I sing for you .
I was born for that .



* *



「………」

なんということでしょう。
なんて、間抜けなフレーズが頭の中を過る。人間、パニックを起こすと何するかわかったものではないとはよく言うが、私の場合は外には出ず内側でとんでもない馬鹿を披露するタイプらしい。

私の目の前にごろんと転がっている「それ」――― つまり、何と言えばいいのか、人間たいていの場合には二つ持ち合わせている、五本指のくっついた、アレ…、アレが、道路のど真ん中に無造作に、ごろんと転がっているのだ私の目の前で。アレこれ最初にも言った?

恐る恐る。爆発物に近づくような気分で、ソレとの距離を縮める。最後には顔面が地面にメリ込む勢いで顔を寄せ、ようやく私は、ソレが人間のものではない事に気がついた。 骨ばった指から徐々に上へ、肩口の方へ目をやると、すぷらったな危なげな光景ではなく、青やら赤やらの複雑な回線や機械の骨組みが晒されていた。

「………、アンドロイドの…腕?」

が、何だってこんなところに。業者が落としていったのだろうか?というか今頃回収しそこなったアンドロイドが出てきたとは驚きだ。 小首を傾げつつ、ひょいと腕(もう腕だと認めても恐ろしくはない)を拾い上げ、まじまじ見つめる。 凝視しなければとてもアンドロイドのものだとは気づかないくらい精巧なつくりの腕だ。もしかしたら金持ちが作らせたお高い代物かもしれない。 いやしかしそんなものが路上にホイホイ落ちているわけがないし…、と何気なく周囲を見回した時、再び冒頭のドッキリが蘇った。今度は足。何のホラーだかまるで足だけが立っているみたいに二つ並んでる。

足が先ほどの腕と同じく機械製のものであるとわかった途端に何か腹立たしくなって、並んだ足を拾い上げあたりを見回す。もしこれが悪戯ならば、どこかでこそこそ隠れて笑っている犯人を蹴飛ばしてやるつもりで。

―――だが私が見つけたのはそんな生易しいものではなかった。 両足がもげ、腕の片方は完全に喪失していて、更にもう片方の腕までも取れかかって中途半端にぶらぶら揺れている、首なしアンドロイド。 ごろんとボールのように膝の間に転がっているのは、まさか、まさか―――


「…………。なんということでしょう」


度が過ぎたパニックについ口走る。 ああ、気が遠くなりそう。

―――私はこの時の出会いを、後になってよく考えることになるのだけれど、それはもっとずっと未来のことだ。




To Be Next .

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

天使は歌わない 00

こんにちわ。初めての連載です。雨鳴です。
ボーカロイドが本当に存在していたらという設定で、
ちょっとミステリちょっと感動系の物語に出来たらと思います。
お付き合いしていただければ幸いです。

閲覧数:1,071

投稿日:2009/07/22 23:39:43

文字数:1,074文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • 雨鳴

    雨鳴

    その他

    初めまして、雨鳴と申します。
    楽しんで読んでいただけて大変嬉しく思っております。
    ボーカロイドはVocalとoidを合わせた造語です。
    ミク達はボーカロイドもしくは略してボカロと呼ばれてるんですよ。
    これから彼らを登場させられるように頑張りたいと思います。

    そして、小説を書いていらっしゃるそうで…!
    小説を書くのは大変ですが、お互い頑張りましょうね。
    是非ヘルフィヨルトさんの小説も読んでみたいと思います。

    2009/07/23 23:38:10

  • ヘルケロ

    ヘルケロ

    ご意見・ご感想

    こんにちは
    はじめまして
    最近登録した主に小説をアップするヘルフィヨトルというものです。
    楽しく読ませていただきました。
    すごいですね。
    書き方というかストーリーというか。
    ポーカロイドはよくわからないのですが、これを見ると何か生々しいような…………。
    とりあえず、次の作品を楽しみにしています。

    最後に私も小説をアップしたので、読んでくれるとうれしいです。

    2009/07/23 20:19:25

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