「ただいま~」
僕は裏口から家の中へと入った。
抜き足、差し足、忍び足…
僕はサンタさんに見つからないようにこそこそと歩く。そんなことをしても、一日遊び呆けていたのは事実なのだから怒られるのは変わらないのだけど、本能がそうさせているのだ。
そうして玄関まで歩いていって、靴とボールを片付ける。でもおかしなことが1つ…裏口から玄関まで1つも明かりのついている部屋がない。暗闇の中で僕は考える。
サンタさん留守なのかなぁ?
「…」
僕は無言でニヤリと笑う。そうなれば起こられる心配はない!いつも夜中にサンタさんが出かけるときには、僕の晩御飯を用意して行ってくれてるはずだから今日はそれを食べてゆっくりできる!!
僕はニヤニヤが止まらないまま食卓に向かった。
やっぱりここも真っ暗だ。僕は明かりをつけて、机の上を見る。しかし、そこにあったのは僕の予想とは違う物だった。
豪華な食事はなく、代わりに紙が1枚置かれているだけだったのだ。
________________________________________
レミーへ
私は今晩は急用が出来たから帰れないの。
それと、仕事をお願いしたいの、下に書いた似顔絵の人が今晩のターゲットよ。
この人がルロード八丁目を午前2時ごろに通過予定だからそこを狙うのよ。
________________________________________
はぁ~。今日もお仕事か…一日休みが空いちゃうとなんか調子狂っちゃうよね。
僕はサンタさんの置手紙を眺めながら、心の中で呟く。
手紙の続きには不細工な男の絵と(たぶんサンタさんが描いたから不細工なんだろうと僕は思った。)追伸が書いてあった。
________________________________________
追伸
勉強をサボるような「悪い子」には「お仕置き」です。
晩御飯は抜き!
________________________________________
「えぇぇ~~~~~」
今度は不満を口に出した。僕腹ペコなのに…
僕はちらりと戸棚を見た。中には朝の残りのパンが入っている。普段は勝手に戸棚を物色しちゃいけないんだけど…今日はサンタさんがいないからいいよね。
僕はサンタさんに内緒でパンを取り出し、バレないように籠の中に空間を作りながら2、3個パンをほお張った。
腹が減っては戦は出来ぬってね。
食べ終わると僕はいつもの衣装に着替えて家を出た。
今晩は満月だった…
________________________________________
午前1時55分過ぎ、僕はルロード八丁目に着いた。すかさず僕は裏路地の陰に身を隠す。
ふ~、結構ギリギリになっちゃた。僕は額の汗を手の甲で拭う。パンをゆっくり食べ過ぎたかなぁ?
あと3分。向かいの店の外壁にかかった時計を確認して僕はナイフをギュッと握り締める。そろそろ来てもおかしくないはず…
ザンッ…
突如、空気を切り裂くような破裂音が通りを覆った。その出所は容赦なく夜の闇を赤く染めていった。
あれ?なんでだろう?胸が痛い…痛いよ…
どうして僕の手は赤いの?まだ獲物を刺してないのに…
僕の手から『Ⅴ』と刻まれたナイフが滑り落ち、カラン、カランと音を立てる。
僕、死ぬのかな?
そう考えた途端、背中が地面に触れるのを感じた。
死にたくないよ…僕、まだサンタさんに会ってないのに…サンタさんの料理、食べてないのに…
死にたくないよ、死にたくないよ、死にたくないよ!
ねえ、今度からちゃんと勉強もするから…サンタさんもう一度僕の頭を撫でてよ…
はっきり見えなくなっていく僕の眼の前が暗くなった。誰かが僕の前に立っている?僕は嬉しくなって両手をその影に向かってあげた。サンタさん…来てくれたんだ…
でも、すぐに僕は手を下ろした。彼女はサンタさんではない。こちらに向けられた銃身には『Ⅷ』の文字。一度だけ、サンタさんから話しを聞いたことがある。
『八番目の狙撃手』
何で『ペールノエル』の一員が僕を……ううん、もうどうだっていいやなんだかとっても眠いんだ。
眼を閉じた僕の瞼の裏には僕の知らない男女の姿が映っていた。
「誰?」
僕がそう聞いても2人は答えてくれない。ただ、黙って女の人が僕の頭を撫でてくれた。
温かい、とっても…とっても…
この手もしかして…僕は疑問を口にする。
「お母さん?」
すると女性は小さく、でもしっかりと頷いた。
「じゃあ、お父さん?」
僕が今度は男性に向かって聞くと、彼もまた同じ様に頷いた。
僕の頬を温かい物が流れていく。同時に僕は意識を手放した。
________________________________________
「だから逃げようって言ったのに」
裏路地には彼女1人しかいない。彼女はもう踊ることのなくなったピエロを見下ろしながら呟き嗤った。
『Ⅶ』と彫られたステッキを打ち棄てその場を跡にしたのは、『七番目の手品師』だった。
母の温もり―五番目のピエロ(Ⅴ)―
mothy_悪ノP(http://piapro.jp/mothy)さんの五番目のピエロ(http://www.nicovideo.jp/watch/sm14639165)を二次創作満載で小説にさせて頂きました。
五番目のピエロ完結です(^^)v
前回以上にお待たせしてしまってすみませんm(_ _)m
追試験を終了させ、何とか書き上げました。
やっぱりこの曲は最後のサビで泣きそうになってしまいます。彼の薄幸を愁いて、この作品の締めとさせていただきたいと思います。
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ご意見・ご感想
目白皐月
ご意見・ご感想
こんにちは、お返事ありがとうございました。
うーん、私だったら、「あえて徹底的な不幸に落とし込む」路線で、行っちゃうでしょうね。まあこれは創作に関するスタンスの違いですが……。
えーっとすいません、実はもうちょっと訊きたいことがあるのですが。
個人的な意見というか見解なのですが、「学校に行かせない」というのはわかるんです。この状態で学校に通わせたら、ダブルスタンダードが原因で暴発してしまうのは目に見えています。でも、レミーに幅広い知識や教養って必要なのかな~って私は思うんです。そういうものを与えられたら、下手すると自分の置かれた状態の異常さに気がついてしまって、サンタさんの言うことをきかなくなっちゃうんじゃないのかなと。そんなことになったらサンタさんも困るでしょうし。
後、これもどうしてもわからないのですが、レミーを殺させたのは手品師なのでしょうか? 直接手を下したのは狙撃手ですが、狙撃手本人の意思で実行したとは思いにくいんですよね。となると狙撃主に指示して誰かがやらせたことになりますが、可能性があるのはサンタさんか手品師。サンタさんからすると、レミーはまだ部下として使えるし離反の可能性もないので殺す理由がない。となると手品師しかいないのですが……。ライトさんの見解はいかがでしょうか。
それともし手品師が主犯だった場合ですが「私の要望に応じてくれなかったから殺しました」じゃあ、手品師の方がイタい人のような気がしてならないんですけど、どう思います?
多分「この人すごく嫌なこと訊くなあ」と思われたと思います(汗)
もし、私の書いたものに対し「ここの設定がよくわからない」という部分がありましたら、訊いてくださって構いませんよ。
2011/08/29 23:53:07
Raito :受験につき更新自粛><
ふむ、またまた質問ありがとうございます。
まず一つ目の質問についてですが、教育とは恐ろしい物で半ば洗脳ともいえるものです。 目白皐月さんが指摘されたようにならないように、サンタさんは情報を選んでレミーに与えていた…という設定に僕の中ではなっています。
二つ目については、僕自身の見解はありません。今回は、本家様が完結していない物語を選んだということで、話を書くときに「後々真実が明らかになっても困らないように…」というせこい考えで書きました。僕の中ではどちらが黒幕でも成立する物語と思っています。
すみません。あんまり回答になってないかも知れませんが、これは解応(かいとう)だと思っていただけたら幸いです^_^;
2011/09/01 19:33:02
目白皐月
ご意見・ご感想
こんにちは、目白皐月です。
あの……ちょっと、こういうことを訊いていいのかどうかわからないのですが、どうしても気になったので質問します。
サンタさんは、どうしてレミーに勉強を教えていたんでしょう?
彼女の行動の意味がよくわからないので、よろしければ教えていただけますか?
2011/08/27 21:22:04
Raito :受験につき更新自粛><
こんにちは。
痛いところを突かれましたね^o^;
簡単に言うと辻褄合わせです、はい。
レミーが夜仕事をする→昼間眠くて学校に行けない→じゃあ、勉強を教えてあげなきゃ(^o^)/
と言った僕の頭の固さが生み出してしまった設定ですね。
それでも、サンタさんはレミーの前では表向きだけでもちゃんとした(常識的な?)お母さんでいて欲しかったんです。でないと、レミーがかわいそう過ぎるかなと…
なんかまとまってなくてすみません。こんな感じの設定しかないんですm(_ _)m
2011/08/28 11:24:44