後輩に久々に会ったんだし~奢らなくちゃ~」

私の目に先輩は怯えながらでもおっとりとそう言うので

「どれだけ頼んでいいんですか~?ケーキ色々あって悩むんですけど~?」

また無感情で私は言う。

ちなみにこの喫茶店に来るまでずっとこんな感じ

「どれだけ頼んでも良いわよ~好きな物を好きなだけ頼んで良いわよ~」

先輩は私と目を合わせず斜め上を見ている

私は目を合わせない先輩とメニューを交互に見て

「決まりました~」

「あっ決まった?すいませ~ん。注文いいですか~?」

先輩に呼ばれウェイターが来た

「お待たせしました。ご注文をどうぞ」

「私はミルクティーで。ミクは?」

先輩が先に注文して私に聞いてくるので

「私はカフェオレと、このお店のケーキを全部下さい」

「かしこまりました」

「えっ!?マジで!?」

驚かずに了解するウェイターと驚く先輩。

「何ですか~せんぱ~い?何でも頼んでいいって言ったじゃないですか~」

無感情で先輩に聞くと先輩は引きつった笑顔で

「だ、だって全部で10個ぐらいあるんだよ!?1個500円前後だから

全部で5000円は超える値段になるんだよ!?マジで!?」

「え?それのどこが問題なんですか?好きなだけ頼んで良いって先輩さっき

言いましたよね~?まさか今さら駄目って言うんですか?」

サラサラと注文票に書き込むウェイターを尻目に

「よ、夜ご飯とか、た、食べれなくなっちゃうよ?そ、それは駄目でしょ?」

初めて先輩の焦った顔を見た気がする…

「大丈夫ですよ~甘いものは別腹ってヤツですよ~」

私の無感情の迫力に負けた先輩が

「…………わ、分かったわ…い、良いでしょう…ううっ…」

ガクッと落ち込むとウェイターの人が私に

「あっ、すいません。限定のケーキの最後の1個が残ってるんですけど、どうしますか?

お値段が2000円なんですけど…」

先輩がその言葉にガバッと顔を上げて

ミク!それだけは勘弁して!お願い!!

そう目で訴えてくるが

「あぁ…じゃあそれもお願いしま~す」

私はその訴えを無視してウェイターの人にメニューを渡した

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

「うぅぅぅぅ…」

立ち去るウェイターと今度はマジで泣く先輩。

「どうしたんですか先輩?何か辛いことでもあったんですか?」

またも無感情で聞くと

「ミ、ミクの成長が嬉しくって、ついね…」



ケーキやカフェオレが運ばれて来て

「それで、どんな服を買うんですか?もう決まってるんですか?」

2人でケーキを食べながら先輩に聞くと

「おいし~えっ?服?大丈夫よ!ミクに電話もらった水曜の夜に、家にある

ファッション誌を全部 開いて端から端までくまなく見て、どんな服がミクに

合うかず~っと今日まで考えてたのよ!おかげで昨日と今日は3時間しか

寝てないわ!でもそのおかげで最高のコーディネートを提供できると

思うわ!安心して私に任せなさい!」

2000円の限定ケーキの半分を食べながら先輩は言った

「どんだけ気合入れた服を買うつもりなんですか…」

私も10個あるケーキをそれぞれお行儀悪く一口づつ食べている

「もぐもぐ…だって~せっかくの初デートなんでしょ~?気合入れて

いかなくっちゃ!きっと海斗君も気合入れてくると思うから、ミクも

負けてらんないでしょ?ねっ!」

なんの勝負ですか?

「だから…デートじゃないですって…それにあんまり高い服とか選ばれても

私には買えないですよ?お父さんから臨時のお小遣い貰ってるけど、1万円ぐらいの

物までしか買えませんよ?」

すると先輩は鞄から封筒を出し

「それは大丈夫!合唱部のみんなからカンパしてもらったから!」

その封筒を私に見せ付けてきた

「は?合唱部のみんなって…えっ?ハナ先輩やサキ先輩とかですか?

マジで?えっ?なんでみんな出してくれたんですか?」

ケーキを食べる手を止めて尋ねると

「ん~?ミクがデートに行くから服代出して~って言ったらみんな、仕方ないな~

ミクのデートなら…って出してくれたわよ?

私も含めて1人1万だから5万までならOKよ」

「うぇぇぇ!?1人1万!?5万!?そ、それはさすがにマズイですよ!!

だ、だってただ映画に行くだけですよ!?それなのに5万!?」

服代だけで5万!?払いすぎじゃない!?

「そうよ~まぁでもそんなに気にしなくてもいいよ?みんなバイトしてるし、

高校にいた時はあんまり先輩らしいことしてあげられなかったからね…

だから……まぁお詫びの意味も含まれてる…ってことで受け取ってもらえる?」

お詫びと言った先輩の声が、急に真面目な声と目をしていたので

「それは…それは私を合唱部にずっといさせた…ってことと、関係が…」

つい私も真面目に、そして少し聞き辛いことを尋ねた

5月に流香先輩に電話して聞いた本当の流香先輩達の考え。

それは私が1年の時から先輩達は合唱部が無くなってもいいと、本当は私が合唱部を辞めても

よかったと、合唱部を継がなくても良かったと、でも私がいなくなったら寂しいから、

その理由で私をずっと合唱部にいさせたとゆうことを私に秘密にしていたのだ。

流香先輩は言ったらミクは辞めちゃうでしょ?って言ってたけど…

聞いてたら確かに私は辞めた…かもしれない…

だから…だから先輩達はずっと内緒にしていたのだ。

確かに1人になった合唱部は寂しかったけど、先輩達に怒ってるとかは無い。

すると先輩は目を伏せて

「うん…それも…あるし……まぁ色んな意味ね……だから…

だから…今さらだけど、先輩らしいことをさせてくれる?お願い…」

「……で、でも、さすがに5万円は、金額が…たかがデートで…」

好きな相手への協力とかならまだしも、別に海斗先輩のことは…

別に好きってわけじゃ…特に好意を持ってる相手じゃないし…

「お願い…ミク」

でも先輩は引かなかった。なので

「……わ、分かりました…じゃあ、か、買って下さ…い?」

するといつもの笑顔で

「うん!任せない!」

先輩は特には思ってないだろうけど、私は何となく気まずく感じたので

「……でも、本当に無理に高い服とか買ってくれなくていいですからね?

あんまり高い服買って帰ると、お母さんとかに変な誤解されそうですから…

あと、私に無理そうな…冒険した服とかは勘弁してくださいよ?」

先輩はまたケーキを食べながら

「そこは大丈夫。ミクに合った、可愛くてあまり派手過ぎず、でも控えめに

なり過ぎない適度に良い感じめのを買ってあげるから!」

自信たっぷりの先輩の言葉に、私もまたケーキを食べながら

「は、はぁ…まぁよろしくお願いします…」

「頭の先から足のつま先までコーディネートしてあげるわよ~ふっふ~」

先輩はなんだか嬉しそうだ…

「まぁ…程々にで…」

先輩との温度差を感じながら曖昧に返事した

そして話してる間に11個あったケーキがもう無くなりかけている。

先輩は最後のケーキを食べながら

「そういえば明日は映画に行くけど、明後日のサッカー部の応援はどうするの?

やっぱり応援に行くの?」

考えてもいなかったことを聞かれて

「ふえ?明後日ですか?えっ?特に行くとは決めてないんですけど…

海斗先輩にも考えておきますってしか返事してないし…行く約束は…してない」

映画に行くのはまぁいいけど…応援に行くのは…

なんか…そうゆう気があるから行ってる。みたいに思われない?

ミキからは聞いてないけど、おそらく明後日の応援にミキは行くだろう。

だってミキはアキラ君が好きだから、応援に行くのは変でもない。

だからミキは不思議でも何でも無いけど、私が海斗先輩の応援に行くのは…

しかもサッカー場で私は、頑張れー海斗せんぱーい!って言うの?

完璧に海斗先輩の事が好きな子だよ?

おそらく周りには同じ学校の人達がいるだろうから、そう思われるんだろう…

だから、応援に行く事はあまり気乗りしてないのだ。

海斗先輩には前向きに考えておきますとは言ったけど…

家に帰ってから考えたら、結構…恥ずかしくない?と分かったのだ

「でも、海斗君は試合に出るんだよ?見てみたくない?サッカーやってる海斗君は

結構かっこいいと思うんだけどな?」

イタズラっぽく笑う先輩に

「試合に出るって…ま、まぁちょっとは…見たいと…」

演劇部に入ってちょっとして、サトミに海斗先輩って知ってる?と聞いたら、

海斗先輩?知ってるよ?ちょっと有名かな?

普段はおとなしいんだけど、サッカーをやってる時は真面目な顔してるし、

しかもかなり上手いから女の子に人気があります。

その普段のおとなしい感じとのギャップがいい!って言ってる子がいるよ~

とゆうサトミの話しを聞いてから、海斗先輩がサッカーやってる姿を

ちょっと見てみたいかも…と思った事は………ある。

「じゃあいいじゃない?見に行けばいいじゃん?」

当たり前のように先輩は言うが

「だ、だって…おそらくサッカー場には学校の子達がいるんですよ?

その子達の前で海斗先輩を応援したら…そうゆう気があるって思われませんか?

私は別に海斗先輩が好きじゃないのに、そんな風に思われたら…

しかもおそらく、同じクラスにミキって子がいるんですけど、そのミキと

会ったら…ミキは好きな子の応援に行くから不思議じゃないけど、私は…」

ごにょごにょと言っていると

「ん~じゃあ私が一緒に行けばいいんじゃない?ねっ?私と一緒に海斗君を

応援すればいいんじゃない?

私がミクを無理やり応援に連れて行ったって事にすればいいんじゃない?」

先輩が良い案を思いついた、とゆう顔で言ってきた

「えっ?わざわざ先輩も行くんですか?だって大学だってあるのに…」

「ん~?大学は無いよ?ゼミとかも日曜は無いよ?」

「じゃ、じゃあ私サッカーのルールとか分かんないし…」

「別に分からなくてもゴールを決めたぐらいは分かるでしょうよ…

つーか今じゃあって言ったわね?行かない理由を探さないの!」

叱られた…

叱りつけるような目をした先輩から目を逸らし

「だって~~~そこまで海斗先輩と親しくないし~~~それに応援に行ったら

海斗先輩に期待させることになりませんか~?」

「は?なに期待って?」

「だから…俺にもチャンスが~って事です…」

「あぁなるほど…ケーキの最後もらっていい?」

先輩はケーキの最後の一口を私に向けるが、いいです…と手で断った

「もぐもぐ…別にそのぐらいはいいじゃない~応援に行ったから付き合うって

わけじゃないし…もし海斗君の何かが嫌だったら、ちゃんと言えば海斗君は

分かってくれると思うよ?

海斗君は優しいし…まぁ悪い言い方するとヘタレなだけなんだけどね?」

ヘタレ…

「でも先輩の、まぁ好意を?私がちょっと受け入れたことになりませんか?

そしたら海斗先輩が私に、そのぉ……もっと仲良くしようとしてきませんか?

そしたらどんな風にかわせばいいのか分からないんですよ~」

先輩は私をじっと見たあと上を向きながら

「そっか…そうね……ミクは小学校の頃からあんまり男の子と話したことが

無かったのよね…それなのにいきなり好きだ~って言われるのは困るか…」

「はい…サトミとサトミの弟くんのおかげで苦手意識は無くなりましたけど、

男の子と話すときは、今でもほんのちょっとだけ緊張してるんですよ…

しかも海斗先輩は家の前で、告白……してきたから余計に苦手意識が…」

すると先輩は考えながら

「確かにいきなり告白したのは…聞いたときは私も、海斗君やったね!って

思ったけど…あれはいま思えば駄目ね…ごめんね……

ん~じゃあ明後日の応援に関してはミクの好きなようにしたらいいわ。

行かなくてもよし。行ってもよし」

「えっ?いいですか?てっきり、一緒に行くよ!って強引に…」

すると先輩はショックを受けた顔で

「私が強引に連れて行くと思ってるの!?そ、そんなことしないもん…」

今度は本当にショックを受けてる!?

「ご、ごめんなさい!」

「まぁでも、もし行くってなって、でも1人で行くのはちょっと…って思ったら

私が一緒に行ってあげるからね?」

先輩が優しく言ってくれたので

「あっ、はい分かりました…」

「ん…じゃあ服見に行きましょっか?」

先輩は鞄と伝票を持って立ち上がったので

「はい…ご馳走様でした」

私も立ち上がった



そして2人でレジへ行くと

「お茶代だけで…8000円……」

先輩は震えていた

「うぅぅぅ…」

先輩は泣く泣く諭吉さんをウェイターに渡した

「2000円のお釣りです。ありがとうございました~」

「先輩ありがとうございました~」

「もう…ミクと喫茶店に行かない…」

「そんな寂しいこと言わないで下さいよ~」



そのあと先輩とメゾールを回って服と靴を買ってもらった。

そしてお金はまだ余っていたので鞄も買ってもらった。

先輩に買ってもらった服と鞄を見ながら気合入り過ぎじゃ…と不安になった。

そして買い物を済ませ、2人で同じ電車に乗って私達は帰った。

メゾールを出て電車に乗ってからも、ずっと演劇部に入っての事を先輩に話した。

先輩はそれを、良かったね…と嬉しそうに聞いてくれていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

6月ハーモニー 未来音符 その6

6月ハーモニー 未来音符 その6です

ルカはミクが可愛くてしかたない。

閲覧数:75

投稿日:2012/08/30 00:46:27

文字数:5,793文字

カテゴリ:小説

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