コッコッコッ…
「フンッ…だから私があの時殺してやるといったのに。」
僕は…いや『鏡音レン』は眼を開ける。
目の前には一人の男…
僕は彼に見覚えは無かったが、身体は…『鏡音レン』は彼を知っているようだ。怯えているのが分かる。
「海の藻屑になっていれば、彼女の死に目に会わずに済んだというのに…」
僕は、膝からガクリとくず折れる。そして、動かなくなった少女の最期の温もりを感じている。
「オイ!そこに居るんだろ?人のプライバシーにズカズカと入ってくる無遠慮なゲストさんよぅ!」
男は今、少女のことしか見ていない『鏡音レン』に向かって話している。しかし、その話の内容は、まるで僕に話しかけているようだ。
「俺が誰か気になるか?…考えてみろ、お前がここまで来たって事は既に俺に会ったことがあるはずだぜ?まあ、そんなことはどうでもいい。少なくとも俺には、な。
さあ、考えてみろ?このパーティーで大量殺戮をして、ここにいる哀れな探偵の『思い人を振り向かせたいという』願いを聞いてやり、犯人役をやらせてやった心の広い殺人鬼は誰か?」
間違いない。奴は僕が、50年後の世界の鏡音レンがここにいるとわかって話しかけている。何故だ?
いや、それよりも今僕はこの半世紀様々な人に追われ続けた極悪な犯人の直ぐ近くにいる。せめて顔だけでもしっかり見ておかなくては…
しかし、身体はあくまで『鏡音レン』の物。僕がどれだけあがこうと、背後に迫る影を見ようとしなかった。
「オイオイ、マジかよ。まだピンと来ないのか?俺は待つのはあんまり好きじゃないんだ。期限を付けるぜ。そこの片腕の探偵が悲しみに一区切りをつけるまでだ。それまでにピンと来なければ、それまでだぜ!」
そう言って男は黙る。僕は必死に頭の中で考えた。身体が動かない以上なんとか今まで与えられたヒントだけでこのナゾを解かなければ…
見覚えの無い男…犯人はパーティーの参加者ではないのか?いや待て、僕はそもそも参加者の顔を知らない。名前や死因は全て『鏡音レン』の回想から知ったことだ。
『鏡音レン』はどうやらこの男と取引をしていたようだ…自分が犯人役を買って出ると…そして、それに気づき言い当ててしまったところでこの床に横たわるリンという少女、今は『鏡音レン』の視界が滲んでいるためはっきりと顔は見えないが…は殺された。おそらくこの男の仕業だろう…
しかし、肝心の男は誰だ?
駄目だ。さっぱりわからない…
そういえば、ここまで来たなら既に俺に会ったことがあるはずだと男は言った…誰だ?俺が今までに会った奴…そんなに多くは無いはz…
カランッ…
僕がそこまで考えたところで、レンの身体が動いた。
バッ…
男も気づいたようだ。
「残念だ。タイムアップのようだ。」
『鏡音レン』は、少女の手に握られていたナイフを拾うと一気に男に向かっていき、奴にナイフを突き立てた。しかし、奴のほうが一枚上手だった。哀れな探偵はカウンターを喰らい、逆に吹き飛ばされた。ピアノに彼の片腕がぶつかり音を奏でたとき、既に彼に息は無かった。
同時に僕の意識も薄らいで行き、襟首を後ろに引っ張られるような気がした。
『鏡音レン』の瞳は濡れており、犯人の姿は最後までぼやけたままだった。
episode3 fin...
犯人の物語―episode3 ナゾカケ③―
ひなた春花さん(http://piapro.jp/haruhana)の・ナゾカケ(http://piapro.jp/t/WzK5)を小説にさせて頂きました
今回のお話までで、曲を元にした部分は終わりになります。(はっきり言うと、ナゾカケ②の時点までで歌詞に沿った話運びは終わっていたのですが…)
エピローグはライトワールド全開で行く予定ですのであしからずm(_ _)m
続きはこちら(http://piapro.jp/t/WfyP)
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