世界は無情です。

そのときの私は、凄くふさぎこんでいました。
まるで、今のララみたいに。忘れたい何かを忘れようと、必死でした。

この研究所は鬼だ。悪魔だ…。


やめて、ヤメテ…。
これ以上、ルイラとロイルをきづつけないで…。





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「リン、どうしたの?」

「…なんでもないよ。ルイラ」

私の大親友は、亜種だった。
鏡音リンの亜種で、幼さを残した少女だった。
鏡音リンは設定だと14歳。でも、このルイラは8歳前後の姿をしている。
実験時のバグらしい。そのせいで、言動も少し幼い。
彼女の双子の弟のロイルもそうだ。
ロイルは今頃、私の片割れであるレンと遊んで居る頃だろう。

「リン、すこしぼうっとしてる」

「そうかな?最近、此処に居る子も減った気がしてね…」

「…あのこと、このこ…あと、あそこにいたこもいない」

「…だね、皆、何処に行っちゃったんだろうね…」

本当は分かってた。実験で消えたんだ。
この実験を主にやっているのはセリー・ミオエインという女性の班。
この実験棟と呼ばれる建物には、彼女に関する研究員しか来ない。
恐らく、所長には内密にやっているのでしょう。

「ねえ、リン。どうしてここにいるこたちはへっていくの?いつか、ルイラもリンも、レンもロイルもいなくなっちゃうの?」

「……大丈夫、きっと、私も、レンも、ルイラもロイルも…いなくならないよ…」

この子には、リンだった頃の記憶は無い。ロイルにも、レンだった頃の記憶は無い。
私は、この子がとても大切だった。
この子がいなかったら、今の私はいなかったから。

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『ねえ、其処で何してるの?』

『何って…うずくまってる』

『…どうして?』

『…どうせ、皆消えて行くから。実験に巻き込まれて…亜種になっても実験台にされて…』

『…でもさ、人生…いや、リン達は機械だから、ロボ生楽しまないと損だよ!』

『…っぷくく…』

『な、何がおかしいの!?』

『だって…ロボ生って…ぷくく…』

『やっと、笑ったね。リン、貴方もリンだよね?』

『…うん』

『呼び分けが何とか出来ないものか…』

『でも、お互いで呼ぶときには問題ないよね?』

『リンは自分の事リンって言うからごっちゃになるの!』

『…確かにね』

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それが、リンだった頃のルイラとの出会い。
今のこの子は、そんな事覚えてないだろうけど。
実験に怯えて誰とも接する事も出来ずに居た私は、この子に出会えた事で笑顔を教えてもらった。
この子が実験でこの姿になった時も、私の事をうろ覚えだけど、覚えていてくれた。
リンって呼んでくれた。自分の事は、忘れていたけれども。

「リン、こわい、こわいよ…」

「大丈夫…ルイラの事は私が守るから」

「…ありがとう、リン…」

「実験の時間だ、R0407、R0906。来い」

その番号は、私とルイラの番号だった。
ルイラは、少し震えている。

「…リン…」

「私がついてるから、大丈夫…大丈夫…」

私達は、研究員に連れられて実験室に来た。
何回もみるこの部屋。
なれた作業が何度も何度も繰り返される。



はずだったのに…。



「………キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!」

「ルイラっ!」

今日は違った。
最も恐れていた事が、起こってしまった。

「ルイラ、ルイラっ!」

私は、ルイラがいる装置の扉を叩く。

「おい、勝手な事はするな!」

「やめて、やめて…。これ以上ルイラを傷つけないで!!!」

「…だい、じょうぶ…だよ…。リン…」

「ルイラ…?」

「…思い…だした…ルイラが…リンだた時の…こと…」

実験の影響でメモリーが全て引き出された?
でも、この実験はこのまま行ったら、ルイラが、死んでしまう…。
亜種になるというのは、途中経過でしかない。
結局は、皆消えてしまうんだ。
全員、日に日に、ひとりずつ消えて行くんだ。

「…ありがとう…リン…。これで…ルイラも、ロイルのところに…」

「…!?ルイラ、ロイルが…どうしたって…」

「…わかるの…ロイルが、もう消えたんだって…」

「…そんな、そんな…ルイラ!やめて!消えないで!!!」

「じゃあね…リン…」

「ルイラ…」

消えてく、ルイラの全てが、記憶が、体が、その瞳が…。あの、笑顔が…。









『私の、最初で最後の大親友…』
















「ルイラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァッァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」









次の日、私とレンは、あの日にあったことを全てお互い話した。

ルイラもロイルも、もういない。




その後に会った少女は、ルイラにとても似ていた。



今度こそ、失わない。




そう、決めたんだ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

消えた少女と鏡音リン

誰の話かって言うのは、銅音ルンちゃんの昔の話ですね。
まだ鏡音リンだった頃の話。

最後の会った少女というのは、後のララだったりそうでなかったり?

閲覧数:200

投稿日:2012/11/24 17:43:37

文字数:2,192文字

カテゴリ:小説

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