咲いては朽ちる薔薇の華のように。
高貴に美しく在れたらと。
ひとり繰る書物の中でだけは。
私は姫君で居られるの。
『穢れなど空想よ』と優雅に微笑めるわ。
けれど、私が居るのはこの世界。
腐敗、汚染、堕落。
傷つき、純白の翼さえももがれて。
今は独り、書物庫に棲まう熾天使。
微笑み俯く白百合のように。
優美に麗しく愛せたら。
いつか読んだ御伽噺では。
私は私で居ることが許された。
どんな願いも、聞き入られぬままに消えることなど。
在りはしなかったのに。
そして、私が零す涙で皆が目覚める。
玉響の音が反響して。
私の六つの翼を受け継いだ子供たち。
望みのまま、どこまでも羽ばたいてゆくの。
生きては死ぬ百花のごとく。
誰かに焦がれ、愛されればいいの。
読み終え閉じた書物の音で。
私は目を醒ます。
遠くから聞こえるお姉様の声。
これは現実か空想か。
それとも、誰かが紡いでいる御伽噺なのか。
いいえ。どれでも同じことね。
私が『幸せ』を感じたこの場所こそが。
間違いのない、現実よ―――
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