×××

 廊下に出ると、カイトの部屋のドアが少しが開いていた。そういえば風邪を引いたんだっけな、と申し訳程度に思い出す。昨日は驚いた。カイトが風邪を引くとは想像したことも無かったから。バカは風邪を引かないと思っていたのだが。
 ――バカが風邪を引くとどうなるのだろう。ちょっとした好奇心に駆られて部屋覗いた。
 そして眉を盛大にしかめた。
 なぜめい姉が寝ているところにバカがいるのだ。
 憤然としてベッド脇に立つ。布団が斜めにずれていて、その中でめい姉がすやすやと寝ていた。その隣にバカも剥がれかかった熱さましシートを額にくっつけて、さも嬉しそうに寝ていた。カーテンからもれる朝日が、二人を柔らかく包んでいる。二人の距離は微妙に開いている。それでも二人とも満足そうだった。
 ………。
 諦めたようにため息をついて下を見た。
 そこに落ちている長いものをのを見つけて一つ思い立つ。
 まず布団をずらして細工した。それからずれていた布団をめい姉にかなり多めにかけなおす。よし出来た、と一歩下がって満足げに頷いた。
 これでいい。

 ×××

 目が覚めるとメイコの顔がすぐそばにあった。パニックに落ちかけたけど、昨日のことを思い出した。そうだ、メイコに許可をもらって(←ここ重要)一緒に寝ているんだった。昨日は幸せだった。天国だった。同時に地獄でもあったけど、乗り越えた今となってはどうでもいいことだ。メイコと一緒のベッドだなんてなんて素敵なんだろう。メイコに近寄ろうとして、柔らかいものにぶつかった。……何で抱き枕が間に入っているのだろうか。
 熱は随分下がっているようで、少し鈍い痛みが頭の端に残っているだけだった。昨日よりかは大分ましだ。これだったら今日も仕事は大丈夫そうだ。――仕事! 仕事で思い出して飛び起きて目覚ましを見る。起きなくてはいけない時間よりかなり前だった。安心のため息が漏れる。
 夜付きっ切りで看病してくれたいとしい人は、隣で静かに寝息を立てている。幸せそうなその寝顔にかかる髪一房を耳にかけて、そのまま静かにメイコの髪を梳く。この人を本当に好きだと思った。心から思った。
 ふぁっとメイコがむずかってきゅっとその暮れ否眉をひそめて、それから目を開けた。まぶしそうに目を潜めたまま僕を数秒見つめて、
 「おはよう、めーちゃん」
 「おはよう、カイト。………って、えーーーー!!」

 ×××

 「なんでカイトがここにいるのよってかなんで私いっしょに寝てたわけというかここあなたの部屋じゃないのなんで一緒にいるのよなんで――」
 カイ兄の寝室を覗くと、めい姉が真っ赤になりながらカイ兄の背中をばしばし叩いていた。叩かれているカイ兄はなぜか楽しそうに笑っている。たたかれているから楽しいはずないのに。変なの。
 ……まぁいっか。
 そういえば昨日カイ兄、風邪引いたんだった。変態は風邪を引かないのよってルカが言っていたけど、カイ兄で風邪を引くなんて驚いた。まあ、今見たところだと完全復活しているみたい。風邪もカイ兄の中では長居出来なかったのかな。わからなくも無いけど。
 あーあー、今日の朝ご飯なんだろなー。
 あ、それからロードローラーの整備をしなくちゃ。

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【家族愛】微熱とカタツムリ 5/5 完【カイメイ】

こういう落ちです。

こちらのめーちゃんは、我が家では大分素直なめーちゃんです。
基本は大人めーちゃん。

元は、「赤メガネと微熱」というタイトルで、赤メガネのめーちゃんを書こうと思っていたのですが、うまくからめられなかったので、排除。
カイトくんはよく頑張りました。
誰もほめませんが。

家族みんなできゃっきゃしているのが好きです。
家族みんなめーちゃんが大好きで、兄さんのことはめんどくさいと思っています。

閲覧数:381

投稿日:2012/02/18 23:58:19

文字数:1,345文字

カテゴリ:小説

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