僕は、タクシー運転手。カイト。
僕が一度だけ体験した奇妙な物語を、今から話す。
聞いていたら、もしかしたら変になるかもしれない。
じゃあ、いくよ。


僕はどこぞのタクシー会社に勤める、普通な大人だ。
もうタクシー運転手も3年にはいり、慣れた。
しかし、僕にはこの3年間、どうしても慣れないことがひとつだけある。

「ねぇ知ってる?この前ね、タクシー運転手殺人事件が起きたんだって」
女子高生二人を乗せ、駅に向かう途中であった。
そこで、一人の緑色の髪の女子が言った。
僕は、心の中でタクシー運転手の前でその話はないよな、と思っていた。
さらに、その緑色の髪の女子に答えるようにピンク色の髪の女子が言う。
「知ってる。しかもね、それ死体がバラバラなんだってね。“タクシー運転手バラバラ殺人事件”でしょ?」
「そうなんだよね。それにその運転手の死体、シートベルトがついたままだったらしいし、通常の運転席で変わりはなかったらしいよ」
緑色の髪の女子が言う。
そして、
僕の嫌いなジャンルに話題は引きずり込まれていった。

「それがね、とても人間にできる技じゃないの。もしかしたら、“Don`t of the dead(ゾンビ)”の仕業じゃないかって…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!
・・・や、やめてくれよ。人間以外なんて、そんなバカな話があるか。
そんな、ことは・・・
そんな僕の考えを掻き消すようにピンクの髪の女子は言う。
「だよね!それ私も思ったの。ゾンビかぁ、一度でいいから会ってみたいなぁ」
・・・・・・
・・・・・・シャレにならんこと言わないでくれ。
運転手はつらいんだよ、ほんとに。
で、ほんとのところは。
・・・・・・僕は、怖い話が苦手なんだ!
だから本当にやめてもらいたい。
しかし、緑色の髪の女子が救いの言葉をつむぎだす。
「あのね、そこでいいおまじないがあるんだってさ。それがね…」
僕はそれを聞き、運転に最小限に神経を集中させ、残りは耳を傾けた。
そして、緑色の髪の女子がつぶやく。
「それはね・・・」
僕はごくりとつばを飲んだ。
・・・しかし。
「あ、ちょっと待って!」
・・・・・・っ!!
なぜ止める!?
お願いだからそのおまじないを教えてくれ!!
「運転手さん、ここで降ろしてください」
!!
そうか。
・・・もっと遅く運転すればよかったな・・・
「は、はい・・・えっと、800円になります・・・」
いまさら聞き出すこともできるはずがない。
この違和感というか変な感じを背負いながらまた客を運ぶのか・・・
考えただけでも泣けてくる。
以後、自分の行動などは慎重にしていこうと思う。

胸の辺りに不快感を感じながらも、仕事であるタクシーの運転はやめることができない。
さっきの二人が話していたように僕も殺される状況が作られてしまうのならば、なるべくその状況を避けたい。ので、避けるために僕は二人を降ろした駅前で客を拾うことにした。駅前ならば人通りも多く、襲われないだろうという考えだ。
しかし、その考えが実行される前にすぐに客が来た。
僕が運転席で新聞を読んでいると、若そうなの男が窓を叩いた。
黄色い髪に、サングラスをかけている。
その男の後ろで、紫色の髪で服の色も紫色の男と、二人の男とは違い、黄色い髪のリボンをつけたきれいな女性が立っている。
乗せてくれと頼んでいるのはすぐにわかった。

3人組がタクシーに乗り込むと、真ん中に座った女性が言った。
「えっと、中目黒まで乗せてっていただけますか?」
・・・
すごく透き通った声だ。
まるで声優か歌手のような美声だ。おもわず僕はうっとりと聞き入ってしまった。
「・・・あ、はい・・・」
今さっきの出来事がかき消されてもおかしくないほど、自分はその女性の声に魅了されていた。
駅から中目黒まではざっと見積もって5分程度だ。
その間だけでもリラックスというか、なにか自分がいやなことを忘れられるというのは、すごく僕にとってありがたい。
運転中、その女性と黄色い髪の男との会話を聞き続けた。
もちろん、その話題には特に意識はしないが、女性の声だけを聞いていた。

しかし、5分と経たぬままに、その運転は中断された。
無口で一言もしゃべらなかった紫色の髪の男が、口を開いたのであった。
「・・・すまぬ運転手。ここで降ろしてもらおう。理由は聞くな。あなたがパニックを起こす原因になる」
??
突然言われて何のことだかちっとも理解できない。
第一、ここは中目黒ではなく、間違いなく奥深い森が生い茂っている通りだ。
ここで降りるわけがわからない。
しかし客の言うことだ、無視することは当然できない。
僕は「はぁ・・・」と気の抜けたような返事を返し、車を止める。
そこで黄色い髪の男が1万円札を2枚差し出す。
「・・・!!?」
僕は唖然とし、しばらくぼーっとした。
「釣りはいいよ。とっといて。まぁ、使う機会がもうないかもしれないけどねぇ・・・」
黄色い髪の男に言われ、再び我を取り戻す。
札を何気なく受け取ると、さっさと紫の男は出て行ってしまった。
降りる際、きれいな声の女性は片目をつむりながら言った。
「ごめんね、がくぽって変な人なんだ・・・!お金は貰っといて。それと・・・」
「は、はい」
僕は次の女性の言葉を待った。すると女性は一呼吸置いて、言った。
「今から起きる出来事に、決して我を失わないでね。冷静に判断して行動すれば、きっと生き残れるはずだから」
・・・・・・
僕は言葉を失った。
生き残る・・・?
僕は死ぬ恐れがあるのか・・・?
僕はすでに冷静な思考でなくなってしまっていた。
そう、僕は知る由もなかった。

ゾンビとも、人間とも、霊ともわからない者に襲われるということを。


3人が降りた後、僕はしばらく座席を倒して目をつむっていた。
2連続で不吉な会話をかわし、精神的に疲れたのだ。
森の木でちょうどよく日がさえぎられていて、休みやすかった。
しかし、休む暇がない。
またもお客だ。
しかも小さな女の子。5年生くらいか。
赤いランドセルを担いで、黄色いツインテール。頭のてっぺんにハート型に髪がまとまっている。
「お兄さん、えっと、渋谷までおねがいします」
よくこんな小さな女の子が一人でこんなところに来ているなぁ。
僕はそんなことを思った。
「お嬢ちゃん、学校帰りかい?」
「はい。引越ししたんですけど、学校は今のままがよくて。こうやってタクシーで登下校してるんです」
タクシー運転手なんだから、客に話しかけるのは当然なのだが、この子は特別気が楽だった。さっきの二組のこともあってからだろう。
さすが子供。ちゃんと礼儀をわきまえている。
あまりに僕は感心して、あめをあげた。
「運転手さん、ありがとう!」
女の子は目を輝かせながら言った。
こういうのだとこっちもいい気分になる。
そうこうしているうちに、転々とビルが並んできた。
ようやく町のほうに出てこれた。しかし。
「あっ、お兄さん。そこを左に曲がって」
??
ここを曲がったら森のほうだ。第一、行き先とは真逆ではないか。
しかたないので、一応曲がる。
ここから、気味の悪いことが立て続けに起こるのだった。

「ねぇねぇお兄さん、タクシーの運転手さんってなんでいつも私たちにはなしかけるの?」
森の付近で女の子が無邪気に僕に聞いてくる。
「それは、やっぱりお客様をお暇にさせないためですよ」
僕は仕事してそうな答えを返す。すると、女の子は不気味ににやけながら言う。
「・・・そっか。前の運転手さんと同じこと言うんだね」
にやけながら・・・ 
!!!!!!
なぜだ。
僕は後ろを振り向いたわけでもない、そして鏡を見たわけでもない。なのに。

女の子がにやけているとわかった!!!
おかしい。
絶対におかしい。
僕はパニック状態に再び陥る。
そこにまたもや女の子が追い討ちをかける。
「どうしたの?お兄さん、すごいあせってるみたいだけど、何か視えたりしたの?」
!!!!!
もう、やめてくれ。
この時点でこの女の子が普通じゃないことはわかっていた。はずだった。
もう冷静さのカケラもない。
自体は確実にバッドエンドに向かっていた。
「お、お嬢ちゃん・・・こ、こっちは方面違うんじゃないかな・・・?」
僕は必死に反抗する。
しかし、それも無駄だ。
後ろにいる女の子にどんどん追い詰められる。
「ねぇ、こわいの?私がこわいの?ねぇ、ねぇってばぁ!!!!!」
「な、なんのことですか・・・?ぼ、ぼぼ、僕はただお客様の、いう、言うとおり、タクシーを、はし、はし、走らせて、る、だけで、はい・・・」
口が回らない。

そこで気づいた。


タクシー運転手バラバラ殺人事件の犯人って、この子なんだ。

わかった。
そうか。
この女の子が、殺したんだ。タクシー運転手を。バラバラにして。
血を見ても、違和感がないんだ。こういうやつらは。
断定した。
僕の頭の中で危機が迫っていると感じ、そうさせた。

殺す。
こいつを、殺す。
もう被害を受ける人がいなくなるように。
僕がこいつに裁きを下す。
目の前の気持ち悪い目をしたガキを、ぶっ殺してやる。

そうして。
僕は手にケータイを握っていた。

「お兄さん、どうしたの。運転中は前をむいてなきゃ・・・」

そう女の子が言うと、僕は手に持ったケータイで女の子の頭を殴りつけた。
頭蓋骨にひびが入った音がした。
「がはぁっ・・・・・・」
女の子が前の座席にのめり倒れる。
それを僕は許さない。倒れこんでくる女の子のあごを、思い切りひざで蹴り上げる。
小さな体が、車内に舞った。
「痛い!痛いよお兄さん!!なんで、なにか悪いこと言った?私!?」
頭を抑えながら、ぽろぽろと泣きながら訴える女の子。
しかし僕はこの子を殺すことしか頭になかった。
「・・・お前が、運転手をバラバラにして殺した・・・!!償って死ね!!」
ケータイが血に塗れる。ケータイで女の子を殴打し、頬の皮を裂く。
「ああああああああああ!!!!!!」
女の子は痛みで絶叫する。
あいにく、タクシーの周りには他の車は一台たりとも走っていない。
女の子の危機に気づく者は現われはしなかった。
僕はケータイを女の子の腹に向ける。
残酷すぎる制裁が、僕によって行われた。
ケータイを、女の子の腹に無理やり突き刺す。
肉が裂け、ケータイの端から血が噴出す。
「・・・・・・っぅぅ・・・・・・」
女の子は気絶してしまった。
しかし、僕は手を緩めない。
最後の制裁を行った。
女の子の口に、無理矢理右腕を押し込む。
細いのどに、それより一回りほど太い腕がずぶずぶと入っていく。
そしてその腕は臓器をまさぐれるほどの深さに到達した。

女の子の心臓をつかんだ。
思い切り力を入れた。
その瞬間、女の子の体中のありとあらゆる血管から、血が飛び出す。
返り血を浴びながら、開ききった瞳孔の僕は、思った。



タクシー運転手を殺したのは、この女の子じゃなくて、

                            僕

だったんだ。



僕は、誰・・・?
誰も教えてくれない。
誰も知らない。

じゃあ、見つけるしかない。
人にかまってもらえるほど、存在感がある自分を。
その形は、人それぞれ。


僕はこういう形で、世の中に「僕」を知らしめたのであった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

タクシー運転手<激グロ注意>

ちょっとまずいっすかw
自分でも引きながら作ったんですが・・・
消すのもったいなかったんで、一応ww

閲覧数:1,449

投稿日:2009/11/27 21:10:49

文字数:4,707文字

カテゴリ:小説

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  • エイム

    エイム

    ご意見・ご感想

    すっごく好きです♪
    こういうの!!
    とくに後半が♪

    2011/02/08 13:38:56

    • 初音ミミック

      初音ミミック

      ありがとうございます!!
      ほかにもこのテの作品がありますので暇がありましたらみていただけるとありがたいです^^

      2011/02/08 19:24:52

  • 初音ミミック

    初音ミミック

    ご意見・ご感想

    ほんとうですね・・・
    かぶってました、前半・・・
    いろいろありがとうございました。

    2009/12/05 11:40:00

  • 秋徒

    秋徒

    ご意見・ご感想


    電撃文庫出版の、作者は『成田良悟』です。『世界の中心、針山さん』の二巻目なんですが、一巻目も面白いのでお勧めです。
    新作を楽しみにしています。

    2009/12/01 23:18:29

  • 初音ミミック

    初音ミミック

    ご意見・ご感想


    まじですか。
    読んでみます(。-_-。)

    2009/11/29 20:57:57

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