ことが終わったとき、グミはベッドの中で…俺の腕の中で、疲れ果てたように目を閉じた。
…そりゃ、そうか。
「…痛かった…?」
ふと心配になってそう聞くと、グミはふわっと笑った。
「うん。でも平気だよ?」
グミも俺にだいぶ遠慮しなくなり、名前で呼んでもらえるようになってから久しい頃、俺とグミは…そういうことになった。
寮にいたら周りの人の邪魔がいつ入るかわからないということで、二人ともレコーディングが一段落ついたころにホテルの部屋を取った。
「その…ごめんね?」
「ううん。しょうがないよ。あたしが初めてだったってだけだから…多分、慣れれば平気。」
頭を撫でていると、グミはうとうとしはじめ、そのまま目を閉じた。すぐに寝息が聞こえる。
やっぱり、もう少し先の方がよかったかな。
でもこの細くて折れそうな体は、今日本当に俺のものになったわけで。
あまりに愛おしくて、俺はずっとグミをながめていた。
目を覚ますと、横でカイトが幸せそうに眠っていて、あたしは現実に引き戻された。
…その、要するに、昨日、しちゃった、ってことで。
誰も見ていないのに頬が熱を帯びてくる。あたしはとりあえずシャワーを浴び、服を着替えた。
「んー…おはよ…」
ギリギリ、カイトが起き出す前に支度を終える。
「…おはよ…」
意識しちゃってまともに顔をカイトの方に向けられない。
でもカイトの方も赤面しているのがわかった。
「えと…俺、シャワー浴びてくるから…」
「あ、うん、わかった、荷物の整理しとく。」
会話が、たどたどしいにもほどがある。
でも頬の火照りがいっこうに収まらない。
カイトは、…初めてじゃないんだろうな、多分。
なんとなく腹立たしくなって、あたしはソファーに寝そべった。ベッドは意識しちゃうからさける。
恥ずかしいんだか妬いてるんだか。
俺が戻ってくると、グミは不機嫌そうにソファーに寝転がっていて、俺はぎょっとした。
「…どうしたの?」
「なんか…なんか悔しい。」
一切こっちに顔を向けないのは恥ずかしいだけなんだろうが、悔しいって何が。
「何が?」
「…カイトは初めてじゃないんでしょ?」
俺は言葉を詰まらせた。
一時期、友達に合わせて女遊びをしていた時期があった。
「あー…うん…まぁ…」
「それがむかつく。…あたし以外の人ともしたんでしょ?昔。」
声がすっごい不貞腐れていて、俺は吹き出した。
なんて可愛い理由。
「ごめんごめん。そういうことね。」
「そういうことって…」
「大丈夫だよ。別に好きじゃなかったし。」
「…でも、なんか、やだ。」
完全、だだっ子みたいにふくれているグミの頭を撫でると、グミの頬がだんだん紅く染まってきて、さらに膨らんできた。
何度かつついてみる。柔らかくて、愛しい。
「覚えてる?俺が初めて好きになったのはグミなんだってば。」
グミの膨らんだ頬がだんだん小さくなっていく。真っ赤に染まった顔をこっちに向けた。
「ほんと?」
「ほんと。」
「…じゃあ別に、許す。」
グミはすぐに顔をどこか別の方向に向けた。
俺がその頬に軽くキスをすると、グミはそのままソファーに沈み込んだ。
全く顔があわせられず、会話もほとんどできないまま帰り道を駅まで歩く。
だって。だって、無理でしょ。おまけにあんな恥ずかしいこと言っちゃったし。
でもこのまま帰って仕事へ向かうのはなんか寂しくて、あたしが結構しゅんとしていると、カイトは笑った。
「どっか行く?」
「…どっか?」
「どこでもいいよ。」
一番まともに感情が伝わりそうなのは、やっぱり、歌だろうな。
「カラオケ…?」
「了解。」
カイトが最寄りのカラオケ店を探して、入る。
「マスター、ちょっと俺らカラオケ店寄ってきます。…はい。喉ですか?二日で治しますって。…ドリンクバー頼みます。…あ、すんません。」
マスターに電話をかけて了解を取ってから、あたしとカイトは部屋に入った。
そういえば、ミクとかリンとか、昔は一緒にカラオケ行ってたのに最近仕事が忙しくて行ってないな。
今度行こう、と心にこっそり誓ってから、あたしは歌い出した。最初は自分の曲。
自分の歌がカラオケに入っていることにある種の感動を覚える。
そんなことを言うと、カイトは笑った。
「そうそう。俺的には違和感のが強いんだけどね。これでさ、自分の曲歌っても採点で満点取れないんだから不思議だよな。」
「確かに。何が基準なんだろうね?」
ありったけの好きを詰め込んだような歌が多いあたしは、いくつか特に好きなのを歌うと、カイトにその想いは伝わったらしく、カイトは少し照れながら笑った。
一通り歌い終わり、もう時間も時間なので店を出ると、なんとなく美味しそうなアイス店を見つけた。
アイスに目が無い俺は、その店に引きずられるように歩いていく。
「入る?」
「うん。」
中に入った瞬間、飛び込んできたのはキャロットアイスの広告で。
「グミが一番好きな食べ物って、人参だっけ?」
「…うん。」
俺とグミは吹き出した。
絶妙なタイミングで、キャロットアイス。
「すいません、キャロットアイス二つ下さい。」
俺が注文すると、店員さんははい、と笑っておまけに小さいスクープを一つずつつけてくれた。
キャロットアイスは、ほんのり甘くて、人参の美味しいところをアイスの冷たくて心地いい食感に足したような味だった。
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