語り部のRe_birthday
ようこそいらっしゃいました。このたびお聞かせするのは罪に縛られた少年のお話です。
その少年が目覚めたとき、辺りは暗闇に包まれていたそうです。何も覚えておらず、なぜここに居るのかも分からずに。しかし、その部屋の天井に有った、巨大な緑色のぜんまいから響いてきた言葉によって、すべてを思い出したそうです。
悪逆非道の王女の双子として生まれて、召し使いとして姉に仕え、たくさんの国民を苦しめて、その果てに自身の愛した人を殺して、その恋人を悲しませたことを。そして、その後に起こった革命の際に、大切な姉を悲しませてしまったことを。
そして、ここに居る理由と、結末に気づき、もうあの頃には戻れないと悟ったそうです。
気づけば、両腕にはめられているのは誰かが流した血の色の、真紅の手錠。
両の足首にはめられているのは誰かが流した涙の色の、紺碧の鎖。
そして、るりらるりらとどこからか少年の耳へと響いてくる歌声に、いつしか少年は耳を傾けていたそうです。
少年はふと、
「どれほどの時が流れただろう?」
と動かぬぜんまいに問いかけたそうです。
ですが、何も答えはなく、どこからともなく聞こえてくる歌声だけが少年を癒したそうです。
ぜんまいの隙間から落ちてきた小さな光は、とても、暖かなものだったそうです。それは―
大切な人からの
メッセージ
リグレット
そして、その光をきっかけに、全てが変わっていったそうです。
廻り始めたぜんまいは静かに語りかけたそうです。
「罪が消して許されることはない―」
それなら、今まで見てきた全てを唄に変え、唄い続けよう。
真紅の手錠は外れ、少年に語りかけたそうです。
「これからあなたは生まれ変わるのよ―」と
紺碧の鎖は外れ、少年に語りかけたそうです。
「今日が君の新しいBirthday―」
そして少年の周りは全て廻りだして、白い光に包まれていったそうです。
その光の中で少年は呟いたそうです。
「もうすぐ君に会いに行くよ。だから、待っていて―」
いかがでしたか?私のお聞かせした物語は。今日のところはここでお開きにしましょう。とある王族の物語はこれでお終いです。ですが、がっかりなさらないでください。私の知っている物語は、まだまだたくさんありますから。帰り道にはどうぞお気をつけて。よければまた、私の物語を聞きにいらして下さい。それではさようなら。
語り部のRe_birthday
語り部シリーズ8作目です。
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