あの人は、いつでも輝いて見えた。
そういうとみんなは笑う。そんなことない、と言って。顔だけだよ、って。青いのがめずらしかったんじゃないの?って。
でもあの馬鹿さ加減も、ヘタレさ加減も、運の悪さ加減も。
何気ない優しさも。
全部、あたしにはうらやましくて、それと同時に輝いてた。

あたしは彼とはタイプが違うから、コラボすることはほとんどなかった。全員で歌うようなときしか。
同じタイプでも、彼とコラボすることの多かったがくぽさんがうらやましい。

「ねーがくぽさーん…」

今日、寮に戻った後、あたしは自分の部屋に戻ろうとするがくぽさんを捕まえて聞いた。

「お?どした?」
「ねーがくぽさんはどうしてあんなにカイトさんとコラボがあるの?」

ため息まじりにがくぽさんに聞くと、がくぽさんは苦笑いした。

「はいはい。愚痴は聞いてやるから部屋来いよ。」

あたしはいつものごとくがくぽさんの部屋に上がり込んだ。

「で、今度はどんな気分なんだ。カイトのことか、また。」

あたしはこくっと頷いた。差し出されたジュースを飲む。…がくぽさんはこういうところが素早い。

「明日で…8人での収録終わっちゃうんだもん…そしたらまた…カイトさんが…」
「…遊びにいけば?」

出所が違うと寮も違う。寮に帰れるのは夜だけなので、なかなか違う寮に、しかも男の人の部屋に行く勇気はない。

「無理無理無理!絶対無理!」

慌てて首を横に振ると、がくぽさんは頷いた。

「まぁグミはそうだろうね。リンとかメイコさんのような図々しさはないからなぁ…俺の部屋に入る分には躊躇しないのになぁ…」
「だってがくぽさんは兄弟同然だもん!昔から一緒にいたんだもん!でもカイトさんはっ…」

カイトさんのことは全然知らない。みんなで遊ぶときに話すだけ。それだけなのに惚れてしまって、…知ってる人にはあきれられている。

「あーまぁ…他人の男に緊張するのはわかるけどなぁ…なんであいつなの?ところで。」
「…何度も言ってるでしょ?カイトさんは何か知らないけどキラキラして見えるの!なんでかわかったら苦労しないよっ!」

そう言って枕を力いっぱい投げつけると、がくぽさんはもろに顔面にくらって後ろによろけた。

「…これ、俺の枕。ここ、俺の部屋。お前、当てたの俺。…何か一言は?」
「ごめんなさい!」

あたしは頭を下げた。

「よろしい。」

がくぽさんは頷く。…あぁ、なんであたしこの人に惚れなかったかなぁ。そしたら近いし意外と優しいし察しがいいし楽なのに。カイトさんなんか、遠いし鈍感だし、まぁ優しいけどアタックするの大変だし。…でも好き、とか思ってしまうあたしは重症だ。

「で、なんで俺がカイトとコラボがあるかって?」

あたしは頷いた。そうだった。元の話はそれだった。

「それは、俺がマスターに言ったからだよ。」
「…へ?」
「俺がマスターに言ったの。向こうの人達ともコラボさせてくださいって。現にお前、今リンとかルカさんとかとのコラボ増えてるだろ?それはあいつらとお前の年齢が近いから。俺はカイトと年齢が近いし性別が同じだからカイトなの。」

あたしはへえ、と頷いた。…それって。

「年齢遠いし性別も全然違うあたしはダメってこと!?」

また枕を振り下ろそうとすると今度は止められた。…またやっちゃうとこだった。がくぽさんにはどうしても甘えてしまう。

「そうじゃなくて。…マスターに言えば?ってこと。ミクとかは年齢遠いけどコラボしてんだろ。マスター意外と柔軟性あるぜ。」

あたしはがくぽさんをまじまじと見た。…この人やっぱりいい人だ。

「ありがとうがくぽさんっ!」

あたしはがくぽさんに抱きついた。がくぽさんは背中を軽くさする。

「あとお前明日こそはカイトと話せよ?」
「うんっ!」

今ならがくぽさんが何を言ってても聞ける。小言でも。

「ほんとありがと!おやすみ!」

そう言ってあたしは自分の部屋に駆け戻った。


次の日、あたしは収録が終わったときにマスターのところへ向かった。

「マスターっ!」
「おーどうしたどうした。グミちゃんが俺に話しかけてくるなんて珍しいね。」
「お願いがあるんです!」

そう言うとマスターはいよいよ驚いた。

「何があった?あの図々しい人達ならともかく。」
「図々しい人達って…」
「まぁそれはさておき。何がお願いなんだ?」

あたしは深呼吸した。

「カイトさんとコラボしたいんです!」

マスターの目が丸くなった。

「…驚いた。グミちゃんがそんなこと言うなんて。でも確かグミちゃんってカイトのこと好きなんじゃ?」
「…え!?なんで知ってるんですか!?」
「いや…情報は入ってくるから。」

マスターは苦笑いした。

「そういう理由ならダメだよ?好きだからって。」

あたしは唇を噛んだ。ここで引き下がりたくはない。カイトさんとコラボしたい。

「お願いです!カイトさんとコラボしたいんです!まだ一回もしたことないじゃないですか!」
「だから。キミはプロなんだって。好きとか嫌いとかで仕事選ばないし。大体恋ってさぁ、そんな一時の感情で。」
「…恋が何が悪いんですかっ!」

がくぽさんにするように、つい反射で叫ぶ。…あ、ヤバい。でもマスターは驚くばかりだった。それをいいことに、畳み掛ける。

「マスター、あたしに色気が必要って言うでしょう!?恋以外に色気を出せる要素ってありますか!?いい経験になります!ていうか、してみせます!」

早口で言い切ると、マスターは苦笑した。

「そんなにか。…じゃあいいよ。グミちゃんの頼みだしね。あのバカイトも、今ちょうど仕事なかったし。…ただし。」
「はい!」
「仕事がおろそかになるようだったら次はないと思いな。」

あたしは頷いた。頬が緩むのを止められなかった。

「ありがとうございます!」

そう言って頭を下げると、マスターは笑った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

デュエット ~GUMI side~ zero

GUMIがKAITOに恋するお話。序章のようなものです。
何かGUMIとKAITOの恋愛話ってあんまりないなぁ~と思って、書いたら面白そうかな、と突発的に書いてしまいました。
似たような話が過去にあったらすみません汗
あと登場人物のキャラのイメージとか丸無視して書いてる場面が多々あります汗

あ、一応補足。
ここに出てくるキャラはVOCALOIDではなく一応歌手の人間ってことで…

閲覧数:142

投稿日:2012/08/31 07:22:42

文字数:2,458文字

カテゴリ:小説

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