[1A]
「あの・・・ですからそろそろ僕は帰りますので本を返してくれますか？」　僕は尋ねた
そして　はにかんで手を差し出してみるも　寡黙な男は嫌そうに眉を顰めた
胡座をかきながら　読書する姿勢には　数ミリも動かないと言わんばかりの気魄が有る
そして　足元のもう一冊の本は　寡黙な男はもう既に読み終えていた

[1B]
なかなか返事がないことに　少々苛ついた僕は
男に近寄って　どこまで読み終えているか聞いた
「織田信長の生涯（下）・・・の今どのへんですか？」
そう言って　本を覗きこむも　男は嫌そうに体勢を変えた

[1C]
少しの沈黙が　二人の空気を支配する
そろそろ　ここを出ないと帰れなくなってしまう
時間ばかり気になってそわそわする僕を横目に
溜息を一つ吐きやがった

[2A]
「あの・・・ですから今すぐ出ないと間に合わないので本を返してくれますか？」　再度尋ねた
そして　足元の上巻を拾い上げ　さり気なく　"これみよがし"　帰宅モードへと促した

[2B]
焦りと苛立ちが　悪意を揺り起こす
伝記のシナリオは　ノンフィクション的　事件は明白
謀反の推理は　乱歩も驚愕　寺変(じへん)は迷宮
とうとう耐えかねず　僕の喉が結末を吐き出す　犯人は明智だ!!!

[2C]
「それ最後に死ぬんですよ。裏切られて本能寺で。」
「え、何？」男は戸惑いの声　僕を凝視　戦慄の目で
「明智が裏切っちゃうんです。」　これが止めの言葉だった
「え？ちょ、な、え？マジで？そんなんどこに書いてあった？」

[Bridge]
O M G holy shit Fu*k!!!!!!!!
夢の続きを読ませろ!!!

[D]
『織田信長の生涯（下）』　歴史に基づきし書　過去の伝
遍く知られた事は皆習う　知らぬ者への教示は躊躇わぬ

つい今言われた一言　削除できたらどれほど気楽か
知りたくない情報は皆嫌い　"寡聞の権利"で保護を願いたい

[LastC]
「最後に死ぬんですよ。裏切られて本能寺で。」
男の推理は深く迷宮入り　乱歩も狂乱
強引な帰宅動機を　僕はネタバレという形で
溜息のつもりで吐いてしまった
ゴ・メ・ン・ネ

[Ending]
ネタバレし者に神の裁きを!!!
ネタバレし者に神の裁きを!!!
ネタバレし者に神の裁きを!!!
ネタバレし者に神の裁きを!!!

「もー何で今それ言っちゃうかなあ!!!生きる目的無くなったよ!!!」
歴史は二度と変えられないのに　外の景色がふと気になった

「もうどうすりゃいいんだよ!!!お前のせいだぞ、もう!!!おい未来人!!!」
「いやあもう無理でしょ。ここ燃え始めてますし明智来てますし。」