過去巡り 外伝   『花の祝福』 その1  





それは私が……いや、私達が高校に入ってすぐの部活説明会から始まった。



体育館での部活説明会を私達1年生は体育座りで聞いていた

「それでは最後に演劇部の紹介です」

と先生が言って歩いてきた先輩を見ると

おぉ~あの先輩めちゃくちゃ可愛い~誰かな?あの先輩

そこにはかなり可愛い顔の女の先輩がいて演劇部についての説明をしている。

先輩が熱心に話しているが私の耳にはあまり入ってなかった

まぁ熱心に聞く子なんてあんまりいないと思うけど…

先輩がまだ話してる間に私は

よし!私は演劇部に入ろう!そしたら私もあんなんになれるかな?

そんで可愛くなったら、アイツに…

私は全く演劇に興味が無いのに演劇部に入ることを決意した。

そして私が教室に帰ったらさっそく演劇部と記入用紙に書こう!と思ったら

「…だからみなさん、演劇部で一緒にやりませんか?」

と言って演劇部の紹介を終え

「……以上で部活説明会を終了します。教室に戻って入りたい部活の

名前を先生から渡される紙に書いてください。では解散。」

先生の言葉にみんな立ち上がり教室に戻る。

教室に帰るときに同じ中学の流香に

「流香は何部に入るの~?」

と聞くと流香が

「考え中…」

ぼそっと私に返事した

ん?流香はどうしたんだ?

まぁいいや…流香も私と演劇部に入ろうと誘ってみるか…



先生からプリントを渡されて学校が終わり、流香のところに部活のことで

話をしようと行こうとしたら

ありゃ?流香もう出て行っちゃった?なんで?トイレ?

流香がさっさと教室から出て行ってしまった

どうしよっかな?と流香の机を見るとまだ鞄があったので

鞄があるとゆうことは……すぐに戻ってくるな…

じゃあ待ってるかな…

教室で流香が帰ってくるのを待つことにした



そして10分ぐらい経ち、みんなが帰り私だけが教室で流香を待っていると 

がらっと教室の扉を流香が開けたので私は

「お?おかえり~流香。どこに行ってたの?」

と聞いた

「うん。職員室に行ってたの」

「へ?何で?もう呼び出されて説教されたの?」

「違いますー!!そうじゃなくて、部活のことでちょっと…」

ちょっとだけ怒った顔の後になんだか悩んでる顔で流香が言うので

「あっ!そうそう流香あんた部活どーする?一緒に同じとこに入らない?」

と流香にすでに演劇部と書いてあるプリントを見せた

「え、え~とね…」

歯切れの悪い流香に

「演劇部にメッチャ可愛い先輩がいるのよ~ねぇ~一緒に入らない~?」

と勧めると

「え、えーと…その…ハナ…」

流香は視線を泳がせながら何だか言いにくそうだ

なんだ?どうしたんだ?

「ん?なーに流香?」

流香にそう聞くと少し悩んだ後に少し言いよどみながら

「えっとさぁ…ハナ…」

上目づかいで言ってくる

「だから何?」

と私が聞くと流香が超にっこり笑顔で

「私と一緒に……合唱部………作る気……ない?」

………

…………

……………

流香の言葉が理解できず、数秒の間を空けてから私は

「………はい?」

すっとんきょな声で返すと

「はい?やってくれるの?私と一緒に合唱部作ってくれるの?

ありがと~ハナ~~、持つべきは友ね~大好き~~」

と流香がゴリ押しをしてきたので

「いやいやいやっ!!何ナチュラルにゴリ押そうとしてんのよ!?

やんないよっ!!嫌だよ!!ありえないよっ!!」

手を高速に振って拒絶をした

流香はなに言ってんだ!?合唱部なんてもう嫌だよ!!

私の拒絶に流香がまた笑顔でゴリ押しをしてくるが私もまた全力で拒絶した。

その後も流香は何度も粘るが、私も嫌だ!と何度も叫び続けた。

あんなキツイ練習なんかもうゴメンだね!!

と拒絶の態度を流香に見せると

「駄目…かぁ~」

がっくりと流香がうなだれた

そんながっくりしてる流香を見て当然の疑問が沸いてきたので

「流香はなんで合唱部を作ろうって思ったのよ?

流香だって練習キツイからもう嫌だ。って言ってたじゃない?何でよ?」

と聞くと流香は焦った後に困り顔で

「え?え、え~~と、それは……」

オロオロとしながら視線を泳がせた

何だ?変なこと聞いたつもりは無いんだけど?

「何よ?無いの?無いのに作ろうって言ってるの?」

「い、いや…あるにはあるんだけど……そのぉ…えっとぉ…」

と言い辛いオーラ全開で流香が言うのでその後も流香に追求すると、流香が

嘘を言ったのでその嘘を見破り、まだモジモジして言いにくそうな流香に

「怒らないから言ってみなさい。

頭ごなしに合唱部を作るなって反対もしないからさ…」

と優しく聞くと流香は観念したのか、手を組んで少し恥ずかしそうに

「えっとね……………って言うから…」

理由をようやく話した………が肝心な部分を小声で言ったので

「はい?聞こえない。何だって?」

追求してみたが

「だから…………って言うから…」

またも流香は小声で返した

「聞こえないって。もっと大きく言ってよ」

その肝心な部分が聞きたいんだって…

「もうやだ…………って言うから……もういいでしょ?ハナ…」

少しだけ顔が赤くなり、困った顔の上目づかいで私に言うが

「だからー!聞こえないからもっと大きな声で言ってよ!」

聞こえないことに少し怒り、少し強く言ってみた。

何がそんなに言い辛いだよ!?

「うぅ…ハナが苛める……………って言うからだってば…恥ずかしい…」

と流香が涙目になり顔を真っ赤にしながらうつむくが

「だー!かー!らー!聞こえないって言ってんでしょ!?」

だから何でそこまでして秘密にするんだよっ!?どんな理由なんだよっ!?

と完全に怒ると、怒らないって言ったのに嘘つき…とゆう流香に

あんたの声が小さすぎるからだ!と再び怒り

「分かった分かった……はい、これで良いでしょ?言ってごらん」

と流香に耳を近づけて内緒話スタイルをとった

よく分からんがこれで話せるでしょ?

まったく何がそんなに言いづらいんだか…そんなに顔を赤くする理由なのか?

すると流香は私の耳に手を当てて小さな声で

「…ガク君がね……合唱部で歌ってる私を見たい…って言うからなの…」

…………は?なんて言った?

「………」

「…………」

「………」

流香の言葉を考えながらすっ、と流香から離れて

「はぁぁぁぁ??ガク君がまた合唱部見たいって言ったから~~??

何だそりゃ!?好きな男の為?マジでか!?アンタ本気か!?はあぁぁぁ?」

いまさら驚きながら本当かどうかを聞いてみた

ガク君が言ったから!?彼氏にお願いされたから!?どんな理由ですか!?

マジか!?そうか!だから顔が真っ赤になってんのか!!

すると流香が慌てて

「やめてよっ!!大きい声で言わないでよ!!ハナの馬鹿っ!!」

と私の口を塞いだ

「~~~だっ!やめろ!離せ!!だってあんた本気か!?

本気でそんな理由で合唱部やろうって言ってんのか!?ありえんだろ!!」

「だから大きい声出さないでよ!!誰か聞いてたらどーすんの!?

静かにしてよ!!しゃべっちゃ駄目っ!!」

と口を塞いでる手をはがして言い、その後も流香と言い争いをやり

「あっ!別に同じ中学の私じゃなくてもいいのか…分かったゴメン流香。

誰か別の子に当たってくれ、それなら止めないから。じゃ!」

と言って離れると

「待って!!違うの!!うち等じゃなきゃ駄目なの!!」

流香に手を掴まれてしまったので

「はぁ?どーしてよ?つーかうち等って誰よ?」

怪訝な顔して聞いてみた

「それは、そのぉ…うち等ってのは合唱部のみんなのことで…」

バツが悪そうな言う流香に心の底から驚き

「はぁぁ~~?合唱部のみんな~~?あんた本気か?本気で言ってんの?

みんな合唱部はもう嫌だって言ってたの、アンタだって知ってるでしょ?

それなのにマジで?うち等じゃなきゃ駄目な理由でもあるの?何?」

と聞くと最初は言いよどんだが、追求すると流香は恥ずかしそうに

小さくガク君が…と言うので察することができた

「ガク君が何よ?はい!?まさかガク君が言ったの!?

うち等合唱部に高校でも合唱部に入ってほしいって!?マジで!?」

私が聞くと流香が無言でうなづき、2人がちょっと無言になった

マ、マジで?ガク君がそんなこと言ったのか?

本気でそ、そんな理由で合唱部をまたやろうって?

流香は本気でそんな理由で合唱部を作ろうと言ってんのか?

てゆーかそんなガク君の頼みを流香は聞いたのか?OKしたのか?

私は恐る恐る流香に聞いてみた

「そ、それでアンタ……ガク君に…いいよって言った……の?」

「………ぅ…ん…」

うつむいた流香から小さな声が返ってきた

マ、マジかよ…

どんだけだよ…どんだけガク君が好きなんだよ…

と私が思ってると流香が語り始めた

「…ガク君が遠くの全寮制の学校に行っちゃったのはハナも知ってるでしょ?」

「う、うん…知ってる…」

新幹線を使わなきゃ行けないほど遠くの学校に行ったんだっけ…

だからガク君とは遠距離恋愛になるって高校入学前に流香が話したっけ…

たまにしか会えなくなるから寂しいって…

「それで…ガク君……部活にもう入っててかなり忙しいらしいの…

入学前から部活に入ってて…毎日練習で土日も休み無しって言ってたの…

だから私とガク君…これから全く会えないの…全然会ってる暇が無いの…」

「あ…あぁ…そうだったんだ…それは知らなかった…」

入学前から部活に入ってて…土日も毎日部活って…

それは確かに会えないや…

会ってる暇が全然ないなぁ…それは初耳だ…

「それで…昨日の夜に電話で『流香は部活に入るの?また合唱部?』って

ガク君が聞いてきたから…入らないよ~って言ったら…ガク君が…

『合唱部に入ってよ。俺は歌ってる流香が好きだよ』って言うから…だから…」

そう言いながら顔を赤める流香に

「だから?だから何だよ?私達はいらなくね?」

「それでガク君…『合唱部のみんなも合唱部に入ってよ』って…

『そんでみんなで文化祭で歌ってよ。俺見に行くから』って…だから…なの」

流香が真っ赤になりうつむいたので、流香の言葉を整理した

ガク君とは遠距離恋愛になった…

さらに毎日部活で全く会えなくなる…場合によっては1年近く会えない…

そんなガク君に合唱部で歌ってる姿が見たいと言われた…

「……つまり…」

うつむきながら黙って私の手を握っている流香に

「文化祭で…アンタが歌ってるのをガク君に見せるために合唱部を作れ…と?」

「………………」

「久々に会って…舞台の上の姿を…ガク君に見せたい…と?」

「………………」

赤い顔でうつむく流香は小さくコクンと頷いた。

そんな流香の顔を私は黙って見た。

何にも言わない流香の顔は赤くて……少し不安げに眉を曲げて…

ガク君にお願いされたから…だけじゃなくて、きっと自分の良いトコを

恋人に見せたいんだろう…久々に会って頑張ってる姿を見せたいんだろう…

私もガク君に負けずに頑張ってると…言いたいのだろう…

文化祭でガク君を喜ばせたくて…彼に褒められたくて…

だから同じ中学の合唱部の私達に声をかけたのか…

だから私達が合唱部に入らないと分かってても声をかけたのか…

もしかしたら…と少しだけ期待をして声をかけたのか…

みんなで合唱部を作って彼をガッカリさせたくないんだろうなぁ…

私達が断ったら流香もガッカリするし、ガク君もガッカリするんだろうなぁ…

流香はずっとうつむいて、ずっと不安な顔をしている。

あぁ…そんな顔しないでよ…流香…

2人の状況を知って…そんなあんたの顔を見て…断るなんて…

そんな……そんな事……できる訳が……できる訳が……

嫌だとゆう気持ちと流香への気持ちでかなり揺らいで…

そしてすっ…と気持ちが静まり答えが出た。

分かったよ…流香……あんたに…

私は決心して3年の付き合いのうつむいている友人に

「……ったよ…」

小さく答えを言うと流香がゆっくり顔を上げて

「え?何?ハナ?」

私の言葉が聞き取れなかったからもう一度聞く流香に

「分かったよ…合唱部……作ろう」

ポソっと言うと流香の顔が…不安げな顔だったが少し驚いた顔になり

「本当?本当に?」

私の手を握る力がぎゅっ…と少しだけ強まるので

「…うん…あんたに……あんた達2人の恋に協力するよ…」

今度はしっかりと言った。

すると流香が私の手を離して

「ありがとーー!!ハナ大好きーー!!ありがとーー!!」

と笑顔で抱きついてきた。

そして用済みになった部活入部のプリントを机にしまい、私達は帰った。



そして駅のホームで電車を待ってるとき

「ハナ…さっきの話は皆には言わないでね…」

流香が少し恥ずかしそうにそう私にお願いしてきた

「ん?なんで?」

「だって……恥ずかしいんだもん…」

赤い顔でうつむく流香は女の私が見ても可愛いと思う

「ん~~分かった。言わない。流香は可愛いな~」





流香と約束をして流香とは反対方向の電車に乗り、私は家に向かった

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

初恋メロディー 過去巡り 外伝 花の祝福その1

過去巡りの外伝のハナの祝福のその1です。

まぁ…ハナ視点なだけでストーリーは特には変わってないです。

閲覧数:68

投稿日:2011/11/25 14:15:42

文字数:5,577文字

カテゴリ:小説

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