『悪党のジャッジメント』を題材にした小ネタ週のその二です。
 一応ギャグのつもりですが、今回のネタは結構ブラックかもしれません。
 なお、相方及び語り手はいつものあの人です。


 【悪徳判事とループ】

「マーロン判事、この前無罪判決を出した被告人の話なんですが」
「あ~、あれか。確か強盗殺人の奴ね。そいつが何か?」
「裁判所を出たところで、被害者遺族に襲われて殺されたそうです」
「ありゃ、折角金積んで無罪を買ったのに、それも無駄になるとは。人の人生というのは儚いもんだね」
「……言うことそれだけですか」
「他に何を言えと?」
「いや、いいです」
「あ、そう。じゃ、私はまた昼寝でもするかな」
「あの……判事、それで、今回の事件の加害者が来ているんですが。無罪の判決が欲しいって」
「あ~わかった、入れてくれ。毎回こうだと話が楽だし、懐も潤うからいいんだけどなあ」
「…………」


 【悪徳判事と未必の故意】

「判事、新聞で滅茶苦茶に叩かれてますよ」
「いーよ、毎度のことだし」
「けど、クリュオーさんを終身刑にしたのは行きすぎじゃないですか?」
「しょーがないじゃん。文句があるんなら、あいつを故殺罪で起訴した検察に言ってくれよ」
「いやでも、判決を出したのはあんた……いえ、最近、検察どんどんいい加減になってますね」
「やる気がないというのは困るね」
「…………」
「なんだよ、変な顔して」
「……なんでもないです。でもやっぱり、この人が殺人罪っておかしくないですか? 直接手を下してないんでしょ?」
「ま~そうだけど」
「それに、ギャング団が壊滅したの、あの人のおかげじゃないですか」
「だから、しょーがないんだってば。それにクリュオーが、ギャング団に捕まって箱に閉じ込められた後、こっそり抜け出して、身代わりに下っ端の構成員詰めたのは事実だしね。その箱を海に放り込んだのはギャング連中でも、クリュオーだって『こいつ死ぬかも』ぐらい思ったんだから、未必の故意はあったわけだし。だから検察が、『クリュオーがあの下っ端を箱に詰めなければ、奴は死ななかった、よってクリュオーにも責任あり』としたのは、ある意味仕方ないでしょ」
「……判事、まともに法律の話できたんですね」
「私を何だと思ってるんだ、君は。これでもちゃんと法曹資格は持ってるんだよ? ま、それはさておき、そういうことだから、クリュオーも起訴されても仕方ないんだよ。私にお金を払えば無罪にしてあげたのに、お金払わないあいつも頭固すぎるしね」
「……途中までまともだったのに、結局それですか」


 【悪徳判事と児童虐待】

「最近、妙に児童虐待の件数が増えたと思わないか?」
 今日も裁判所の執務室で、ペンを転がしつつ――仕事してませんから――マーロン判事は僕にそんなことを訊いてきました。
「僕にはそうは思えませんが」
「だって、これも、これも、これも、児童虐待だよ」
 判事は机の上の書類を僕に指し示しました。あれ、確かに妙に児童虐待ばっかりですね。
「あ~面白くない」
「何がです?」
「私、児童虐待って嫌いなんだよ」
 児童虐待が好きなんて人は、虐待をしている張本人だけだと思いますが……。
「そうなんですか?」
「そうだよ。だってさ、あいつらってさあ、なんか知らないけど、揃って損得勘定ってものができないんだよ」
「どういう意味です?」
「だからさ~、私が『金さえ払えば無罪にしてやる』って言ってあげてるのに、『こっちは間違ったことはしていない、誰が金なんか払うか』って態度の奴ばっかりなんだよ? この私の折角の申し出を拒むなんて、何様のつもりなんだか」
 あなたにだけは、言われたくないような気がします。
「その点、ヤクの売人とかはいいね。あいつら、損得勘定得意だからさ。すぐに私のところに金を持ってきて『これで無罪判決お願いします』って言ってくれるんだよ」
 そりゃ、あの人たちは自分たちが悪いことやってるって、自覚してますからね。判事にお金を積んで無罪にできるんなら、その方が楽でしょう。
「だから児童虐待の裁判は嫌いなんだよ! なんで最近こんなのばっかり回ってくるんだ! 一銭の得にもなりゃしない。見せしめに児童虐待の事件が回ってきて金を払うのを断られる度に、懲役二十年ぐらいの刑にしてあげてるってのに、みんないっこうにお金を払おうとしないんだから!」
 えーと……マーロン判事も使いようなのかもしれません。


 【悪徳判事と罰金】

「なあ、私って何か悪いことやったか?」
 その日、僕はいつものようにマーロン判事の執務室で仕事をしていたんですが、判事が突然、僕にこんなことを言ってきました。え~と、判事。あなたが僕にそれを訊くんですか?
「何かあったんですか」
 僕がそう尋ねると、判事は深いため息をつきました。
「……最近、法廷侮辱罪にしてやった奴の金払いが悪いんだよ」
 ちなみに、法廷侮辱罪というのは法廷で騒いだり問題起こしたりすると、問われる罪状です。証言台に上がってるのに質問に答えなかったりしても問われます。ですが判事が一方的に裁量できるため、マーロン判事はちょっと何かやってる人がいると、すぐ法廷侮辱罪にしちゃうんですよね。証言台でふざけた態度取った証人とか、傍聴席で居眠りしてた人とか。問われる方にも問題あるのかもしれませんが、なんでもかんでも法廷侮辱罪にするのは、さすがに僕もどうかと思います。まあ、言ってもしょうがないから、判事には言ってませんが。
「払いが悪いって、どういうことです?」
「なんでか知らないけど最近、ほとんどの奴は、私に金払ってくれないんだよね。私に金を払えば罪状を取り消してやるって言ってるのに」
 判事の胸先三寸で決まるタイプの罪状ですからねえ……あれって。同じことやっても、注意で済ませる人もいますし。あなたぐらいですよ、あそこまでほいほいと法廷侮辱罪にしてるのって。もちろんマーロン判事の場合、金を払わせるのが目的ですけどね。
「おかしいじゃないか。私に直接金を払えば半額でいいって言ってるんだよ! それなのに、それくらいなら全額国に納める方がまだマシだとか言い出しちゃって。どうなってるんだこの国は」
 いや……それは仕方がないでしょう。というか、あなたの存在そのものが、法廷に対する侮辱なんじゃないですか、判事。
 それにしてもこの国では、法廷侮辱罪に対する罰金が一律で決められていて良かったなって、つくづく思います。どこかの国みたいに、判事が好きに罰金の額を決められようものなら、マーロン判事のことですから、法廷に来る人間を片っ端から法廷侮辱罪にして、半端じゃない額の罰金を科しまくったでしょう。断ったら断っただけ罰金の額が上がる……うーんなんて恐ろしい現象なんでしょうか。神様にも、最低限の情けってものはあるらしいです。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

悪徳のジャッジメント 小ネタ集その二

 ……マーロン判事ってネタにしやすい。
 いや、原作者のイメージはこんなのじゃないと思いますが。

 ちなみに未必の故意の話を思いついたきっかけは、昔やってた江戸川乱歩原作の明智小五郎もののドラマです。敵に捕まった明智が箱(記憶曖昧)か何かに閉じ込められちゃうんですが、明智はこっそり抜け出して、敵の部下を詰めちゃうんですよね。で、敵は明智が入っていると思って箱を海にドボン……。
 で、最後に敵の前に現れた明智は「お前が殺したのは自分の部下だよ、はっはっは」みたいなノリだったんですが、見ている私が思ったことは「それ、間接的な殺人じゃないの?」ということでした。なんか、すっごい微妙な気分でした。

 四個目のエピソードに登場する「法廷侮辱罪」ですが、これは日本には存在しない法律です。よって、日本を舞台に法廷シーンを書こうという人(いるのか?)は、間違ってもこれ出さないように。ただし法廷で騒ぐと、法廷秩序維持法には引っかかります。
 ちなみにアメリカでは、法廷侮辱罪の罰金は判事が決められますので、口答えすると倍額なんて可能性もあるそうです。ドラマでそんなシーンがありました。実際にやってる人がいるのかどうかは知りませんが。

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投稿日:2012/03/25 19:28:02

文字数:2,837文字

カテゴリ:小説

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