暗雲立ち込める地球。物陰に潜む一組の兄妹。
届かぬ月の光の下、二度と同じ道を歩まぬために、選び抜きなさい人類が行く道。
「なあリン、昔の人は、こんな空のことをねずみ色の空とかいったんだって…」
「ふーん。でもにぃちゃん。ねずみって何だろうね?」
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人類のアンドロイド化が始まって100年。僕達を含め旧人類(非アンドロイド)はほんの少しになってしまった。
痛みを知らない新人類(アンドロイド)達が、自らに施された平和のプログラムを捻じ曲げ、僕達旧人類に対して戦争を始めてしまったのは二十年前。自らの体を武器へと変えて戦う新人類に対して僕達はなす術がなく、旧人類は今や絶滅の危機に瀕していた。十四年前に生まれた僕ら双子の後に子どもが生まれたという話も聞かない。十五年前に新人類が生命反応を探知する装置を開発し、結婚適齢期まで生きられる旧人類が激減したからだろう。僕達がここまで生きてこれたのも奇跡としか言いようが無い。
僕は今リンと二人で行動している。三日前、その探知装置で僕達は新人類に見つかった。そのときに僕達の父さんと従兄の兄さんが僕らをかばって殺されてしまった。
「お前らだけは生きるんだ…」
耳の奥に残る父さんの言葉と従兄に渡された一冊の本。三日間新人類の手を逃れるのに必死でじっくりと眺める暇がなかったこの本。ほとんどアンドロイドが来ない安全そうな建物の陰で、ほとんど届かない月明かりを頼りにリンと開いてみる。
「なあリン、昔の人は、こんな空のことをねずみ色の空とかいったんだって…」
「ふーん。でもにぃちゃん。ねずみって何だろうね?」
どうやらこの本は、昔の地球の文化や科学について書かれているようだ。物事の表現の仕方やあの新人類の造り方も載っていた。この本の著者はどうやら人類のアンドロイド化に反対した、一人の科学者のようだ。血も涙も心も無いアンドロイドによって、すばらしき文化や技術が失われるのを憂いて本として後世に残したらしい。
「ねえ、にぃちゃん。この本って代々旧人類に伝えられてきた本なんだよね。」
「う~ん、そうだと思うけど。」
従兄の兄さんはそう言って僕達に本を渡した。それに、この本は何世代も手渡されてきたようなくたびれ方で、表紙の文字は読みにくくなっている。
「それにしては、重要なことが書かれてないよね。」
「う~ん…」
確かに…。そう言いながら僕はパラパラとページをめくっていった。『土偶の作り方』、『落語の盛衰』、『正しいサーベルの構え方』、『浮遊車の大量生産』、『時空軌道インターフェイス』…
「ん?」
僕はこの飛び切り擦り切れて、様々な書き込みがある『時空軌道インターフェイス』のページで止まっていた。
「どうしたの?にぃちゃん?」
リンが僕の様子を見て聞いてくる。
僕はそんなリンを無視して、そのページを凝視している。
「にぃーちゃん?」
反応がない僕に痺れを切らして、リンも本を覗き込んだ。
そして二人で読み出した。
―『時空軌道インターフェイス』―
十年前(今から約50年前)一人の少年アンドロイドが暴走し、アンドロイド一体を破壊する事故があった。彼はどうやらアンドロイド化手術でも心を捨てられなかったらしい。この少年はこの罪により、無理やり兵器へと転用され現在もロボット兵として酷使されている。また、被害者の彼のガールフレンドは、再起不能で破棄された。
私はこの事故によってアンドロイド化政策が間違いであると確信した。そして、未来への希望を創ることを決意した。それが『時空軌道インターフェイス』である。これは古に禁忌とされた理論を使った装置で、起動すると装置内に入った対象の人間の意思以外の存在全てを破壊する。そして、(私の考えが正しければ)歴史のベクトル上に搭乗者となった人間をロードし、対象の人間の意思で時空間から歴史の間違いを正し、ある地点からの歴史を別の方向に導く装置である。いうなれば歴史を新たに創る装置である。
しかし、当然ながらこの装置は使い方を誤れば大変危険なものである。よって私はこの装置を時が来るまで封印することにした。場所はかつての国連本部安全保障理事会の控え室の中である。しかし、例えこの装置を見つけられてもこれを起動できるのは、強い意志を持った生身の人間のみだ!願わくはこれを使うときが来ないことを…
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本はここで終わっていた。読み終わった僕とリンは互いに顔を見合わせた。
終末史episode2―一縷の願い①―
自己解釈二次創作第二弾!同じく囚人Pさんの一縷の願い(http://piapro.jp/t/xZWn)、(http://www.nicovideo.jp/watch/sm8423183
)です。
なんか説明ばっかですみません。レン視点。
続きはこちら(http://piapro.jp/t/iT00)
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